5.13 地域の人々と一体になった情報発信(親子で作るデータベース)
つくば市立桜南小学校 今泉 英樹
 
5.13.1 概要
 
(1)保護者にむけての情報発信
 保護者の支援による協同学習の環境を整えるために,まず,学習成果や学校生活における児童の様子をホームページの情報として発信した。これにより,保護者に児童の学習の様子や,インターネット活用の様子を理解してもらい,さらには,「教育におけるインターネット活用の有効性」を感じとってもらいたいと考えた。こうした理解を得ることが,保護者や地域の人々による支援体制作りの基礎となると考えた。
(2)地域を生かした協同学習
 以下の環境を整え,地域学習を中心に保護者からの情報提供や学習への援助をしてもらったり,他校との学習情報の交換したりすることで,地域の人々との協同学習を行い,学習を深める。
 ア 情報を提供協力できる保護者及び協力者のメーリングリストの作成
 イ 保護者・地域の人々を中心とした学習ボランティアのメーリングリストの作成
 ウ 隣接校とのネットワーク協同学習(メール・ホームページ・テレビ会議など)
5.13.2 実施
 
(1)学習協力用メーリングリスト開設(6月運用開始)
 PTAの翻訳ボランティアを含め,児童の学習に協力してくれる方々のメーリングリスト(メールアドレス:help@ounan-es.tsukuba.ibaraki.jp)を作成した。
(2)ホームページ・学習データベースの作成(4月〜)
 
 学校での児童の生活の様子などとともに,インターネットを利用した情報収集・情報交換を取り入れた学習の成果を,教科・単元ごとに「学習データベース」としてまとめ,ホームページ上に公開した。
 またそれに対する保護者や他校からの反応(意見・感想・疑問など)をもとに,さらに学習を深めてきた。
図5.13.1 学習データベース
 
a.環境問題
 理科・社会・国語の合科的学習として,「環境問題」をテーマとして,各自が課題を設定し,学習した。
 その学習段階として,
    1 資料収集と現状の認識
    2 個別テーマ設定
    3 問題解決
    4 学習内容のまとめ
 としたが,特に1と3の段階において,ホームページから情報を収集するだけでなく,保護者や各種研究機関等地域の人々から情報を入手した。さらには電子メールを利用した疑問の解決や専門的立場からの助言も得ることができ,各自が納得のいく研究を進めることができた。特にインターネットを通じて直接話を聞いたりすることは大変効果的であった。
 5年生では,「花室川の水質調査」について,隣接学区校であるつくば市立並木小学校と協力しての学習を行った。
 「花室川」は,桜南小学区・並木小学校を流れる河川であるが,その水質調査を上流部を並木小が,下流部を桜南小学校が行い,児童同士がインターネット上を利用し,電子メールおよびテレビ会議などによって,それぞれの調査結果についての情報交換を行った。
 現在,この学習は発展的に花室川の流れる地域の学校すべて(8校)によるプロジェクトへと広がりつつあり,さらに他の教科・単元での学習協力体制へと,より確立されつつあり,これに関する研究所からの協力体制も整って来た。
 
b.伝統工芸
 5年社会科において,上記(1)と同様の手順をとり,「伝統工芸」について学習した。また,データベース作成後,他の地域とホームページおよび電子メールを利用した情報交換を行うことにより,自分たちの地域の伝統工芸についての特色を再認識することにより理解を深めた。
 
5.13.3 効果と課題
 
(1)効果
 従来の地域に関する調べ学習では,十分な資料がなかったり,図書資料を中心とした資料で,大変狭い範囲のものであったりすることが多かった。そのために,児童の十分な追究を保証することができないことがあった。
 これらの問題を解決するために,保護者や地域の研究者等へ協力を呼びかけたところ,多くの協力者を得ることができ,メーリングリストが作成できた。これにともない,保護者が授業中,直接援助してくれたり,児童の質問に対し,諸機関の関係者が答えてくれたりと,児童個人の興味関心に対して,より細かく応じることができ,児童にとって意欲の向上と理解の深まりにつながってきた。
 学習成果をホームページを利用したデータベースとして児童相互に共有資料として活用することも,学習の深まりにつながった。  また,保護者のインターネット利用に対しての認識も高まりつつあり,学校へのメール数の増加するとともに,学習協力者が次第に増加しつつある。さらに児童と協力してホームページを作りたいという保護者もあり,今後のよりいっそうの活用が期待される。
(2)課題
 現段階では学習協力の範囲が,学区および隣接校程度の狭い範囲のものである。現在さらに広い範囲での学習協力体制を整備しつつあるが,それを十分に生かしていくことで,学習協力におけるさらに活発な活用が期待される。
 また,今回のメーリングリストの活用に関しては,まだ活用期間が少なく,利用頻度もそれほど高くない段階であった。今後さらに協力体制を整え,児童が学習に積極的に使えるようにするため,学習内容との関連を考えたりそのジャンルごとに設定したりしていくなどの活用システムの確立が必要であろう。