武雄市立武雄北中学校

○インターネット利用状況

1 CATV網を利用したテレビ会議システム

   本校は、これまでテレビ会議システムの可能性について主に研究してきた。アナログ回線、デジタル回線等で県外、海外とCU-SeeMeを利用して交流を行ったが、画像音声ともに安定しているとはいい難い。そこで、武雄市内にはケーブルテレビネットワークが網羅しており、本年度は市内の小学校と交流を行った。回線速度は10Mbps程度あり、これまでの環境では実現できなかったことが可能になる。本校は小規模校で、多様な意見や考えが出にくく、話し合いに深まりが見られない。同じ環境にある市内の小学校と「故郷のよさを知り、21世紀の武雄市を考える」というテーマのもとに、学校間交流を行った。このことによって地域理解と地域の今後の展望に興味や関心を持つと共に、コミュニケーション能力の育成及びネチケット等の情報モラルの確立を図った。ビデオカメラ、ワイヤレスマイクを2本使用したことで、生徒はその場で意見を述べたりすることが可能となり、受信も音声はスピーカーから流し、映像は20台のパソコンに転送すると同時に、液晶プロジェクターでもスクリーンに映し出した。特別活動に位置づけ学級単位での交流全員参加の形式がとれた。司会進行も生徒が行い、モニターの操作を見ながら発言し、70分程度の意見交換を行ったが生徒は退屈することなく画面に見入っていた。小学校・市役所・本校の3カ所で実施し、各学校で作成した郷土紹介のVTRを市役所の端末から一元的に流すことで、その間も双方の生徒の表情等も送信できた。音声の状態は非常によく、普通の会話のように聞き取れ、画像も非常に鮮明で1秒に数コマ程度の送信が可能であった。交流の様子は、有線テレビに生放映され、生徒たちも緊張していた様子であった。

2 地域の特徴を生かした情報発信

 (1) 「おばあちゃんの知恵袋(武雄版)

    生徒にとって、高度情報化社会で生きていくために必要となる資質や能力を養うと共に、 21世紀に確実に到来する高齢化社会という問題も避けて通ることができない重要な課題である。本校は、市街地から離れた山間部に位置し、農業を主体とした産業で、3世代が同居する家族がほとんどである。このような地域の実態を生かし、「敬老の日」を機会に高齢者の長年の苦労と様々な生活体験に基づく「知恵」を学ばせると共に、インターネットによって情報発信することで情報活用能力及び情報伝達に対する責任等の育成を図った。このことにより、今日の豊かな社会を実現してきた高齢者への感謝、思いやりやいたわる気持ちを持つ豊かな人間性を養うことをねらいとした。ホームページ作成にあたっては、集めた情報を分類・整理し、HTMLエディタを利用した。情報は健康編・台所編・生活編・ことわざ編・食卓編の5つに分類し、生徒一人一人が祖父母の似顔絵入りでお礼や感想を作成した。6台のホームページ作成用パソコンを用意し、テキスト形式であらかじめ入力しておいた情報や似顔絵をコピーしたことで、短時間で仕上げることができた。

 (2) 「昔の遊び(武雄版)」

    生徒の遊びも、既成の道具とルールがないと遊べず、友達と遊び方を知らずいにいる生徒が多いのが現状である。このことがいじめなど大きな社会問題にも発展している要因の1つとも考える。ファミコンなどゲーム機が家庭に普及し、親から子へ昔から我が国に伝わる「遊び」が失われつつある。伝統的な「昔の遊び」をテーマに家族や地域の人とのふれあいの中で情報を収集し、整理、伝達した。

3 国語科におけるWWWを利用した新聞作成

   世の中がめまぐるしく変化し、情報化社会が進展する中、国語科にも日常生活の中で生かせる情報活用能力が求められている。氾濫する情報の中から、いかに効率よく自分にとって必要な情報を入手するか。また、それを自分の考えの中に取り入れ活用していく力はこれからの時代を生きていく上で必要不可欠なものである。そこで、個人新聞作りを通して、情報の読み手と情報の作り手の両方を経験させ、自分たちの生活を向上させるための情報とは何か、また情報受信と発信の在り方はどうあるべきかについて考えさせた。生徒たちは、それまでの文学教材への取り組みとして、登場人物の行動に対して自分の立場をはっきりさせて考えをまとめ、生徒間で、意見交換をしたり、自らこだわりたい問題点を探し出し、根拠を明確にしながら問題点にグループで取り組むといった学習活動をしていた。今回の新聞作りでは、それまでの学習の経験を活かし、「環境問題・平和問題・人権問題」の中から一つを選び、さらに焦点を絞って問題点を決め、その問題について「自分はこういう立場に立って、こういう点が問題だと思う」という内容でトップ記事をまとめさせた。その際の取材源として新聞・書籍・テレビなどがあるが、加えてインターネットを利用し、リテラシーと情報活用能力の育成を図った。

○平成9年度の成果と課題

  CATV網の利用にあたり、余裕のある回線速度によって、これまでにない新しい形のものがある程度可能になった。例えば、簡単な文章表現のジェスチャーや相手の表情を見ながらゲームサイトでオセロをすることなど可能であった。しかし、合唱をするなどは時間差があり難しい。新しいシステムでの交流であったが単なる実験で終わらず、特別活動に位置づけ、生徒たちは真剣に郷土の発展について思考した。その中でも、単に地域の発展・便利さのみを追求するだけでなく、恵まれた環境の中で自然を大切にすることも念頭に議論していた。また、自分たちの意見に対して予想される質問等にも対応できるよう考えていた。情報発信に対しては、受信側の立場で分類・整理・表現するなど発信に対して責任を持つ姿勢が育まれると共に、普段の会話の中にも、祖父母から学んだ生活の知恵が活かされる場面があった。このような活動を通して、生徒は必要に応じて、自主的にインターネットを活用していた。高校案内など調べたいことを書籍のみでなくインターネットで検索するなど、主体的にインターネットを活用するようになった。また、様々なホームページを見て、魅力的なデザインなど注目するなどかなり興味を持つようになった。キーワード検索にあたっては最初うまくできず、検索しても膨大な情報から自分が必要とする情報が見つけられずにいた。しかし、うまくいった事例と共につまずいた事例等をお互いにアドバイスし合い徐々に慣れ、リテラシーの面でだけでなく、語彙力を身につけると共に、語彙についても意識を持つようになり、早くから慣れさせることの重要性を再認識した。

  課題として、担当者の人事異動により、技術的な面でかなり苦慮した。全ての教員が操作でき、授業に活用する体制を確立しなければならない。来年度は、メールアドレスを生徒個人に発給し、インターネットの更なる活用を図りたい。

○新100校プロジェクトに参加して

  地域における研修会を3回行った。今後もよりよい環境にある本校が微力ながらも核となって、自主的に研修会を開催していきたい。また、今年度CATV網を利用した交流を行ったが、来年度は試験的ではあるが地域のCATVの協力のもとにCATV-LANを利用して市内の中学校とネットワークを結ぶ計画がなされている。新しいシステムでの可能性を探っていきたい。生徒の変容として、文化祭の折りに手話の舞台発表を自主的に実践した。その際、「手話は万国共通ですか?そうだったら、障がい者だけでなく海外の人とも言葉は通じなくても容易に交流できますね。」という質問が出たことには驚き感動した。単にインターネットを活用するだけでなく、その過程を通して、福祉やボランティア活動を自主的に行うなど心豊かな人間性を持った自主的、実践的な態度を育てていきたい。