5.3 理科実験観察データベース作成プロジェクト

岡山県立岡山芳泉高等学校

5.3.1 概要

平成8年度共同企画として作成を始めた「理科実験観察データベース」について,検索機能の追加,実験実施例の収集などを平成9年度は自主企画として継続して行った。

この企画では理科教育においてきわめて大切な,実験・観察についてその実施例をネットワーク上に公開し,データベース化することで,それらの交流を図り,授業において,安全で効果的な実験・観察を行うために活用することをめざしている。

今年度は次の3つの点を中心に企画の実施してきた。

・このデータベースにふさわしい実験・観察の実施例を公開する
・検索機能の付加など,データベースの機能を強化し,利用しやすいものにする
・既に公開されている実験・観察の実施例をデータベースに登録し,検索可能な 状態にする

 

5.3.2 実施

 平成8年度に運用を始めた理科実験・観察データベースにおいて未完成であった,検索機能の追加と新規実験事例の公開および登録事例の充実を目指して実施した。

(1)検索機能の追加

検索機能を追加するためのCGIプログラムの作成は,自主企画に対する支援として,三菱総合研究所佐藤信一氏によりperlを用いて行われた。

登録時に登録フォームのチェックボックスで指定したキーワードおよび自由記述のコメント内の語句をフリーキーワードとして検索できるようになった。

(2)実験事例の公開・登録

本データベース用の実験事例の公開に向けて,岡山の化学教員有志で構成された研究グループが月1回開く研究会で,実験に関する研究,HTML化の方法に関する研究などを行った。このグループからの登録件数は9件であった。

Web上に公開されている実験事例の登録を依頼し,作者に登録してもらった。今年度の登録件数は35件であった。

(3)データベースの運用

検索機能の実装がほぼ完了した時点で,ホームページの内容を改良した。フレームページを使用することで次のような点に対応すると同時に構成をわかりやすくした。

・検索機能を追加する作業との関係で発生したサーバ内でのディレクトリの変更に対応する
・アクセスカウンタを付加する
・データベースのページを表示したまま,他のサーバにある実験のページを閲覧できるようにする

(4)参加者およびそのリストの作成

この企画は,本校の理科教員の他,次の方々の協力を得て行った。

・昨年度の共同企画に参加した学校個人のうち,継続して協力の得られる学校等
・岡山市周辺地域で活動している化学教育研究グループ「DIGEST」参加者
・実験事例等をWeb上に公開し,本データベースに協力いただける方


本データベースの作成に関わった方の自己紹介用にWebページを作成し,プロフィールを登録してもらった。これは,本データベースが個々の実験ページへのリンクを基本としているため,登録された実験事例を公開した方のホームページに到達しにくい点を改善するためである。また,本データベースの利用者に,実験事例の公開や登録に関わった人物のプロフィールを知ってもらうことで背景を理解しやすくすることも兼ねている。2月9日の時点で13人のプロフィールの登録があった。

(5)広報活動

aimitenoメーリングリストや理科教育メーリングリストを通して本データベースの利用や登録についての広報活動を行った。

5.3.3 効果と課題

(1)効果

利用実績の目安として,月別アクセス状況を表5.3−1に示す。表中のアクセス数は,本データベースのホームページに対する各月のアクセス数である。検索機能を付加し,メーリングリストなどで広報活動を行った平成10年1月にはアクセス数が増加している。

表5.3−1 月別アクセス状況(平成9年3月〜平成10年1月)

10
11
12
アクセス回数
344
291
424
398
345
371
466
473
379
464
898
検索機能の付加により,登録された実験事例が増えた場合でも,興味のある実験を探しやすくなった。

現在のところ本データベースがどのように利用されているかについての把握が十分にはできていない。活用例としては,次のようなものがある。

・本校の化学IBの授業で,データベースに登録されているシャーレを使った電気分解の実験例を参考にして生徒実験を行った。

・岡山県教育センターで行われた「平成9年度観察実験指導力講座中学校・西部地区」において,本データベースに登録された実験事例を参考にして研修資料が作成され,研修が進められた。

(2)課題

データベースとして価値あるものにするには,さらに有意義な実験事例の収集,作成を進めることが必要である。少数の者だけでこれらを行ったのでは,限外があるため,より積極的な広報活動や協力者の募集が必要となる。

登録内容について公開前に行う審査を適切に実施するためには,各分野に詳しい審査グループを設けるべきであろう。

検索や登録のインターフェイスについてさらに研究改善が求められる。また,現状では本データベースで検索した実験事例を参照しても,その動きがデータベース側から知ることができないため,データベースの活用度が把握しにくい点についての改善も必要である。

時間が経過するにつれて,登録された実験事例のURL変更などが生じてきた。予想されていたこととはいえ,一時的なネットワークのトラブルなのか,当該ページの削除,URL変更などが起こっているためなのか等についての確認にかかる手間が増えてきた。