5.10 ディベート大会
高根沢町立阿久津中学校教諭 山田敏夫
 
5.10.1 概要
 
 インターネットを使って本校と他校との生徒間でディベートを行う。
 
 (1)目的
 本校では、第2学年の国語科の学習でディベートを行ってきたが、授業では学級内グループ対抗でのディベートであり、対戦している者同士がよく知っている仲間であるので、主張の根拠が曖昧だったり、議論の発展性に欠ける場面があった。また、同じ地域に住み、同じような生活体験をしているので、考え方も似ている。そこで、他校とのディベートならば緊張感が増し、より高度な議論が展開できるのではないかと考えた。さらに、このディベートに参加しようとする生徒は、授業のように狭い範囲での場所や時間にとらわれずにすみ、自分の意志で参加するという積極的な姿勢が期待できると考えた。そして、この取り組みを本校の他の生徒に紹介することで、ディベートの授業の活性化や内容の充実が図れるのではないかとの想いから、インターネットを利用して、他校とディベートを実施することとした。
 (2)学校間の連絡の手段
 本校のインターネットの設備の環境は、校内にサーバを持ち、アナログモデム(28.8k)回線でTRAINに常時接続しているが、テレビ会議等のシステムやUNIXでチャットなどのCGIを駆使する技術がない。そこで、インターネットの基本的な利用法である電子メールの機能を利用することとした。
5.10.2 実施
 
 (1)参加校の募集と連絡調整の経過
 平成9年5月からインターネットでディベートをやるために他校と電子メールで、実施方法や日程等の連絡をしたが、調整がつかず断念した。当初、本校では3年生を参加させる予定でいたが、1学期での実施が難しくなったため、2年生の参加に切り替えた。国語科の授業では2年生の10月からがディベートの学習であるので、その授業が終わり次第他校との取り組みを再調整することとした。なお、その間に本校の授業でのディベートの内容をホームページに紹介することで、他校に参加を呼びかけるだけでなく、自らの情報の発信にも心がけることとした。
 11月には国語科のディベートの授業も終わり、記録したビデオからホームページを作成し、再度他校とのディベートの調整に入った。結果、同じ栃木県でマルチメディア活用研究実践学校である西方町立西方中学校の参加を得た。
・5〜6月 他校と電子メールで内容、日程の調整をするが、合わずに断念
・10〜11月 2年生が授業でディベートの学習
・12月12日 ホームページで授業でのディベートの内容を公開
・12月12日 参加校の募集をメーリングリストに流す
・12月12日 参加校の募集を新100校プロジェクトの掲示板に記入
・1月13日 申し込みがないので、近隣の学校に個別に打診
・1月16日 西方町立西方中学校から参加の返答
・1〜2月 内容、方法、日程調整
・2月   西方中学校3年生とディベート開始
 (2)参加校
 高根沢町立阿久津中学校(本校)(関良夫校長)
 西方町立西方中学校(高久善道校長)
 (3)参加者
  とりあえず1チーム(人数制限なし)で開始する。
 
 (4)フォーマット
 
    ・肯定側立論
    ・否定側質問
    ・肯定側回答
    ・否定側立論
    ・肯定側質問
    ・否定側回答
    ・否定側反駁
    ・肯定側反駁
 
 (5)判定
 生徒間のやりとりが終わり次第、メーリングリストに判定の依頼をし、寄せられた判定をもとに結論を出す。
5.10.3 効果と課題
 
 (1)効果
 2月10日現在、ディベートが進行中であり、現在までの効果については次の2点である。
 1点目は、教師がインターネットに公開されている高等学校や一般の大会などで行われているディベートを紹介することと、生徒が行ったディベートの内容をホームページで公開することで、授業でのディベートへの興味・関心が高まったことである。
 2点目は、授業で実際に生徒がディベーターとなるのは基本的に1度だけであり、もう1度ディベートやってみたいという気持ちの生徒にその機会を与えられなかったが、この企画により実現できたことである。
 現在の進行状況では以上のように些細な成果ではあるが、今後ディベートが行われていく中で次のような効果が期待できると考えている。
 まず、参加者の意欲が高いことと授業で1度経験していることで、校内でやったディベートよりも主張の裏付けがしっかりした、内容の濃いディベートになるであろう。
 次に、生活体験の違う生徒が議論をすることで、生徒があたりまえと考えていることが他人にはそうでないこともあり、考え方の多様性を認識できるであろう。
 そして、このことをきっかけとし他の学校や生徒の情報に関心を持ち、ホームページや電子メールで生徒間の交流が活発になるであろう。
 (2)課題
 今回のディベートに関して最大の難点は日程調整の問題である。1つのディベートで1ヶ月近い日数を要するので、その間に定期テストや部活動等の大会があり、放課後の部活動や定期テスト前の勉強などと重なってしまうことが多い。その期日が本校と相手校に違いがあり、調整をさらに難しくした。2学期の後半になり運動部の大会や芸術祭などが一段落すると、やや時間が使えるようになってくる。そこで、今後この時期に合わせてこの企画を実施できるように、年間の日程を調整する必要がある。
 また、中学生になって初めてディベートをする生徒がほとんどだが、興味・関心の高い生徒も多いので、今後も継続的にこのような機会を作れるよう、また参加するチーム数が増えても対応できるようなメールアドレスやメーリングリストの設定や、CGIを使ったWebでの公開、さらには、掲示板等で生徒が自主的に相手を見つけ、ディベートができるような環境をつくっていきたい。