浦和市立高等学校

「高等学校普通科における、ネットワーク環境の活用」

浦和市立高校 中里 正樹

1.はじめに

  本校は、埼玉県南部に位置し、一学年9クラス27学級の普通科高校で、生徒のほぼ全員が進学を希望し、毎年70%の生徒が現役で大学や短大に進学している。教育課程は、週34時間で行っており、土曜の振り替えも7時間目を月、水と2日間作って対応している。さらに、理系・文系それぞれの要望に答えるために、2年次から類型分けを行っている。こんな中で、1単位でもコンピュータ関係の時間を確保することは難しかった。そこで、ネットワークの日常化と、ネットワークの普通授業での活用をテーマに進めた。

2.校内のネットワーク設備

  本校のインターネット利用は、100校プロジェクトのサーバー1台、クライアント1台で始まった。半年後、新校舎のネットに接続することによって、情報学習室21台のコンピュータで利用できるようになった。一部の興味ある先生方は情報学習室まで足を運んで使っていたが、一般の先生方には遠い存在だった。

  一年後、情報学習室から、ネットワークを引いて職員室で使えるようにした。このコンピュータを使って、ネットサーフや電子メールを使う教員が増え、利用が一般的になった。留学生に使わせると、本国の家族や友人と電子メールを交換するようになり、毎日のように職員室のコンピュータを使いに来た。

  100校プロジェクトが終わり、新100校が始まったころ、先生方や後援会の理解をいただいて、校内にネットワークを拡げることが出来た。職員室から図書室、数学、社会、物理、化学、生物、地学、進路指導室、進路資料室と結んだ。各部屋では教員の利用が主ではあるが、図書室では2台のコンピュータを生徒に自由に使わせている。この2台は、授業の資料検索や電子メールで閉館まで利用者が並んでいる。

  コンピュータをネットワークに繋いで使い出すと、新聞記事を始め新しい情報がたくさん出てくる。その場で電子メールをやり取りすることもできる。コンピュータが情報処理の機械ではなく、情報を集め、処理し、発信していく道具であることが解る。

  100校プロジェクトが始まっころ、ネットワークやUNIXの技術は全く零に等しかった。本や雑誌を頼りに、ネットワークを引き、機器やソフトの設定を行ってきた。現在、一番の難関だったインターネットサーバーも、パソコンUnixを導入することによって実現することができ、セカンド・サーバーとして動いている。まだ、解らないことが多く不安があるが、OCNと併せて一人立ちできる基礎は固まってきた。

3.本校における、ネットワークを利用した授業

  本校では、(1)ネットワークを資料収集の道具として利用する授業と、(2)ネットワークそのものを理解するための授業が行われている。

 (1)資料収集の道具としての利用

   1年の政治経済では、教室の授業のほか、自らのテーマで資料を集めレポートを作成する調べ学習を行っている。今までは、図書館学習という形で、本やCD−ROMを使って資料を集めさせていた。しかし、生徒のテーマは新しい内容のものが多く、図書館の本では生徒のテーマに充分対応できなかった。インターネットを導入すると、新聞記事を始め多くの情報源があり、検索ソフトを使うことによって目的の資料を手に入れている。

   3年の倫理社会では、授業の中でディべートを取り入れている。クラスを4人ぐらいの班に分け、その2班を賛成派と反対派にして、自分達の立場を立論させ競わせている。生徒は、発表に勝敗が付き成績に響くとあって、真剣に資料を集めて立論を行っている。昨年、一部の生徒が資料集めにインターネットを使いだし、効果的だということから、今年は利用する生徒が激増している。しかし、インターネットで資料を沢山集めた班も、自分達で理解し立論するまでに行かないで、負けてしまう例もあった。

 (2)ネットワークを理解し使いこなすための授業(ネットワーク・リテラシイの育成)

   本校の2年生は、文系1、文系2、理数系の3類型に別れる。文系1のクラスでは、理科は教養として物理1A2単位を学習する。物理1Aを物理の先生と二人で、クラスを2班に分け、中間テストを切り替えとし、週2時間でコンピュータネットの授業を行った。物理TAでは4章に情報と情報処理、5章に発展があるので、この部分にネットワークの授業を位置づけた。一学期はネットワークの基礎として、教科書の内容を10時間ほど講義し、2学期から実習を行った。

実習回    内容
 1. 世界に広がるコンピュータネット
 2. コンピュータで文章を書く
 3.4. コンピュータで絵を描く
 5. HTMLの初歩
 6. 自分のアドレス
 7.8.9. ホームページの作成
 10.11. ホームページの鑑賞・評価
 3学期  
 12.13. 電子メール実習
 14.15.16 自分のテーマで情報検索
 17. まとめ

   あまり戸惑わないで全員が絵や文字を入力でき、最終的には全員がホームページを開設し、担当教師に電子メールを出すことができた。昨年の女子だけのクラスでは、コンピュータに興味を感じて積極的に行っている者、授業の流れに添って実習している者、コンピュータに興味を示さない者が1/3づつだった。男子は興味を示す者が大部分である。

4.まとめ

  コンピュータの好きな生徒に簡単な使い方を教えると、後は自分で実習し新しいことを吸収していく。しかし、一般の生徒は基本的なコンピュータ操作から始めなければならないので、ネットワーク環境を使いこなすまでには多くの努力と時間が必要になる。今回、一部のクラスに限ってだが普通授業の中でネットワークの使い方を教えることが出来た。1単位の授業で一通りの説明と実習を行うことができ、大部分の生徒が興味を持ち今後活用していきたいと考えるようになっている。

  時間の限られた普通高校でも、ネットワークの実習だけなら0.5単位程度の時間でコンピュータの使い方からホームページ作成、電子メールの使い方まで行うことができる。この時間ならば、単独の科目としてではなく、社会や理科の演習・実験の時間で行うことができ、実習後はコンピュータネットを学習の環境として利用することができる。図書館と同じようにインターネット環境で資料を集めたり、自分のまとめたレポートをホームページで発表するなどが行えるようになる。また、校内ネットワークだけでも、1000名の生徒がいるので、一つのネットワーク社会として充分な大きさがあり、新しい校内コミュニケーションの道具として効果がある。校内ネットワークなら充分に指導ができるので、ネットワーク社会の練習場としての効果も期待できる。

  週5時間程度の教師の時間と時間割の工夫があれば、1年生全員に体験させられるので、今後実現に向けて関係各方面に働きかけていくつもりである。