広島市立鈴張小学校

○インターネット利用状況

・4学年社会「寒い地方のくらし」

  この単元の学習過程で,「雪国のくらしについての質問」を新潟インターネット教育利用研究会ホームページ(http://www.nice.or.jp/)で行った。新潟県の夏の行事や現在の新潟ではやっている遊びなどについてたずねたところ,新潟県松之山町の情報として,夏の行事は水泳大会や運動会があること。冬には,雪合戦やかまくら作りなどの遊びをよくやっているという返事をいただいた。教科書や図書資料からは得られない,現地からの生の声を得たことで,児童の学習意欲を引き出すことができた。

・4学年社会「暖かい地方のくらし」

  この単元の学習過程で,暖かい地方,特に沖縄についての情報をインターネットのサーチエンジンを使って検索し授業に活用した。児童の活動は,インターネット上の情報を受信するだけにとどまったが,沖縄の気候や自然,方言などの有用な情報を得ることができた。

・6学年国語「短歌と俳句」

  学習のまとめとして,広島県呉市立三坂地小学校と本校とをテレビ会議システム(CU-SeeMe,フェニックス)を使って接続し,児童作品の合同鑑賞会を行った。児童の感想(一部)は次の通りである。

  ・素晴らしい作品が聞けて楽しかった。

  ・他の学校の人と勉強ができたからおもしろかった。

  ・よその学校の人の作った俳句がわかって楽しかった。

  ・自分の作品の解説とかができて楽しかった。

  ・自分の意見を聞いてもらえてうれしかった。

  ・向こうの学校の人の行動が見えたり,俳句の解説をしあったりしたことが楽しかった。

  ・相手の顔を見ることができてよかった。

  ・わくわくした気持ちだった。

  ・また,こんな授業をやってほしい。

  (この授業については,深田,玉井,染岡(1998)「教室がインターネットにつながる日」(北大路書房)にくわしく紹介してあります。)

・6学年社会「世界の中の日本」

  日本と関わりが深いと思う国についてグループごとに調べ学習を行った。それぞれのグループごとに取り上げた国について,書籍,電子百科事典,サーチエンジンなどで資料を収集し,調べた成果を模造紙にまとめて発表会をもった。書籍や電子百科事典と比較して,サーチエンジンでは,児童が要求している情報を独力で見つけにくいという欠点があったが,最新の情報や現地在住の日本の人からの生の情報が書かれているページを発見したグループもあり,児童は意欲的にコンピュータを操作していた。

・アジア高校生インターネット交流

  本校の教諭が新100校プロジェクト重点企画「アジア高校生インターネット交流プロジェクト」にスタッフとして参加した。アジア各国の高校生や学校関係者といろいろな情報交換をすることができ有益であっただけでなく,中国・四国インターネット協議会シンポジウム「インターネットで変える教育」(後援 広島県教育委員会,広島市教育委員会,コンピュータ教育開発センター)にゲストとしてスピーチやダンスを披露してもらい,シンポジウム参加者に交流型インターネット利用教育の一端を紹介することができた。

・こちらこねっと情報局

  情報を発信するために調べることが日常のカリキュラムの一部になるような題材を設定し,そこで発信された情報がネットワークを通して集まって整理されることの価値を子どもたちに体験させることを目的とした,こねっとプラン共同研究プロジェクト「こちらこねっと情報局」に5学年6学年の児童が参加した。児童の生活に密着したテーマが月替わりで設定されており,児童は抵抗なくメッセージを書いていた。

○平成10年度の成果と課題

  昨年度に引き続き,教科学習にインターネット利用をどう位置づけるかを考えながら教育利用を考えてきた。インターネットを活用することで,学習内容に関する疑問を当事者に直接問い合わせたり,他校と共同学習を行うといった今まで実現できなかった形態の学習を実現したりすることができた。児童も意欲的に学習に取り組んできた。

  本校が所在する広島市には,135校の小学校があるが,授業用コンピュータが整備されている小学校は8校しかない。本校には,授業用コンピュータが整備されていないので,新100校プロジェクトで貸与されているコンピュータだけで活用実践を進めている。機材(クライアントマシン)の不足には特に悩まされている。

  クライアントマシンが不足しているために,インターネット利用教育を仕事として校内に位置づけることができず,有志による個人研究的に細々と実践を続けているというのが現状である。広島市も本年度中に授業用コンピュータの整備がようやく始まる。引き続き,インターネット利用環境の整備のための準備を始めてもらえるのではないかと期待している。

○新100校プロジェクトに参加して

  100校プロジェクトから引き続きインターネット利用教育に取り組んで3年目が終わった。校内でのインターネット活用を推進する一方,学校関係者に対しての啓発活動にも力を入れてきた。CECや地域ネットワーク主催の研究会で実践発表を行ったり,各地からの学校訪問も積極的に受け入れてきた。

  教員本来の業務に加えて,コンピュータのメンテナンスやサーバの管理等の仕事をこなすことは担当者に相当の負担を強いる。機械や回線等のハードウェアの整備も大切だが,担当者の人員配置や専門研修制度なども含めて総合的に考えていかないと,初等中等教育機関へのインターネット利用環境整備は途中で頓挫するのではないかという危惧を抱かざるをえない。