5.19 平衡含水率プロジェクト
                 大分県立日田林工高等学校 林産工学科
 
5.19.1 概要
 
 今、「木材をみなおそう。」という動きが各方面から叫ばれている。古来から日本家屋については、木造建築がなされてきた。これは、我国の気候風土に合致した建築物であったからである。
 例えば、湿度が高い日は、木材が湿気を吸い取り、室内の湿度を低下させてくれる。逆に乾燥した日は、木材から水分が放湿され室内の乾燥をやわらげ天然のエアコンの役割を果たしてくれる。正倉院の宝物庫(校倉造)の貴重な文化財が現在まで受け継がれているのも良い例である。その他、木材は断熱、防音等様々な効果を持っている。 ところが、建築材料としての木材は、軽視されているのが現状である。そこで、私たちは「木材」を教材として使って頂くことにより、「木材のたいせつさ」および「自然のたいせつさ」を考えてもらおうという企画を提案したいと思っている。
 今回のネットワーク環境を利用して、気候風土の異なる地域に同一の試験材を配布し、重量の変化を測定することにより、各地域での木材の吸湿・放湿性を調べようとするものである。水分量の割合(含水率)のわずかな変動で木材の強度、寸度変化、断熱性、電気抵抗等多くの性質が変化する。これは木材を使っていく上で重要な因子になってくる。 測定項目についても、重量測定、温湿度、天気だけで、小学校中学年程度でも充分可能である。このような実験をとおして「木材のすばらしさ」を理解して頂こうと考えている。また、各地域の気象条件の異なる場所で、木材がどのように吸湿、放湿するか調べたデータは現在のところなく、貴重なデータがとれると確信しる。なお、このプロジェクトは静岡大学農学部の鈴木滋彦氏、農林水産省森林総合研究所の木材利用部物性研究室長 黒田尚宏氏の全面的なバックアップと、ご指導のもとにすすめられるものである。
 
5.19.2 実施
 
5.19.2.1 木材の平衡含水率試験方法
 
* http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/mc/hei-data..html (各校データ)が閲覧できます。
  このデータの利用方法について
 
 (1)試験片
 木材(日田スギ) 大きさ(13cm×11cm×1cm)程度 100g以下になるよう採取した。 辺材部(2枚)、 辺材と心材の移行部(2枚)、心材部(1枚)、予備(1枚)、MDF(1枚)および設置台をプロジェクト参加校に送付することにした。 
 (2)測定方法
 その地域において平均的な温度になると思われる雨水のかからないところに設置台を置く。測定精度については、0.5g以上の精度で天秤で測定することにした。
 測定の項目については、前日の天気、当日の天気、温度、温度を測定することにした。測定の回数については各学校に状況に一任し週1回程度は最低測定することにした。測定時間については、その日の平均気温が発生する時間帯をできるだけ選んで測定することにし期間は1年間とした。今回は平成8年度および平成9年度についても募集した。
 (3)データの処理とその後の利用
 測定されたデータは下記のURLに直接記入できるようになっているが、電子メールでも受け付けることにした。
 http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/mc/inp-data..html (CGIによる記入)
 各校のデータは、自由に閲覧できるようにし各校で教材として活かせるように、下記のURLで各校のデータをみることができる。
 http://www.hitarinko-hs.hita.oita.jp/mc/hei-data.html
 メーリングリストemc-members@cec.or.jpを設定頂き活用できるようになっている。
 (3)参加校(平成8年参加も含む)および担当者
  北海道歌志内市立歌志内中学校 (武田博文)
  秋田県六郷町立六郷中学校(村井史人)
  徳島県葛尾村立葛尾中学校 (高橋政広)
  長野県長野市立篠ノ井西中学校(太田雅彦)
  栃木県高根沢町立阿久津中学校(大金斉)
  茨城県岩井市岩井高等学校(門井淳)
  埼玉県大宮市立大成中学校(遠藤文恵)
  神奈川県桐蔭学園中高等学校(山城剛志)
  岡山県立岡山芳泉高等学校(高月和弘)
  大分県立津久見高等学校(児玉憲政)
  熊本県立国府高等学校(杉本日出夫)
  熊本県立小川工業高校(前田義美)
  鹿児島県立鹿児島水産高等学校(武一正)
  大分県立日田林工高等学校(林産工学科)
5.19.3 結果と課題
 
 (1)結果
 平衡含水率のデータは、全国的に収集されたデータはなく2年間のデータは貴重なものと思われる。しかも、ネットワーク上で同じ目的を持った者が同時に測定することは意義深いことである。現在、このデータを分析して、まとめているがデータはホームページ上にあげデータの加工ができるように、また、主な点についてはグラフ化して発表する予定にしている。また、各校で意見の交流も予定ている。   
 (2)課題
 今回のプロジェクトについては、本校の準備の遅れやデータの受け入れ体制が遅れたことに参加校にお詫び申し上げたい。今後はCGIで登録されたデータはすぐにデータベース化され閲覧可能になるように改良していきたいと思っている。データの収集については月3〜4回であったが、まずまずのデータが得られている。今後も継続していくと全国的にも貴重なデータが得られると確信している。最後に、このプロジェクトに対してご協力して頂いた参加校のみなさんに心よりお礼申し上げます。