5.18 ちいさな質問箱
大分県立日田林工高等学校 河津文昭
 
5.18.1 概要
 
 本校は、農業系(林業、林産工学科)と工業系(機械、電気、建築、土木科)の学科が併設された学校である。インターネットが導入されて以来、数多くの専門的内容についての質問が小中学校から電子メールで送られてきた。特に、林業、林産工学科については全国的にみても学科の設置数が少ないため「環境問題」「自然」「森林」「樹木」「木材」についての質問が数多く寄せられ生徒とともに対応してきた。今回、本校のホームページに「小さな質問箱」を設定して外部からの色々な素朴な質問に対して対応することにした。また、近年地域における職業系高校の役割および学校の開放が叫ばれている中、地域にも、この「質問箱」開放することにした。
 
5.18.2 企画内容
 
 本校のホームぺージに「小さな質問箱」と題したページを設置する。
(http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/kikaku/q-box.html)
 各学科ごとに、質問のジャンル一覧を示し、ホームページより電子メールアドレスq-box@hitarinko-hs.hita.oita.jpをリンクさせ質問内容を書き込めるようにした。質問の内容により各学科ごとに振り分けられたメールは、各学科へと配信される。各学科の教員ないしは、担当教師が授業の一環として生徒と共に取り組む体制にした。質問の回答については基本的には電子メールで配信するが、場合によってはホームページを作成して画像等も発信したり、Cu-SeeMeで行う体制を整え、「個人と個人」「個人と学校」「学校と学校」のつながりが深まるように、生徒中心で対応することにした。
 
表5.18−1  学科ごとの質問内容
学  科  名     質   問   内   容
林  業  科林業、自然、環境保護、樹木等
林産工学科木材、木材の利用、紙パルプ、インテリア等
機  械  科自動車、航空機、時計 、工作機械、ロボット 等
電  気  科電気機器、電子機器、発電、コンピュータ、インターネット等
建  築  科建造物、インテリア等
土  木  科
 
道路、造物、道路、鉄道、運河、トンネル、橋、河川、港湾、 空港、上下水道、埋立て等
 
5.18.3 成果と課題
 
5.18.3.1 教育効果
 
 (1)質問者側の教育効果
 
   ・質問の手助けをすることにより、質問者の問題を解決していこうとする姿勢や方法等自ら考え出そうとする力が養成される。
   ・より専門的な知識が得られる。
   ・メール等の交換によりネットワーク上のマナーおよび技術が得られる。
 
 (2)解答する本校に対する教育効果
 
   ・質問の内容は広範囲に渡ると思われることから普通科、専門教科担当教員がジャンル別に対応することから、全教職員でこの企画に対応できるようになり、全校で新100校プロジェクトに取り組む体制ができた。
   ・小中学生が考えている質問に対して、わかりやすく解答するためには十分な知識がないと解答できない。したがって、自分たちの知識が深まった。
   ・メール等の交換によりネットワーク上のマナーが得られる。
   ・一般市民(地域)と学校との繋がりがつくられてきた。
 
 (3)「ちいさな質問箱」を運営する上での留意点
 
   ・質問者が「あのサイトにアクセスすれば何でも質問に対して答えてくれる」、「その問題がすぐに解決する」ということで質問してくるなら教育的な効果上がらない。質問者側の内容を明確にし、その質問に至った経過を必ず、こちら側から問い直すようにしている。本校側としても「何を求めているのか。」「そして、どのようにこの問題について発展していくか。」等についても含め一緒に考え解答していくようにしている。
     また、生徒と共に解答しようとするとき十分に論議して返信するように心がけている。
 
5.18.3.2 地域とのつながり  
 
 本校は新100校プロジェクトの重点企画「地域展開」に指定されていることから地元のインターネットユーザーの集まりである「日田インターネットの会」や地域に「小さな質問箱」を開放することにした。地域での職業系高校のあり方などが問われる中、地域と密接な関係を持ち「開かれた学校」のイメージを持って頂き、なんらかの形で地域へ貢献を考えることにした。この企画は本校のイメージアップや地域とのつながりを考えるうえで重要な接点であると思われる。地域からは地場産業である「林業関係」の質問が多くみられた。地域の方は「わからない」ことがあっても学校へは質問しにくいというイメージがあったが、インターネットを通じてこの点が解決されたのではないかと思われる。
 
5.18.3.3 課題と今後の方針
 
 今回のプロジェクトに関する取り組みが若干遅れたことと、「ちいさな質問箱」に関する広報が少なかったこともあり、質問数は少なかったものの、この取り組みに対する体制は確立したのではないかと思われる。
 今後は、体制づくりを更に強固なものとして、各回答者を細分化し専門的な内容が対応できるよう努めていきたいと思っている。また、質問者への質問の内容をデータベース化して閲覧が自由にできるように考えている。
 また、各学校のみならず広く地域に開放して、地域の中の「日田林工高校」というイメージをつくりたいと思っている。