5.16 全国生活・文化データベース
札幌市立幌南小学校 藤村 裕一
5.16.1 概要
 
 4年生社会科の学習に,日本の高地と低地,北国と南国など特徴ある地域を取り上げて,それぞれの自然条件に適応した生活や産業の工夫の様子を学習する単元「さまざまな土地のくらし」がある。
 本校では,この学習をする際に,教科書や資料集などの既成の資料だけでなく,インターネットで各地の様子を調べたり,質問し合ったり教え合ったりして共同学習を行うと大変有効であると考え,北国の生活・文化・産業などを紹介するWebページ「北国情報コーナー」の公開と,質問に電子メールやWebページで答える「北国情報サービス」を行っている。
 本年度は,これらの活動をさらに充実させると共に,国内各地の学校との共同学習の実施や全国の自然条件に適応した生活・文化紹介を紹介したデータベース的リンク集を作成した。
 
5.16.2 実施
 
 この企画を実施するに当たり行った活動は,主に次の4つである。特に本年度は,他校からの強い要望もあり,「北国情報サービス」と他校との合同授業に力を入れた。
 
5.16.2.1 「北国情報コーナー」
 
 本校では,4年生社会科「さまざまな土地のくらし」の単元での利用を想定して,北国ならではの生活・文化・産業などを紹介する「北国情報コーナー」のWebページを作成公開している。作成した内容は,次のとおりである。
 ■「北国情報コーナー」トップページ
   ● 北国情報サービスへのリンク

   ●沖縄の家と札幌の家の比較クイズ
     ◎沖縄の家
      ○沖縄の家の屋根は,赤瓦?
      ○沖縄の家には水タンクが必ずある?
      ○沖縄の家の中には,日当たりがよいので明るい?
     ◎札幌の家
      ○「北国の家は,雪が落ちやすいように急な三角屋根」は,ほんと?
       (都市部におけるV字型屋根の無落雪住宅の一般化を紹介)
      ○二重まどはもう古い!?(複層ガラス窓の普及を紹介)
      ○「北国の家には,えんとつがある」というのは,うそ!?
       (壁に給排気管を取り付けるFF式暖房の一般化を紹介)
      ○「北国の家には,どの家にも石油タンクがある」ってほんと?
       (石油以外の都市ガス,電気暖房,セントラルヒーティング等の紹介)
      ○「家の前の除雪が大変!」は昔の話になりつつある?
       (個人住宅のロードヒーティング紹介)
      ○北国の家は弥生時代の倉庫にそっくり?
       (積雪の影響を防ぐため,玄関を2階部分にすることの紹介)
      ○北国の家には,「玄関フード」が当たり前というのはうそ?
       (断熱ドアや風除室の紹介)
      ○北海道の冬は,日本で一番温かい!?
       (高断熱・高気密住宅一般化の紹介)
      ○北国の家が九州でどんどん建てられているってほんと?
       (高断熱・高気密住宅が九州などでも普及しつつあることの紹介)
   ●ロードヒーティング
    (歩道や歩道橋,坂道車道のロードヒーティングの紹介)
   ●除雪のしかた(除雪道具,場所に応じた除雪の仕方,雪捨て場の紹介)
   ●冬のあそび(冬のさまざまな遊び,小学生のスキー場無料利用の紹介)
   ●冬のけしき(積雪時の街の様子や吹雪の様子の紹介)
   ●雪が気にならない街のしくみ
     ◎地下街と地下道(外を歩かなくてよい街づくり)
     ◎地下鉄(雪の影響を防ぐシェルターと世界初のゴムタイヤ式地下鉄紹介)
     ◎アトリウム(1年中夏を再現する大型アトリウム施設の紹介)
   ●札幌の学校プールの秘密(6月〜9月まで利用可能な上屋付きプールの紹介)
   ●たて型信号機(雪が積もって見づらくならない積雪地用縦型信号機の紹介)
   ●消火栓(凍結防止機構付きで雪に埋まりにくい柱型消火栓の紹介)
   ●融雪漕・流雪溝(除雪した雪をとかす融雪層,流してとかす流雪溝の紹介)
   ●昼間の長さは日本一(夏の昼間長が沖縄より2時間も長いことなどの紹介)
   ●札幌の春(梅と桜が同時に咲くなど,生物が一斉に活動を開始する春の紹介)
   ●北海道の気候(梅雨がない,台風の被害が少ない,式がはっきりしている
    など,気候の特徴紹介)
   ●札幌・北海道は,日本じゃない!?(日本本土と一線を画する北海道の文化・生態系の紹介)
   ●札幌ガイドへのリンク
   ●北海道ガイドへのリンク
   ●雪のホームページへのリンク
   ●雪まつり実行委員会公式ホームページへのリンク
   ●今の札幌(ライブカメラ3カ所)へのリンク
   ●北海道の音へのリンク

   ●北海道の伝統的おやつ(本校Webページ)へのリンク

   ●北海道の産業紹介(「雪や寒さは宝物」との逆転の発想を生かした産業紹介)
    夕張メロン,札幌玉ねぎ,きらら397(米),酪農,自動車テストコース
    札幌の水道,アルファ・リゾート・トマム

 以上のように,北国ならではの生活・文化・産業などを紹介し,多くの学校に利用していただいた。特に,12月から3月にかけては,4年生社会科「日本のさまざまな土地のくらし」の学習の時期に当たるため,アクセス数が急増し,有効に活用される内容であることが確認できた。
 
 
 また,前述のWebページのうち,「札幌の家と沖縄の家の比較クイズ」として,それぞれの家の写真を導入とした「家に集約された自然条件に対応した人々の知恵」を学ぶことができるページは,非常に利用率が高く,研究授業でそのまま利用したい旨の依頼が多く,各地でその様子が公開され,研究起用に収録されているものも数多くある。
 
5.16.2.2 「北国情報サービス」
 
 本校が,100校プロジェクトに参加し,ホームページの公開に先立って開始した企画が「北国情報サービス」である。当初は,電子メールで北国の生活・文化・産業などについての質問に答えるサービスであったが,現在は電子メールによる回答を中心としながらも,文字だけでは伝わりにくい情報について新規にWebページを作成して答えるというサービスも行っている。
 
 
 このサービスは,上記の「北国情報コーナー」同様,4年生が社会科で「さまざまな土地のくらし」を学習する12月から3月にかけて,一気に利用が増え,多いときには1日10通を越える質問が寄せられる。このように,最近は利用者数が非常に多くなったため,4年生の子どもたちや学校交流委員会だけでは返事のメールを書ききれないため,それ以外の高学年の子どもたちに手伝ってもらっている。(上の写真は,「北国情報サービス」利用者・福岡県小郡市の子どもたちである。)
 
5.16.2.3 他校との合同授業
 
 本校が「北国情報コーナー」の公開と「北国情報サービス」の提供を行っていることから,全国各地の学校から合同研究授業の申し入れがある。本年度は,大阪市立西淡路小学校,鳥取市立修立小学校,府中市立武蔵台小学校などの学校と合同授業を行った。
 大阪市立西淡路小学校や鳥取市立修立小学校とは,それぞれの土地の気候とくらしについて質問のメールを交換しながら学習し,説明に必要な写真を交換することも行った。大阪市立西淡路小学校とは,この学習をきっかけに,学習終了後も交流が継続している。
 府中市立武蔵台小学校とは,メールによる情報交換の他,テレビ会議システム
(Netmeeting)を使ってリアルタイムの意見交換も試みた。
 さらに,子どもたちは,身近なところで調べたことや気象台に質問して調べたデータなどをホームページにまとめ,府中市立武蔵台小学校の子どもたちに活用してもらった。
 
5.16.2.4 全国生活・文化データベース
 
 これまで述べた本校の「北国情報コーナー」「北国情報サービス」のようなその土地ならではの生活・文化を紹介したWebページや情報提供サービスに対するニーズはかなり高いと考えられる。そこで企画したのが,「全国生活・文化データベース」の作成である。
 現在,全国各地のWebページの中から,該当する内容を探し出し,順次リンクの許可を得ながらリンク集の充実を図り,一般公開に備えて校内で試験運用中である。 また,キーワードによる検索ができないものかと,そのシステムを検討中でもある。いずれにせよ,子どもが使いやすいようにクリッカブル・マップから利用できるようにしたり,キーワードで必要な情報だけを検索したりできるようにしたいと考えている。
 
5.16.3 効果と課題
 
 これまで述べてきたように本校の「北国情報コーナー」や「北国情報サービス」などのような全国各地のその土地ならではの生活・文化紹介に対する需要は極めて高い。これらの情報を利用してもらう中で,それぞれの地方に,気候などその土地独特の自然条件を生かした生活・文化と,それを生み出した人々の知恵・創造的営みがあることを子どもたちに理解してもらうことができた。また,本校の子どもたちをはじめ,質問に答えた子どもたちにとっては,これまで当たり前で気づきもしなかった自分たちの生活・文化・産業の工夫に初めて気づくなど,自分たちの生活の見つめ直しにもつながっていた。
 また,利用の中心は,4年生社会科「さまざまな土地のくらし」の学習であるが,意外なことに,全国の大人の人たちや大学,北海道出身で他の地方でくらしている人たちからのアクセスやメールが多かった。
 このことから,「全国生活・文化データベース」が完成し,一般公開された暁には,小学生ばかりでなく,広く利用してもらえることが期待できる。
 今後,さまざまな人たちから利用してもらいやすいように「キーワード検索」を実現するため,どのようなシステムを利用したらよいかの検討が課題である。