北海道旭川凌雲高等学校

●インターネット利用状況

○生徒の利用

 ・新一年生入学時に全員を対象に、コンピュータ教室の使い方、およびインターネットの利用の仕方についてのオリエンテーションを行なった。

 ・電子メールアドレスを保有している生徒は175名。TIFORS(The Internet Force Of Ryoun Students)というサークル集団として講習を受講し、ネットワーク上のモラルを守りながら交流を行なっている。

 ・TIFORSは、パイオニアトレイル(アメリカ開拓時の経路を、当時の様子そのままに旅をする企画。ある日本人家族が参加し、現地から衛星通信回線を用いてインターネットから情報発信した。)での交流にも参加した。

 ・長野冬季オリンピックに2名、パラリンピックに1名、本校卒業生が参加決定した。電子メールを利用して、多くの激励メールを選手に送った。

 ・個人レベルでの電子メールの利用が進んでいる。学校では回答を得られないような問題や疑問を、学校外の大学研究機関の識者に問うような場面も見られる。

 ・進路決定に際し、情報収集のために利用された。Webはもちろん、進路希望先への電子メールを使った直接コンタクトも見られ、温かい助言や励ましを受けている。

○学校としての利用

 ・カナダの姉妹校であるリンゼイサーバー総合高校との交流に活用されている。夏には引率5名と生徒34名が訪問し、その様子がインターネットを通じて随時報告された。またそれ以外にも、電子メールでの交流から本校を訪れる海外の学校関係者も増えた。

 ・見学旅行での様子も、引率教員のモバイル通信によって逐一報告された。従来の電話による一方的なものではなく、学校にいる職員からの質疑応答的なやり取りも見られた。それらは本校のメーリングリストを通して行われ、多くの職員間で共有された。

 ・授業での利用は多くの教科に及んでいるとは言い難いが、該当の科目においては、日常的に自然な形で活用されるようになってきている。

○校内情報化

 ・校内の情報化は日常的にも進展しているが、研修会を通しても組織的な推進を試みている。イントラネットの意義、情報提供の仕組み・方法、情報デジタル化の技術などを研修した。

 ・校内情報化推進の一環としてイントラネットを推進し、「凌雲いんとら・ディレクトリ」を校内に向けて公開した。掲示板や研究会・セミナーのお知らせ、名簿などが閲覧できるほか、名簿や図書館蔵書を検索できるなど、データベースとの連携も実現された。

 ・校内LANを有効に利用するため、ネットワーク・アプリケーションを開発し運用した。インターネット・ブラウザとデータベースとの連携のもとではスピードが問題になり、専用のアプリケーションとして開発された。

 ・校内情報機関紙(情報システム部発行)SQUIRRELは、紙媒体での発行とともにデジタル化され、Web上でも公開されている。学校外部との交流にも役立っている。

○講習会・研修会・研究会の開催

 ・地元の旭川市立南永山小学校、家庭学級のお母さん方の要望で、インターネット講習会を開催した。実際にインターネットに触れてみたり、教育におけるインターネットやコンピュータの使われ方の話を聞いたり、たいへん積極的な姿であった。

 ・「学校に風穴を開けよう!」と、春には本校の父母を、秋には一般市民を対象に、学校開放講座(インターネットで情報発信)を開講している。夜の2時間を5日間に渡って熱心に取り組む受講者は、3年間5回目で100人を突破した。

 ・高文連上川支部新聞技術講習会の開催を、本校が会場校としてインターネットに接続されたコンピュータ教室を提供した。参加生徒と顧問はインターネット・デジタル・パブリッシングの初歩的な技術と基本的な考え方を学んだ。本校からは講師の技術的な補助と、講演という形で協力した。

 ・上川管内高等学校情報教育研究会の事務局校として、早稲田大学理工学部情報学科 後藤滋樹教授をお迎えして、「コンピュータ社会においても『知は力』であり続けるか」という演題で講演会を開催する。講演録は、同研究会の「情報研のあゆみ」として公開される予定。

 ・同じく上川管内高等学校情報教育研究会の事務局校として研究協議会を開催した。上川管内のネットワーク関連の充実した教育実践が6本発表された。本校からは「学校におけるイントラネットとその周辺」というテーマで研究発表された。また協議として活発な意見が数多く出され、興味関心の高まりがたいへん強く感じられた。

○研究・研修

 ・北海道教育研究所研究プロジェクト「地域の教育力を活かした学校教育の推進に関する研究」の研究協力校として、「『自己教育力』の育成を基盤に据え、インターネットを活用した情報教育の展開など、特色のある教育活動を行なう。」という観点から実践と研究を進める。

 ・新100校プロジェクト東北・北海道活用研究会(福島市)に参加し、「内側に眼を向けたネットワークの活用」というテーマで実践研究発表を行なった。インターネットでの交流は、自分たちの学校内外、周辺や目の届く地域でこそ深まり、その上で外側に目を向けるべきであろう、という趣旨である。

 ・北海道内の高等学校から15回、それ以外に3回の学校視察を受けた(2月20日現在、予定も含む)。多くの視察と訪れる人の意識の高さが、インターネット活用の地域での高まりを感じる。

 ・稚内北星短期大学が主催するサマースクールに参加する。文字どおり朝から晩までの缶詰状態の5日間。UNIXネットワーク管理コースに2名が学んだ。

○自主企画

 ・北海道内の高等学校関係者のメーリングリスト「インターネット教育利用研究会北海道」を主催している。技術的な情報交換だけではなく、バーチャルな職員室として教育の日常的な話題が交換されている。さらに生徒会交流や北海道高校新聞などを企画し、今後の展開に向けて足がかりとなる実践を積み重ねている。ネットワークでの交流では、場所や時間的な制約を取り除くばかりではなく、世代間の交流を容易にする。

○その他の利用

 ・北海道算数数学教育研究大会全道大会の連絡打合せ、原稿収集などで一部活用された。

 ・旭川地域情報化に、学校教育でのインターネット活用の経験から協力者として参画する。

●平成9年度の成果と課題

 ・インターネットによって学校の枠組みが再構築されようとするとき、地域との係わりについては避けて通れない。そのパイプとしての一つである学校開放講座は、今年度は担当の情報システム部だけではなく、校内から講師ボランティアを募るなどしてその役割を太くすることを心がけた。さらに地域の情報化プロジェクトに参画することで、地域の基盤である人材育成に関しての提言を通して貢献している。

 ・校内の情報化に対しては、分掌である情報システム部が牽引し、ネットワーク委員会が校内の調整にあたっている。さらに組織的情報化を進めるためには、校務のネットワーク化を図り、具体的な効用を体感する中で理解を深めなければならない。情報スキルの向上は、個人的な問題であるとともに、ネットワークとして組織的な観点からも評価される必要があろう。

 ・ネットワークの活用が高度になればなるほど、それを管理運用する知識や技術が求められている。日常の校務をこなしながらそうしたものを修得することも大きな負担を強いるが、それらを次世代へ転移していくこともまた困難な状況にある。管理運用者の養成と研修の確保、あるいはアウトソーシングとしての解決など、根本的な解決が望まれる。

 

●新100校プロジェクトに参加して(平成9年度)

 ・教育環境としてインターネットをとらえる意識は、着実に生徒や教職員の中に定着しつつある。ネットワークを当然のものとして受入れ、そこから何かを発想しようという方向性が生まれている。これまでの学校の組織や運営の中にインターネットを押し込めるのではなく、自由な創造性の中でインターネットが活用される時が来ているといえよう。

 ・インターネットという環境の中で、生徒も教職員も個々においての活動は活発化しつつある。しかしそれが、教育的活動にまで発展していくかというとそうでもない。日常的な「自律の種まき」が必要であり、学習や研修への核となるような動機付けが求められている。