5.22 保健教育ネットワーク
熊本県立小川工業高等学校 神原祐子 角田誠一 上渕優
 

5.22.1 概要

  保健体育や養護教諭の立場から多くの関連ホームページやメーリングリストを通して入手した公開可能な情報をホームページを通して生徒たちに提供し、学習や保健活動の手助けとする。また、生徒相互および生徒への情報交換も図り、生徒の心の問題にもアプローチを行う。

5.22.2 実施

5.22.2.1 平成9年度北辰祭における保健委員会活動の展示

 テーマ 「ごみ分別の意識調査とダイオキシンについて」

 3年に一度の大文化祭「北辰祭」で生徒保健委員会も、新聞、テレビで大きく取り上げられているごみ分別に対する意識調査とダイオキシンについて調べることにした。
 まず、ごみの意識調査では、地球の温暖化、大気汚染に対しては関心が高いが、自分自身でごみの分別を実施するかということに対しては面倒だと感じるという結果が出た。そのような中、保健委員から、日本以外の国の様子を調べたいという意見が出た。インターネットで検索を行い、ドイツ、オランダ、スウェーデン、アメリカ、カナダ、日本の年間のごみ発生量、焼却量と焼却率、焼却施設数を調べることができた。日本は他の国に比べごみの発生量が多く、焼却も他の国の平均は25.5%に過ぎないのだが、日本は74%もあった。また焼却施設も平均50ヶ所なのに1854ヶ所と飛び抜けて多いことがわかった。
 生徒の意識調査結果と各国のごみの量および焼却率を調べることによって、日本人の持っている「ごみは燃やす物」という意識から、「地球と共に生きる」ということから出発するごみに対する教育や、廃棄物を最小限に押える事の出来る社会構成を考えていかなくてはならないとまとめることができた。
 ダイオキシンについても、インターネットからダイオキシンの毒性、発生のしくみ、ダイオキシンの発生を防ぐためにはどうしたらよいのかなどの情報を得ることができた。充実した内容で広用紙にまとめることができ、それをもとに私達は、これから具体的になにができるのかを検討した。地味な発表ではあったが、保健委員会としては満足のいく活動であった。

5.22.2.2 産婦人科医師との電子メール交換による性教育講話の実施

 平成8年度から「性を生としてとらえ、個々の主体性を確かめる性教育」をテーマに年間計画を立て実施してきた。豊かな性を根底に、それぞれの自立した人間関係を考えるなかで、「選択」していくことの重要性を知り、自分を大切にしていく選択ができるようになることをねらいにした。その計画の中に、産婦人科医師より医学的立場から1年生に思春期の健康と結婚、妊娠の成立、たばことアルコールの害について、2年生に性行為に関わるトラブルを中心に 、中絶の方法と影響、性行為感染症、エイズについての講話をお願いした。
 忙しくてゆっくり電話をすることのできない医師との講話内容の打ち合わせは、電子メールの交換で行った。あらかじめ医師が生徒に理解をしてほしいところをメールで知らせてもらい、お互いに内容を検討しレジメを作成して事前指導を行った。

5.22.2.2.1 産婦人科医師とのやり取りの一部

 産婦人科医とのやりとりの一部をメールから抜粋した。
 先日は遠路ご足労を頂き、ありがとうございました。
 先生のご要望を、以下のようにまとめました。

 演題趣旨

 私達が幸せな人生を送るには、幸せな家庭を持つことです。子供に恵まれ、できれば家族全員が健康であることが必要であると思います。

妊娠の成立

 性行為により精子と卵子が受精しますと、一つの生命が誕生します。この誕生したばかりの小さな生命に障害が起きないように、私達は『大事に大事に育ててやる』ことが必要である、と思います。

 タバコによる赤ちゃんの健康障害
 タバコには有害な物質がたくさん含まれています。妊娠中のお母さんがタバコを吸いますと、赤ちゃんの健康を傷害します。

 アルコールによる赤ちゃんの健康障害   (以下略)
というような内容であった。

5.22.2.2 1年生の講話に関する感想

そして、20歳を過ぎてもタバコは吸わないように気をつけて、元気な赤ちゃんを産んでもらい幸せな家庭を作りたいです。

5.22.2.3 ホームページの開設

 保健教育ネットワークというホームページを開いたが、高校で保健室にインターネットを引いてあるところはまだ少なく、研究協力校としてのコンタクトはなかった。ホームページの企画や内容は、まだ試行錯誤の状況で十分な成果が出ていない。小中学校の何校かとのやり取りはあったが、保健指導の方法の違いにより重なる部分が少なく、協力体制は得られなかった。(小中学校では集団指導が充実しているが、高校では個別指導が中心になる。)しかし、ほとんど小中学校と連絡をすることのない今、保健室のあり方や状況をお互いに理解していくことは、連携を深め問題解決の糸口になると考えられる。

5.22.2.4 保健の授業の資料提供

2年生の保健の授業の中で、愛知県衛生部や名古屋大学医学部付属病院難治感染症部のホームページにアクセスを行い、日本・アジア・世界のエイズの感染状況等を提供できた。

その資料から、日本を含むアジアでの感染の急増の様子と20歳代から30歳代の若者の感染の状況を知らせることができ、自分も含めた身近な問題として感じさせることができた。

5.22.3 効果と今後の課題

 (1) 回線をつなげるのに手間取り、夏休みが開けてから実動開始となり、報告まで半年という短い期間ではあったが、文化祭での発表・産婦人科医とのやり取りなどインターネットを十分に活用する事ができた。

 (2) 保健室で作ったインターネットの活用により作成した資料は、リアルタイムの情報が短時間で得られ充実した内容であるので喜ばれた。

 (3) メールの交換は、不登校や悩みを持っていてもなかなか保健室に入ることのできない生徒とのカウンセリングに効果を出すことができると思える。今後、各方面と協力し、力を入れて実施したい分野である。

 (4) 他校ではまだ実現されていないインターネット回線を夏休みに保健室まで接続していただくことができ、非常に助かっている。今後は単に情報を受け取るだけではなく、こちら側からもホームページを通して情報の提供ができるように努力をしていかなければならないと思う。