5.21 進路指導における情報収集
大分県立日田林工高等学校 河津文昭
5.21.1 概要
 
 現在、進路指導において生徒が企業、進学先を選択する材料としては、求人票、求人情報誌、リクルート等が発行する学校案内、また、教員からの情報によって進路を決定しているのが現状である。したがって、生徒自らが積極的に情報を入手しようとしても限界があり、企業および進学情報について限られた材料より判断し進路を決定している状況であった。近年、企業、大学、専門学校等は積極的にホームページを立ち上げているところが多く、そのコンテンツについても企業紹介や求人情報、学校案内、入学案内等非常に充実されたものが多く、進路決定の材料となる貴重な情報であると思われる。これらの情報をサーチエンジン等で検索し情報を入手することによって進路決定の材料、また、受験対策の資料収集としてインターネットの利用は効果的であると思われる。また、高校生においては、進路先への接点は教師を通じて行っていたが、電子メール、掲示板の利用によって生徒から積極的にコンタクトをとることができるようになった。 
 
5.21.2 実施
 
5.21.2.1 実施計画
 
 企業就職、進学については試験日等が異なるために別々に実施計画を立て行うことにした。表5.21−1に企業就職者を対象とした進路指導計画を示す。
 
表5.21ー1 本校の進路指導計画(企業就職)
 月    日 進 路 指 導 計 画  インターネットの利用
5月中旬PTA時、就職に関する説明サーチエンジンの使い方
5月中旬
 
学科主任、ホームルーム担任
による企業訪問開始
進路情報の収集
 
6月企業の学校訪問開始 
7月1日求人票発送開始求人票を基に企業を検索
7月中旬〜下旬3者面談、進路希望先決定受験対策情報の入手
8月初旬進路一覧表提出受験対策情報の入手
9月1日書類発送開始 
9月16日より就職試験開始 
9月下旬〜就職先決定就職に備え詳しい企業情報の入手
 
5.21.2.2 実施方法
 
 インターネットの発展は著しいものの、全ての企業、大学、専門学校がホームページを立ち上げているとは限らないことと、また、クライアント数の不足により、今年度については、100校プロジェクト企画委員会が中心に3学年部に依頼して希望生徒を募集した。希望生徒については、各学科および情報教育部が指導にあたることにした。サーチエンジンについては、yahoo、goo等を用いることにした。サーチエンジンについては、情報検索の効率化をはかるため十分な指導を行ったのちに進路先等の検索をおこなうことにした。検索したデータは必要なものについては自由に印刷して持ち帰らせた。生徒は持ち帰ったデータをもとに次回にどのようなことを検索したらよいか十分検討を重ねて次回に備えた。
 進路先が決定した後には、受験の対策としての情報を入手させることにした。特に企業就職においては面接が重視されることが多いことからホームページにより会社の特徴等を細かく分析させることにした。これにより、面接の幅が広くなったと思われる。
 高校生の企業就職において、受験までは生徒と企業の接点は求人票のみであった。
接点があったとしても進路担当教師を通じてのものであった。したがって、自分の意見や質問を十分に相手に伝えられなく、進路決定後にトラブルの原因になっていた。
 そこで、電子メールを用いて積極的に生徒側から自分自身をアピールすると共に、
質問等を送ることにした。今年度は初めての取り組みであったことから、生徒の発送するメールの内容は把握しておき、企業側に失礼のないよう十分に対処した。ほとんどの企業から、親切な返答が返ってきた。
 就職内定後についも、さらに内定企業の情報を入手させることにした。これについては、詳しい業務内容、景気の状態、新しい取り組み、新製品情報等就職後、すぐに役立つ最新の情報を入手させることにした。これにより、企業へ対する理解と企業就職への意欲が生まれると思われる。
 
5.21.3 結果と課題
   
 今回のプロジェクトを通じて下記のような成果を得ることができた。
 ・進路選択への情報の提供を従来よりも増加させることができた。
 ・就職希望先に対しての情報収集により理解が深った。求人票にはない、画像等での説明で視覚から感じ取られるものを得た。
 ・受験対策としての情報の収集をおこなうことができた。(面接試験対策)
 ・電子メールにより積極的に自分の必要とする情報を得ることができた。また、これを使って自分をアピールすることができた。
 ・就職内定後も、最新の企業情報を入手することができ、卒業後の就職に向けての意欲が増大したと思われる。  
 ・サーチエンジンの使用法を理解することができた。
 ・情報収集能力が高まり、大量な情報より自分の必要とする情報を区分けし選択する能力が生まれてきた。
 ・電子メールの使用方法を理解することができた。
 
 また、課題として以下の点が上げられる。
 ・インターネットの普及はめざましいが、全ての企業がホームページを立ち上げているとは限らないし、大学卒業者を対象につくられた求人情報等の記載が多い。
 ・ホームページ上に記載された内容は、必ずしも正しい情報ではない場合もあるので、求人票および教師のフォローで総合的に判断させることが必要である。
 
 今回、初めての取り組みであったがインターネットの特徴を最大限に活かした利用と思われる。来年度においても進路指導の一環として位置づけて実施していきたいと思っている。ある生徒は、幼少の頃から「バット職人」になることが夢であった。これを実現しようと、その生徒は「バット」で全文検索をかけ、バットに関するあらゆる情報を入手した。その中で、あるスポーツ用品製造会社とのメールのやりとりから現在、8社しかないバット製造メーカーを紹介して頂き、みごと夢を実現することができた。これもインターネットのおかげである。