岡山大学教育学部附属中学校

○ネットワーク利用状況

1.生徒,教師,PTAによるインターネットの利用

 (1) 生徒

   インターネットの日常化を本年度の課題として活動に取り組んだ。放送研究部や美術部等の文化部の活動の状況や作品等をホームページに掲載し,積極的に情報発信した。また,今年度は,創立50周年を記念して,生徒がコンテンツを作成した「拝見先輩」のホームページで,現在の附属中の様子を,すでに一万人を越えた卒業生に紹介した。

 (2) 教師

   昨年のHTML,デジタルカメラ,スキャナ等の研修を生かし,各教科や部活動の教科のホームページを更新した教科があった。また,メールアカウントを教官全員が持つようになり,メーリングリストなどを通じて教科研究や教材等について,積極的に情報交換が行われるようになった。

 (3) PTA

   前年度に引き続き、2度のインターネット研修会を持った。2度目はネットサーフィンだけでなく実際にデジタルカメラを使ってホームページを作成するような研修を実施した。60名程度の参加があった。インターネットが家庭での会話のきっかけになっているという感想もうかがうことができた。

2.各教科での取り組み

 (1) 数学科(マスカットスタジアム)

  3年目に入り「インターネットの日常化」という視点での実践を行った。

 ・デジタルアーカイブとして

   授業実践の公開・蓄積を通して,どのような取り組みが可能であるか。また変化が生じてきたか等を探っていった。授業実践例は28例となった。このような実践の公開を通してさまざまな形の交流が始まった。

 ・コラボレーションとして

   熊本県長陽中学校との「折り鶴プロジェクト」、ネコパパキッズとの「NEKOPAPAKIDS夏休みの課題」等の交流を行った。選択教科での活用が有効であった。数学教育におけるネットワークの構築をめざしている。

 (2) 理科

 ・自由研究についての質問

   理科では,自由研究について生徒の生のまま質問を分野別に掲載し,メールで何件かのお答えをいただいた。中には詳しい資料を送っていただいた方や,見た方が専門の方に聞いてくださり,お答えいただいたりした。生徒には,答えが来る度に掲示板で張り出し,自分の質問に対する答えのあった者は持ち帰るようにした。

 ・教具の自主開発

   理科では,教具の自主開発に取り組んでいる。その簡単な紹介をホームページに掲載し,近隣の学校への貸し出しも行っている。

 (3) 技術科 

   技術科では2年生の選択教科でホームページの作成に取り組んだ。自主的にHTMLについて学習し,その成果をホームページとして作成するものである。3つのグループに分かれ,それぞれに決めたテーマに沿って取材し,素材を編集し,HTML化するものである。家庭でもインターネットに接続できる環境を持った生徒も増えてきていて,ただ,それらのホームページを閲覧するだけでなく,自らホームページを作成し,情報発信をしたいという意欲が見られた。なお,この生徒が作成したホームページは年度末頃掲載する予定である。

 (4) 美術科

   3年選択美術の授業でバ−チャルデザイン事務所を設立させ,表紙のデザインから内容まで生徒が作成した。昨年度に引き続き,本校での授業実践の紹介を行っているほか,岡山城築城400年記念事業の一貫として岡山市内9校の美術部が行った共同制作の紹介や, 岡山県中学校芸術文化連盟の生徒作品・表現発表会の案内,5回目を迎えた岡山市中学生美術展の広報などを行った。その結果,他県の中学校からリンクの申し出をいただいたり,研究者から授業実践の引用についての照会があったりと,徐々にではあるが双方向性の価値を実感し始めている。また,自宅でインタ−ネットを使っている生徒や,卒業生などからのメ−ルも入るようになってきたので,生徒自らが発信する新たな取り組みを検討中である。 

3.その他の取り組み

 (1) 放送研究部

   放送研究部では,ここ一年の活動を紹介している。作ったビデオ作品を簡単な動画や静止画,音声などを使って紹介し,作品についての感想をメールでいただいている。また,他校との交流を数校と行っている。

 (2) インターネットによる他校との交流

   文化祭の任意団体の取り組みとして,インターネットによる他校との交流を試みた。相手校は,北海道稚内市立抜海中学校で,酪農と漁業の町にある全校10名の小規模校で小学校と併設されている。異なった地域,環境の中に暮らしている中学生同士が,メールでそれぞれの学校のことなどを紹介しあった。文化祭では,抜海中学校のみなさんから送られたコンピュータグラフィックの作品や学校紹介などの展示コーナーを設け,全校生徒に交流の様子を伝えた。また,抜海中からのコンピュータグラフィックの作品をパソコン時計として加工して,お礼として送った。

○平成9年度の成果と課題

 1.本年度の目標を「インターネットの利用の日常化」とし,様々な教育実践に取り組んできた。インターネットが目新しいものから,日常的なものへ,学校教育の中でインターネットの持つ何が有効に使えるのかを手探りで探っている状態から,こうすれば使える,この部分はインターネット以外の方法でという輪郭が見えてきたと思われる。

 2.本校の情報教育を担うべきパソコン教室は,平成2年度末に導入されたもので,いまだにDOSの環境である。従って,パソコン教室でクラス40人の生徒にインターネットを使用した授業をすることは,現在できない状況にある。プロジェクターを用いたり,スキャンコンバーターで大型モニターにつないだりして,授業での利用を試みているが,なかなか利用のしかたに制限が付く。2003年までに,すべての学校にインターネットが接続されるようであるが,クラス40人の生徒が同時に利用できるような環境が整うのかが疑問である。そういう環境が整って初めて教育へのインターネットの利用が論議される土台が整ったと言えるのではなかろうか。

 3.教師全員がアカウントを持つことができたが,生徒には持たせることはできていない。いわゆるネチケットについての指導が実現して初めて,生徒全員にアカウントを持たせることが可能になるであろう。これらのことを含めて,本校の新しい教育研究の全体主題「小中高の系統性と教科間の連携を視野に入れた中学校教科教育のあり方−主体的に学びをつなぐ生徒の育成をめざして−」の中でも,これからの情報教育のあり方について研究を進めていきたい。

○プロジェクトに参加して

  11月には,中四国活用発表会を岡山市で行い,本校も発表の場をいただいた。地元岡山県では情報ハイウェイ構想が進んでおり,全国に先駆けてすべての県立学校でホームページが開設された。早く中学校でも実現させたいと願っている。