東京都立大田ろう学校

○インターネット利用状況

  今年度のインターネットの利用状況であるが、高等部本科1年生の共通履修科目、「コンピュータ実習」(週2時間)と全校(高等部本科1年生から専攻科2年生)の「パソコンクラブ」(隔週2時間)が中心であった。

・「コンピュータ実習」での利用

 「コンピュータ実習」での利用では、「自分の興味がある内容のWEBページを探し出して、その中から自分に役に立つ情報を見つける」というもので、通常の指導である、「ワープロソフト」、「表計算ソフト」等の使い方の指導を行いながら、一人ずつ抜き出して個別に指導をした。

  本校の場合は、概ね教科学習の習熟度別に分けたグループ(1グループ3〜5名)で授業を行っている。「コンピュータ実習」はそれぞれのグループに対して、一人の教員が行っている。学習グループは小グループであるが、一人一人の興味関心が異なるうえに、興味のないことに関してはなかなか授業に参加できない生徒もいる。実際、昨年度はグループ全体に対して「インターネットの授業」をしたところ、一部の生徒は興味を持ち次々と授業を進めるように要求してくるが、残りの生徒はまるで関心を示さないと言う状態になり困ってしまった。それを解決するために、今年度は「インターネットの授業」は個別授業で行うことを試みた。

  具体的な指導の方法は、「検索ページ」(「YAHOO」、「HOLE IN ONE」等)を利用して「キーワード」で検索することと、他のページからリンクをたどることで、自分の興味のある情報を探し、探した情報は「ホームページ探検報告書」に要約して記入するようにした。しかし、ページを探すことに熱心で「ホームページ探検報告書」記入を行なわなかった生徒も多かった。一人あたりの「インターネットの授業」の時数は4時間程度(連続2時間授業×2回)であったが、一人一人それなりにインターネットを楽しむことができたと思う。

  他の生徒の指導と平行して行うので、予め「インターネット以外の授業」の内容の詳しいプリントなどを作成し、十分に説明を行い、なるべく自分一人で課題に取り組めるように授業を準備しておき、教員は個別に行う「インターネットの授業」にエネルギーを注ぐ事になると予想されていた。しかし、実際に授業をはじめてみると、「インターネットの授業」の指導はほとんど手が掛からず、ある程度使い方を覚えると、あとは自分で勝手に進めるようになることが多かった。それだけ、生徒に関心がある情報がインターネットには溢れており、興味がある情報を調べることに生徒が集中できたのだと思う。また、これは以前にもあったことであるが、ちょっと目を離したすきにいわゆる「有害情報」を見てしまうこともあった。しかし、個別指導であるので、注意をしてすぐに見るの止めさせることができた。ろう教育の場合は、「インターネットの指導」では個別指導が適しているようである。

・「パソコンクラブ」での利用

  高等部本科1年生全員履修の「コンピュータ実習」と比べると、コンピュータに興味がある生徒がそろっている「パソコンクラブ」ではインターネットは利用価値が高い。

  年度当初に、「パソコンクラブ」に参加した生徒に参加理由を聞いても、「インターネットで○○の事を調べたい」とか「自分のホームページを作りたい」と言うような希望が出てくるようになってきた。しかし、現時点ではクライアントは1台なので、交代で利用せざるを得ない。とりあえず、10月に行われる「文化祭」までは全員が自己紹介のホームページを作ると言うことにして、隔週2時間のクラブ活動に取り組んだ。新入生の中にはワープロで自己紹介を書くだけで精一杯と言う生徒もいたが、写真を入れたり、自分の趣味のページにリンクを張ったりしたホームページを作成する生徒も出てくるようになった。また、生徒の中にはインターネットで調べた情報をまとめて展示する事に取り組みたいと言う者もおり、1台のクライアントはその生徒が中心に使うことになった。やはり、複数のクライアントが利用できる様になると助かる。

  「パソコンクラブのホームページ」がほぼ完成したところで以前からクラブに参加している一部の生徒に、「ホームページをサーバーに送る手順」を学習させた。クラブ用のアカウントを利用し、FTPで登録する練習をした。その直後に一人の生徒が自宅からプロバイダを経由して学校のサーバーにfileを送る方法を覚え、自分で学校のサーバー内にホームページを作る事ができた。自分一人でここまでやれるようになったことに、とても感心してしまった。

  作成した「パソコンクラブのホームページ」は個人情報を含むため、文化祭の期間(2日間)だけサーバーに置き、なおかつファイル名を公開せず、通常の操作では外部から見られないようにしておいた。

  文化祭のあとは、自由にインターネットを使用できるようにしたおいたが、自分の興味のあるようなWEBページを閲覧する生徒が多かった。

○平成9年度の成果と課題

  今年度は「100校プロジェクト」3年目ということで、生徒の間にはインターネットがかなり定着してきた。パソコンクラブの生徒の中には、自宅からプロバイダを通してインターネットに接続している者もいて、自分でホームページを作ることもできるようになっている。そのような生徒を核にすることで、クラブ内の指導はそれほど教員が力を掛けなくても、自主的にできるようになってきた。しかし、学校のクライアントからインターネットを利用すると、「接続に時間がかかる」、「うまく接続ができないことが多い」等の問題があるので、自宅でインターネットを利用できる生徒の中には、学校ではインターネットを利用しなくなった者もいる。

  また、今年度は校内のLANの一応完成し、職業科の実習室からもインターネットを利用できるようになる予定であった。ところが、物理的に接続が困難であると言うことが判明し、工事の内容に接続が含まれていなかったことから業者の協力も得られず、接続ができなかった。これには、「(新)100校プロジェクトの将来像が見えないために正規の予算かができなかった」と言う理由もある。LANの接続に関しては平成10年度に予定されているパソコン教室のコンピュータの更新に併せて行うことにした。

  サーバーの管理については、今年度は今まで以上に悲惨な状態であった。サーバーのダウンも多く、そのたびに「リセット」をしていた。何とか管理できるようにと「UNIX」の勉強もしてみたが、私たちには難解であり、また、「壊してはならない」という恐怖感からサーバーに手を着けることも難しいので、実際にできることは「ダウンしたときはリセットする」と言うことだけだった。「WINDOWS95で簡単にサーバーが作れるようだ」と言う話も聞くので、できれば今後早い機会に、外部の人たちにも協力してもらって「WINDOWS95化」または「WINDOWS NT化」していきたい。

○新100校プロジェクトに参加して

  今年度は「新100校プロジェクト」に参加することができ、以前と同じ「授業やクラブでのインターネットの利用を続けることができた。都内の他のろう学校と協力して「メイリングリスト」もはじめようとしたが、まだ「E−mailを使っての教員間の連絡」の段階でしかない。ろう学校では「児童生徒数の減少」が「学校の活動の停滞」にもつながってきており、生徒会活動なども年々難しくなってきている。しかし、うまくインターネットを活用することで生徒会活動を活発化することも可能である。そのためにもインターネットの利用を続けていきたい。