宇都宮大学教育学部附属中学校

○インターネットの利用状況

  本校は平成7年度より,文部省から「研究開発学校」の指定を受け,総合学習教科「学び方」を教育課程に位置付けた研究を行ってきた。総合学習教科「学び方」は,問題解決に必要とされる資質や能力を育成するために新たに開発した教科であり,問題解決に必要とされる諸技能を習得させるための「基礎コース」と,課題設定,追究計画立案・修正,発表活動などを行う「課題研究コース」とで構成されている。それぞれの科目は更に「基礎T」「基礎U」「課題研究A」「課題研究B」に分けられ,第1学年から第3学年にわたり,順に履修されるよう構成されている。以下に,各科目におけるインターネットとの関わりを示す。

@「基礎T」(第1学年後期)

  学習過程3「インターネットを体験しよう」(第7時〜8時)

   【学習内容・活動】インターネットの利用法を学習する。

            ・ブラウザの使い方を知る。

            ・検索サービスの使い方を知る。

            ・興味・関心のあるホームページの内容や利用方法などについて,簡単にメモする。

A「基礎U」(第2学年前期)

  学習過程2「課題の追究内容をまとめ,中間発表をしよう」(第8時〜16時)

   【学習内容・活動】決定した追究計画に従い,必要な情報を収集し,レジュメ(発表用)や提示資料を作成する。

  ※設定した課題についての情報を収集する手段として,インターネットを活用する生徒が多く見られた。

B「課題研究A」(第2学年後期)

  学習過程5「フィールドワーク」(第5時〜13時)

   【学習内容・活動】・フィールドワークを通して,自分の疑問についての情報を収集する。

            ・疑問を課題化し,解決するための手順・方法についての大まかな見通しを立てる。

  ※身近な所から発見した疑問を追究課題とするための情報収集の手段として,インターネットを活用している生徒が多く見られた。

  ※課題を追求するための手段として,インターネットが有効であるかどうかを検証する生徒が多く見られた。

C「課題研究B」(第3学年前期)

  学習過程2,5「課題の追究」(第2時〜9時,第14時〜27時)

   【学習内容・活動】・自分の課題について,追究計画に従い必要な情報を収集・選択・加工する

            ・課題発表会での他の生徒の反応や意見を参考に,課題と追究方法について再検討や修正を加えながら追究活動を続ける。

  ※課題の追究過程における情報収集の手段として,インターネットを利用する生徒が多く見られた。

○平成9年度の成果と課題

  本校においてインターネットは,いい意味でその存在を特別視されなくなってきている。生徒・教師は,インターネットを情報収集のための一手段とみなし,例えば図書室にある図書を閲覧するのと何ら変わらない感覚で使用している。PCルームに関しても,もはやそこは特殊な場所ではなく,理科室や音楽室と同様の一特別教室となっている。以下に,その成果と課題について示す。

【成果】

 @校内イントラネットを構築した

   WindowsNT4.0Serverを導入し,PCルームを含め校内に点在する約50台のPCをネットワークで結んだ。このことにより,ネットワーク・コンピューティングに関する理解が深まり,インターネットをネットワーク上の共有資源として活用することの有用性がさらに認識されるようになった。

 APCルームを開放した

   WindowsNT4.0Serverの提供するセキュリティをWindows95クライアントに効果的に適用し,各クライアントPCのシステムメンテナンスの負担を大幅に削減した。同時にPCルームを,授業時以外の休み時間及び放課後に開放することが可能となった。これにより,生徒・教師は自由にPCルームを使用できるようになり,インターネットをより身近に体験することができるようになった。

 B各教科での取り組みが盛んになった

   総合学習教科「学び方」の実践を通して,情報収集の手段としてのインターネットの有用性が広く認知され,各教科においても積極的に取り入れようとする傾向が強まった。

  <国語科>方言しらべ:第1学年

  <社会科>課題学習のための資料の収集:第2学年

  <理科>「地震」の資料の収集:第3学年

      「太陽」の資料の収集:第1学年

  <技術・家庭科>学級のホームページつくり:第3学年

          課題学習のための資料の収集:第3学年

  <外国語科(英語)>ディスカッションのためのテーマに即した資料の収集:第2学年

  <学級活動>修学旅行の目的地の情報収集:第2学年

【課題】

 @ネチズンとしての資質の向上

   ネットワーク上にあるPCは,スタンドアロンのそれと比較して,便利な点が多い反面不便を強いる場合も多い。特に,アカウントの管理や運用の規定などがそれにあたる。イントラネットの導入後,「面倒な手間が増えた」「融通が利かない」等の声も時折聞かれる。生徒・職員のすべてがメールアドレスを持ち,自由にそれを使用することが可能であるが,ネチケットを遵守させ運用させるためには膨大な時間を必要とする。ネットワークコンピューティングをある程度理解させるには,PCの運用に関する基本的知識が要求されることは否めない。

 A倫理的な問題

   本校では,インターネットの利用に関しては特に規則などを設けていない。すべて利用者の理性に頼っているのが現状である。そのことが,インターネットをより身近なものと感じさせることに効を奏していることは事実であるが,その反面いわゆる「有害」サイトのアクセスに関しても,何ら制限を課していないということも事実である。幸い,今までの所そういった事例は見られないが,今後において大きな課題となるだろう。

 Bシステム管理者の負担

   ネットワークを運営するには,ある程度専門的な知識と技術が要求される。それを用いて生徒を指導するにあたっては,指導者が正しい知識と確かな技術を有している必要があるだろう。しかし現状において,すべての指導者にそれを要求することはまったく現実的でない。つまり,管理者にあらゆる要求・質問が集中することになる。

○プロジェクトに参加して

  本校では,コンピュータの教育活動への導入を早くから行ってきた。100校及び新100校プロジェクトへの参加は,さらにこれを前進させることに役立った。今後,ネットワーク化が推進されるであろう教育現場において,本校の事例が一つの参考となれば幸いである。