宮崎大学教育学部附属小学校

○インターネット利用状況

(1) 「全国発芽マップ ’97」(CEC新100校プロジェクト重点企画「高度化教育企画」)

 ●全国発芽マップ(参加50校)

  「全国発芽マップ」はインターネットを活用した全国的な栽培学習である。概要は、まず同日、同時刻に一斉に全国各地で種をまく。その生育の様子や子供たちの活動を電子メールやホームページ等で情報交換したり、データをまとめたり、交流を図ったりする。そのようなインターネットによる共同的な学びの場を通して、理科や社会科等の教科のねらいを実現すると同時に、総合的な学習に発展することを期待するというものである。100校プロジェクト校を中心に参加校を募り、これまでに平成7年度にかぼちゃ、平成8年度に綿を栽培した。現在、平成9年度にケナフ(アオイ科、Kenaf, (Hibiscus cannabinus L.) )の栽培を試みている。日本で学校がインターネットに接続し始めた時期に行われた実践であり、試行錯誤を繰り返しながら続けられてきた。その過程の中にインターネットの教育利用における示唆が含まれていると思われる。 

  ○ 主な活動

    この「ケナフ」は,アオイ科の植物である。成熟すれば下部が直径3〜5cm,高さが3〜4Mになる植物で,広く東南アジアや中国,アフリカ,カリブ海沿岸,米国南部で栽培されている。また,非木材紙資源として注目されている。さらに二酸化炭素を多量に吸収するために地球温暖化の防止にもつながると考えられており,理科教育ばかりでなく,環境教育の上でも有用性がある。また活用の在り方しだいで「総合的な学習」にも発展していく可能性も高い。

(2) 各教科利用状況

 ●テレビ会議システムの利用

  全国発芽マップ97に参加している学校の中から,これまでも交流の深い滋賀県平野小学校や福井大学附属小学校,さらに環境教育を推進している熊本県人吉東小学校と同時授業を実践された。

  次のような会議が行われた。(一部抜粋)

   平野小学校:「ケナフを使って紙すきしました。こんな紙ができました。」

   福井小学校:「私たちも年賀状にして宮崎に送ります。」

   宮崎附属小:「4mの大きさに育ったケナフを紙にするのは楽しみです。このことは非木材での紙づくりなので森林保護につながりますね。」

   人吉東小 :「私たちも球磨川の環境を調べています。これからも一緒に環境について調べていきましょう。今度こちらで育てている蛍を送ります。」

    宮崎附属小:「今日はみなさんありがとうございました。」

  このような交流を通して子供たちは本当の意味での共感を深めたのである。

 ●データベースとしての活用

  ◯社会科「雪国へ旅立とうー4年」では,雪国の様子や人々のくらしへの思いを追究するために,また「地球船号の明日をー6年」では,地球環境と世界の平和を守る活動を追究するために,様々なページにリンクしたり,電子メールの活用で情報を収集・発信する授業が展開できた。

  ◯図工科では,学習で作成した作品を公開して感想などを募集した。

  ◯その他の教科でも,学習に役立つ教科のページを作成し,授業に生かした。

  ◯学級のページが充実し,4月からの各学級の歩を発信することができた。また保護者からのアクセスも増えている。

  ◎「全国ライブカメラMAP」に参加し,リアルタイムに「とれたて宮崎の空」を発信し,理科の天気学習で活用した。

○平成9年度の成果と課題

 ・情報活用能力を明らかにし,ネットワーク重点単元を教育課程に位置付けたことにより,学年の発達に応じた実践が可能になってきた

 ・交流学校との多様な共同学習から,共感共創活動が生まれ,子供たちの知と心の交流が図られた学習に発展した。

 ・外部とのコミュニケーションを楽しみにするなど視野の広がりが生まれた。

 ・実践を進めていく上で,授業協力者を依頼したり,TTを組んだりする必要性が生まれてくる。学校の授業ボランティアの拡充や制度の充実が望まれる。

 ・担当教官のネットワーク関連の管理等に要する時間や教師のリテラシーが不足しており,子供の願う学習を組織することができない。

 ・発信情報の信頼性とその活用方法は,各教科学習で慎重に扱わなければならない。

○新100学校プロジェクトに参加して

  子供たちの様々な活動が,インターネットによって支えられた。時空を超えて人類が初めて得た手段は,これまでしたくてもできなかった共感共創活動(コラボレーション)を生み出した。 その感動は,子供たちの心に大いに響いたはずである。