清水国際中学校・清水国際高等学校

○こんにちは、本校のホームページを訪れ、私たちの活動報告を読んでもらえることをとてもうれしく思います。本校の「新100校プロジェクト」参加は他校とは少し異なった利用形態をとっている。それは、多くの教科で幅広く利用するのではなく、中学生の正課クラブ、地球クラブと呼ばれる活動でインターネットを集中的に活用してきたことである。地球クラブの活動テーマは通信メディアを利用して「世界の友だちと、いろいろな国際共同作業をしよう」である。週1時間の授業だけでは十分な活動ができないので放課後も活動している。地球クラブの通信メディアを利用した国際交流は、郵便からはじまり、郵送によるビデオテープ交換、ファックス、パソコン通信、インターネットとへと発展し10年の歴史を持っている。

○インターネットをどのように利用したか

実践1 自主企画「同じサーバー上の同一ディレクトリでの国際共同作業研究」

  インターネットでの共同作業を本校のサーバーの同一ディレクトリで実現しょうという国際共同研究である。参加校にIDとパスワードを発行、FTPサーバーの一部分に入り込み、画像やHTMLを置いたり、取り出したりすることを許した。掲示板を置き、ここから作業領域のHTMLを起動できるようにし国際共同編集ができるようにした。ここで一つのHTMLを相互に追加・修正しながら作品作りが行われる。例えば、モスクワ近郊のロシア科学アカデミーの生徒たちと本校がデジタルカメラを使用して「日本とロシアの野草カレンダー作り」や「インターネットを利用した書道添削教室」などを実践した。

  生徒:見たこともないロシアの野草のカラー画像が届いたときは、インターネットってすばらしいと思った。言葉が通じなくてもカレンダーの編集ならできると思った。

  教師:これが本当の国際共同作業だと実感した。ここは国境のない国際広場だからである。

  課題:HTMLの書き方に実力差があった。もっと勉強しなければと感じた。

実践2 WEBの国際共同編集コンテスト参加「'98 Virtual Class Room On The NET」

  世界の231校が参加、3校が1チームになり、討論で作品テーマを決め、WEBの共同制作をする国際コンテストに参加した。地球クラブは約250枚の画像ファイルを使用して22本のHTMLを単独、あるいは共同で制作した。この4か月間にわたる長期の3か 国の共同作業から多くのものを学んだ。次の学校とチームを組んだ。

  USA :St.Julie Billiant School Thailand: Benchamarachutis Chantaburi

  生徒:たくさんの絵をアメリカ、タイの友だちと一緒に描いた。絵で会話した。

  教師:個性の強いチーム同士で共通のテーマを決めるのがたいへんだった。

  課題:このような国際共同作業の中でどうやってリーダーシップをとるか教師自身の国際化の必要性を感じた。他を受け入つつ自己主張しながらまとめることである。

実践3 タイと日本でバケツで米栽培

  気候の異なるタイと日本で同じ時期にバケツに米の種子を蒔き、HTMLで成長の様子を紹介しながら一毛作の日本と多毛作のタイの米作りを比較をした。先方の都合でこの実践は収穫前に中断されたが興味深い作業であった。

  生徒:タイの稲の成長の早さに驚いた。気候の違いを目でみて実感できた。

  教師:タイ側のインターネット環境や、パソコン設備は恵まれていないが、やる気と熱意に打たれた。アジアの若い人たちのエネルギーを感じ取った。

実践4 「全国発芽MAP」への参加

  この企画に参加して、一年草のケナフを栽培した。この植物の生長レポートの交換やホームページの制作をしながら発展学習をした。清水市生活環境フェアで約30枚のパネルを作り、育苗、栽培、収穫、紙漉きを紹介した。非木材質パルプの紙原料になるだけでなく、空気中の炭酸ガス固定能力が大きく、地球温暖化防止に役立つということでことで話題になった。静岡新聞、中日新聞などで生徒の活動が紹介された。県内のJAから見学や各市町村で開催される環境フェアでパネル展示の貸し出し要請もあった。

  生徒:私たちがケナフ栽培について学んだことを、他の人たちに教えてあげることができうれしかった。紙漉きが楽しかった。環境問題の学習にもなった。

  教師:地球温暖化に向けて「いま、私たちになにができるか」実践活動例の場となった。

  課題:ケナフの栽培・紙漉きについての情報をインターネットでどのようにして集め、生かすか情報処理手順の学習の必要性を感じた。

実践5 重点企画 「KIDLINK」への参加

  世界規模の子どもたちの教育ネットワークである、KIDLINKがどんなものであり、 これをどう利用するかを知るために教師が個人参加できる、KIDLINK IRCに 登録した。ちょうど実施されていたミュージック・プロジェクトに生徒と一緒になって 音声ファイルを作成し参加した。生徒は自分たち手で創作した歌の録音テープをAU、WAV、RAファイルにして海外の生徒や先生方に聴いてもらった。聴いた生徒に記念 カードを送るなど楽しい交流がチャットチャンネルで展開された。

  生徒:インターネットで歌や音楽の交換ができることを学んだ。こんどは、パソコンで MID作曲をしてみたい。

  教師:言葉を使用しないで音楽でコミュニケーションする方法も面白いと感じた。

  課題:ウィンドウズ上のWAVファイルサイズが大きく転送 に問題があった。

実践6 アメリカ・テキサス州、綿研究所で開発した新品種の綿を日本で栽培試験

  綿研究所から3種類の種を正規な検疫手続きを得て輸入して試験栽培をした。多湿な日本の気候が合わないためか成長が悪く、インターネットで栽培指導を受けた。

  生徒:鉢植えにして、この3種類の栽培をしたが綿の実は、はじけなかった。

  教師:海外の研究所からも栽培の技術指導などが得られることを体験できた。 

  課題:次年度、アメリカの学校から共同栽培の申し込みがありプロジェクトを企画中。

実践7 「100学校プロジェクト」の成果を地域社会へ還元

  このプロジェクトで学んだものを地域社会に還元するために、学校開放講座としてインタ ーネット・ホームページ制作基礎講座を開催した。清水市、静岡市から小学生19名が参加、隔週土曜休業日を利用して午前9時から11時までの2時間、年間16回を開催した。 そして制作したホームページを本校サーバーに掲載した。

  受講生:パソコンをさわったこともなかったがペイントブラシで作ったホームページが完成できうれしかった。自分でパソコンの操作ができる自信がついた。

  講 師:小学生には無理かと思ったが、子どもたちの夢を世界中に向けて情報発信した。

  問題点:パソコン操作がはじめての生徒が多く19名の生徒の指導は大変だった。

実践7 インターネット・ミュージカルの共同制作

  フランス、パリ、ノートルダムの近くの美術学校 「Atelier des Feuilantines」 と清水市に伝わる伝説「天女の羽衣」のミュージカルの共同制作がスタートした。

  生徒「はじめてインターネット・ホームページでミュージカルを制作する。インターネ ットでそんなことできる?」「ちょっと心配だけれど頑張ってみます。」

  教師「リアルオーディオファイルを利用して、実現できると計画中。」

  課題「フランスとは言葉の問題があり壁が厚い、これを解決しなければならない。」

○平成9年度の成果と課題

  「100校プロジェクト」応募に際して公約した、インターネットを利用して世界中の子どもたちと国際共同作業をしたいという地球クラブの願いは、これまでの実践活動のなかでそのアイデア・方法のいくつかを交流プログラムにした。英語の学習を始めたばかりの中学低学年でインターネットを利用した国際交流は難しいが、教師の生徒に対する支援活動の方法によっては、楽しい国際交流を展開できることを確かめた。それらは絵本の共同編集、植物の共同栽培レポート交換、HTMLの共同編集、音楽交流、カレンダーの共同 編集、ハンカチーフの共同デザイン、クリスマスツリーの共同装飾などの交流プログラムであった。本校の活動はインターネットを地球クラブという限られた範囲内での集中利用であり、この方法には問題もあった。しかし世界規模のインターネットが持つメディアとしての特性をフルに生かし、可能性を確かめることができた。インターネットをこのように利用したいという夢を描き応募、その夢に対して、回線・機器の供与をした、この「100学校プロジェクト」はこれまでのプロジェクトにない、すばらしいものであったと感謝している。