5.12 Oral Communication におけるInternetの利用
茨城県立岩井高等学校 野村 由美子
 
5.12.1 概要
 
 茨城県では、近年多くの県立高等学校にインターネットを取り入れ、様々な活用法を研究し、教育活動に役立ている。岩井高校においては、平成7年よりインターネットが接続され、生徒が自由にコンピュータを使える環境が整っている。当初は国際交流クラブの生徒が中心となって活動し、海外との電子メールのやりとりやホームページ作りなどに取り組んだ。教科においては、主に英語、理科において実践し、昨年度は英語の授業でカナダとの電子メールによる文通活動を行った。その他、3ヶ国が1つのチームとなり、共同で1つのプロジェクトに取り組むというバーチャルクラスルームなどにも参加している。
 今回の研究では、CU-SeeMe を導入し、コンピュータ上でカメラを通して海外の学校と直接英語で会話をするという実践をし、生徒のコミュニケーション能力を高めることを目的とする研究を行った。
 
5.12.2 実施
 
5.12.2.1 実施計画
 
 (1)実施対象
 
   1年7組の英語Tにおいて実施
    
   交流校  Frederickton Public School 
          Great North Road ,Frederickton
          New South Wales, Australia 2440
 
 (2)交流相手の選定
 今回の研究で、一番苦労したことは相手校の選定である。相手校の選定に際してはCU-SeeMe のメーリングリストに参加し、相手校募集のメールを出し、相手を募った。その中で、いくつかの学校から申し出があったのだが、すべての学校と条件が合うというわけにはいかなかった。時差の少ない学校を希望していたので、オーストラリア、ニュージーランド、アジア圏の学校を探した。その中で今回の交流校をどうにか決定することが出来た。Fredericton Public School は小学校であるため、10歳から12歳の生徒と交流することとなった。
 (3)授業実践までの経過
 交流校を決定後、実際にお互いの画像が届くか、音声が通るかの実験を数回試みた。期待に反して、最初はオーストラリアの画像が届かず、音声も通らないという状態が続いた。しかし、お互いにCU-SeeMe の情報を交換しあい、調整するにつれて、徐々にオーストラリアの画像が見えるようになってきた。音声については、わずかにこちらの声が届いたのみで、ほとんど通らなかったため、今回は音声によるコミュニケーション活動からチャットのみで交流するという活動に変更した。
5.12.2.2 実施内容
 
 授業は2月の下旬に行った。まず、1クラス40名を6つのグループに分け、それぞれのグループでオーストラリアの生徒への質問を考えた。質問内容は以下の通りである。
 Group 1 How is the weather today?
      Is it summer in Australia now?
      What season do you like best?  
 Group 2 Do you have school uniform?
      What subjects do you study?
      What kinds of clubs are there in your school?
 Group 3 Do you have school lunch?
      What sports is the most popular in your school?
      Who is the popular singer in Australia?
 Group 4 Is it hard for you to learn Japanese?
      What do you think of soccer team in Japan
      What did you think of Nagano Olympics?
 Group 5 Have you tried Japanese food?
      Are there any Japanese restaurants in Australia?
      What is your favorite food? 
 Group 6 We'll teach you some Japanese.
      Do you know how to say "thank you" in Japanese?
      Do you know how to say "music" in Japanese?
 
 グループごとに質問を考えた後、グループ内で一人一人役割分担を決めた。CU-SeeMe のカメラにうつる生徒、チャットの時にキーボードを打つ生徒、交流の内容をまとめる生徒など、一人一人が参加できるように配慮した。その中でもキーボードを担当する生徒は、チャット時になるべく早く打てるように事前にタイピングの練習をした。
 また、授業当日は、万が一オーストラリアの学校とうまく接続が出来なかった場合に備えて、本校のALTに協力してもらい、校内の別の場所にもうひとつCU-SeeMe を設置し、待機しておいた。その場合、オーストラリア用の質問とは別の質問を用意しておいた。校内の場合は音声も問題なく通るため、英会話の実践も行うことが出来た。ALTのための質問は以下のようなものである。
 
  Do you like Iwai High School?
  What did you think of Nagano Olympics?
  Who do you think is the most handsome teacher in Iwai High School?
  What do you think of soccer team in Japan?
  Who is your favorite actor?
  Do you like Japanese food?
  Do you know how to say "thank you" in Japanese?
  Do you know how to say "music" in Japanese?
 
 上記の質問が全て行うことが出来たわけではない。こちらの質問に対して、相手側も質問をしてくるので、臨機応変に応対していかなければならない。咄嗟の相手側の質問に答えられるかが求められたが、生徒達は自分たちの答えられる範囲でなんとか応対した。
 授業当日はオーストラリアとの接続が割合うまくできた。向こうの画像も半分以上届き、チャットもスムーズに行うことが出来た。チャットの場合、質問をした後に
相手の答えを待つ間に多少時間がかかったが、ほぼリアルタイムで交流を行うことが出来た。以下に大まかなオーストラリアとの交流の記録をまとめる。
 
<Frederickton Public School> Hello from Australia!
<Iwai High School>Hello from Japan!
<Iwai High School>How is the weather today?
<Frederickton Public School> It is very hot!! 
<Iwai High School>Is is summer in Australia now?
<Frederickton Public School> Yes.
<Iwai High School> What season do you like best?
<Frederickton Public School> Everybody said summer.
<Iwai High School> What subject do you study?
<Frederickton Public School> Math, English, science, language, technology, human society and its environment, sports, personal health, geography, history, music, art, Japanese and so on.
<Iwai High School> What kinds of clubs are there in your school?
<Frederickton Public School> Stamps, Red cross.
<Iwai High School> Do you have school lunch?
<Frederickton Public School> No. But we have a shop on Monday and on Friday.
<Iwai High School> What sports is the most popular in your school?
<Frederickton Public School> Cricket, netball, basketball, and Tips(Chasing game).
 
以下に本校のALT との交流の記録をまとめる。
<Iwai High School> Hello, Fiona. How are you?
<Fiona> Hello! I'm fine. How about you?
<Iwai High School> I'm fine, thank you.
<Iwai High School> Do you like Iwai High School?
<Fiona> Yes. I like Iwai High School. Teachers are very friendly and kind. Studenst are very nice and intelligent. How about you? Do you like Iwai High School?
<Iwai High School> Yes. What did you think of Nagano Olympics?
<Fiona> I think it great!
<Iwai High School> What do you think of soccer team in Japan?
<Fiona> Great. My favorite soccer team is Kashima Antlers. How about you? What is your favorite team?
<Iwai High School> I like Kashima Antlers, too.
<Iwai High School> Do you like Japanese food?
<FIona> Yes. I like Japanese food very much. My favorite Japanese food is "Yakisoba".
    How about you? What is your favorite Japanese food?
<Iwai High School> I like Udon.
<FIona> I'm sorry, but I don't like Udon.
<Iwai High School> We'll teach you some Japanese.
<Fiona> Yes, please.
<Iwai High School> Do you know how to say "thank you" in Japanese?
<Fiona> "Arigatou Gozaimasu". Is that right?
<Iwai High School> Yes, that's right. Do you know how to say "music" in Japanese?
<Fiona> I'm sorry I don't know. Please teach me.
<Iwai High School> It's "Ongaku" in Japanese.
<Fiona> Thank you.                    
 
5.12.2.3 授業のまとめ
 
 今回の授業では6班のうち3班がオーストラリアと交流し、残り3班が校内のALTと交流した。オーストラリアと交流したグループは、音声は通らなかったためチャットのみで交流した。一方、校内のALT と交流したグループは、音声がはっきりと通ったので、ほぼ同時進行でコミュニケーションが出来た。生徒の反応は、自分達の顔も写しだし、相手の画面も見ながらコミュニケーションを図るということに興味を覚えたようだ。ややキーボードを使ってチャットを行うことは、難しかったようだが、オーストラリアへ質問した答えが、1分前後で返ってくるということに驚きを表していた。
 
5.12.3 効果と課題
 
5.12.3.1 効果
 
 CU-SeeMeを英語の授業で利用することによる効果は、まず第一に、生徒の英語に対する興味をさらに伸ばすということである。海外の交流相手と相手の顔を見ながら英語で直接会話をすることによって、生徒たちの英語学習の動機づけを高めると同時に、英語はコミュニケーションの手段だということをより認識することができる。そして交流を通じてお互いの文化の類似点・相違点などの認識をより深いものに出来る。
 
5.12.3.2 課題
 
 授業実践を通して、CU-SeeMeを授業に利用する際の様々な課題が見えてきた。まずは相手校の選定である。相手校はすぐに見つかるだろうと思っていたが、時差の少ないところなどこちらの条件に合う学校を見つけるのは非常に困難だった。交流校を探す場合は余裕を持って探す必要があると実感した。また、今回のオーストラリアとの交流は、相手の画像が全てはっきり見えるというところまではいかず、また音声の面でも直接英会話が出来るようにはいかなかった。その原因としては、お互いの CU-SeeMeのバージョンの違いが挙げられる。CU-SeeMe は様々な細かいバージョンがある。また、コンピュータの機種の違いやお互いの送信速度の違いも画像がうまく届かなかった理由となる。こういった問題を解決するためには、お互いに実験を繰り返し、違いをなくしていく必要がある。そして今後は本来の目的である、相手の顔を見ながら音声でコミュニケーションが出来るような環境を実現していきたい。