5.14 同じサーバー上の同一ディレクトリーでの
     国際共同作業研究

清水国際中学・高等学校  井柳 強

5.14.1 概要

 (1)この研究の目的

  本校サーバー上に、つぎのような国境のない世界の子どもたちの共同作業広場の建設を計画した。本年度は、特にこのような企画が技術的に可能かどうかを検証することを目的に自主企画に参加した。

1)インターネット上の仮想空間に教室を作り国際共同作業をする。
2)世界のだれでもこの教室の生徒になることができる。
3)この教室に掲示板と提示装置を置く。
4)この掲示板は参加者だれもが自由に読み書きができる。
5)この提示装置を掲示板から起動して個人または共同で発表ができる。

 (2)自主企画への応募 

 これまで、海外の学校、その他にIDとパスワードを発行して自分の学校のサーバーに自由に入り込み、書き込みを許すことはできなかった。それはサーバーの安全性の問題からであった。しかし、新100学校プロジェクトの中で実験的にではあるがこれまで認められなかったことを実験できたたことをとてもうれしく思った。

5.14.2 実施

 (1)システムの設計

 このような世界の子どもたちの広場(私はこれをインターネット上のユートピアと呼んでいる)の基本設計を次のように決定し技術支援をお願いした。

1)交流参加者にIDとパスワードの発行ができるようにする。
2)本校のサーバー上の特定のディレクトリーに自由に入り込み、読み書きを許す。
3)二つの掲示板、国内用と国際交流用を設置する。
4)掲示板から上記FTPサーバー上のHTMLを起動できるようにする。
5)このディレクトリーから他を覗いたり、他に入り込みができないようにする。
6)HTMLの修正は、ダウンロードしてから修正しアップロードする。
7)掲示板上のメッセージの削除権は、暫定的に掲示板の管理者とする。
8)共同作業領域ではFTPの操作コマンドをすべて利用可能とする。

 (2)運用

 7月・・・・システム設計 8月・・・・リモートコントロールによる工事

 9月・・・・設計変更とテストラン、デバッグ  10月〜1月・・・運用

 2月・・・・報告書作成

 (3) 具体的実践例としての 「国際書道教室」

 ここではモスクワ近郊のロシア科学アカデミーの中学生との交流を例に紹介する。

1)交流相手が自作の書道作品(資料1)を画像ファイルにして、これを表示するHTMLと共に本校サーバー上の共同作業領域に置く。
2)掲示板に添削を依頼する作品を置いたことをアナウンスする。
3)この作品の画像ファイルを本校でダウンロードし印刷、国語科の教師が添削する。
4)この添削された作品(資料2)と手本(資料3)をスキャナーで取組み画像ファイルにして、前記のロシア側が置いたHTMLを書き直して、この二つの作品を共同作業領域にアップロードする。
5)交流相手がこれを参考にさらに良い作品作りに挑戦し、これを再び提示する。

 (4)このシステムを利用した他の実践例

1)モスクワ近郊のロシア科学アカデミーとデジタルカメラを使用した「日本・ロシアの野草カレンダーの共同編集」
2)タイの高校生と本校中学生との絵本の共同編集 3)「全国発芽MAP」での絵本「ケナフは虫たちのホテル」の共同編集。

5.14.3 成果と課題

 (1)課題

 世界規模のネットワーク、インターネットの双方向性を生かした理想的なシステムであったが、交流を進める上でいろいろな問題点があった。 
1)FTPコマンドを自由に使用して交流できる相手をみつけることが困難であったこと。
2)本校FTPサーバーへの画像アップロード時間が予想外に長くかかり敬遠された。
3)HTML作成能力に大きな差があり、私たちがもっと勉強しなければと感じた。 
4)同じ共同作業領域で複数のプロジェクトを同時進行させる困難さ。
5)FTPコマンドをすべて利用できるようにしたことは、ディレクトリーごとの消去が可能であり、信頼関係のない交流相手にFTPの開放を踏み切れなかった。 
6)第1年度の研究は、FTP操作は生徒が参加できず、教員研修の段階であった。
7)掲示板のURL及び参加校名は参加校の希望もあり公開できなかった。

 (2)成果

1)同じサーバー上の同一ディレクトリーで同じHTMLを共同で追加・修正しながら完成する作業はこれまでの一方的になりがちな、見せるだけのホームぺージから一緒になって作るホームページへと変化した。 
2)HTMLの共同編集作業が同じディレクトリーで操作できるようになり国際共同作業を実感できるようになった。
3)この研究を通してFTP利用技術が向上、これからこのシステムをどのように利用して国際交流を展開するか、いくつかのアイデアが生まれた。
4)11月から2月にかけて、世界の230校が参加、3か国で1チームを編成して同じサーバー上の同一ディレクトリーでHTMLの国際共同編集をする国際コンテストが開催された。本校はタイ、アメリカと1チームを作り環境問題をテーマに作品作りに励むことができた。ここで学んだ体験を生かし22本のHTMLを合計200枚の画像ファイルを使用して編集し国際協力の大切さを学んだ。教師も生徒も海外交流に大きな自信をつけた。この研究は来年度も継続して研究したい。

 (3)最後に

 このシステム構築のために技術支援、指導をいただきました、新100校プロジェクト技術相談窓口の久保田様に厚くお礼申しあげます。

* 資料1 このような、海外で日本語を学習する生徒の作品が本校のサーバーの共同作業領域に表示用HTMLと共にアップロードされる。**

** 資料2 この作品を添削添削して画像ファイルにすると同時に、最初のHTMLを書き直してこれを共同作業領域に再アップロードする。**


             資料1               資料2 

 

** 資料3 学習を容易にするために手本をつける。これをみて再挑戦する。**


        資料3