5.29 インターネット上の仮想教室でのコンピュータ技術に
     関する授業

山梨県立谷村工業高等学校 長谷川 準

5.29.1 概要

 インターネットを「道具」として位置付け、各学校のもつ資源(教員・生徒・設備等)を有効利用することにより、単独の学校では達成できない目標の設定が可能となる。また、同一課題を複数の学校で共有し、同じ仮想のステージで研究解決することは、生徒たちに発展的活動の場を提供することにもなる。彼等はそのなかで、共同で問題解決する喜びと困難さを知り、お互いに協調しながら時間の管理をしっかり行わなければならないことを経験する。またお互い影響しあうことにより、今まで気付かなかった自分の感性や能力の発見を行い、新たな動機付けにもなる。

 異なる学習環境で学ぶ生徒たちが、インターネット上の教室で一緒に授業を受けるという仮想的な場を設けることにより、生徒達の間で疑問点やわからない点を解決しあう動きが生まれることをねらいとした。また、インターネット上で進行することで、授業内容をオープンなものとし、柔軟な教室・授業構成となることをねらった。

5.29.2 実施

 電子情報科では、3年生の課題研究において、昨年度より「インターネット上の仮想教室でのコンピュータ技術に関する授業」として、下記の県外3校の工業高校とJava言語の共同学習を展開してきた。

  熊本県立小川工業高等学校 情報電子科

  石川県立小松工業高等学校 電子情報科

  大分県立津久見高等学校  電子科

 本年度も、昨年と同様3年生の課題研究の一班が「Virtual ClassroomによるJavaの学習」として共同学習を展開した。

図5.29−1 「Virtual Classroomのページ」

 具体的には、下記の機能をもったホームページを仮想教室のベースとした。

  ・ブラウザからホームページへの書き込みが可能である

  ・ホームページからメーリングリストへ送信できる

  ・チャットルームのページを保有する

  ・生徒の作業内容がホームページ上に反映される

 

  図5.29−2 「Java教室」      図5.29−3 生徒の「ノート」

 本校の参加生徒は、Javaのプログラミングよりもホームページ作成が目的で集まった6名を対象としたため、本年度の本校の目標は、次のように設定した。

  ・「Java言語」の基本を理解し、簡単なプログラムを作成できる

  ・「Javaアプレット」を使った、動きのあるホームページを作成することができる

 また、本年度は、自主企画支援で提供されている「Java Chat」のプログラムを利用し、4校の生徒・教員でチャットを行うことを検討したが、本校の参加生徒が3年生であったということもあり、時間が足りずに行えなかった。機会があれば今後利用する予定である。

5.29.3 効果と課題

 (1)インターネット上に仮想教室を設けることの学習効果

・インターネットに接続されていれば、教師・生徒がそれぞれの学校の枠を超えて全国どこの学校とでも共同学習することができ、単独の学校では到達できない目標が設定できる。
・同一課題を複数の学校で共有し、同じ仮想のステージで研究解決することによって、生徒たちに発展的活動の場を提供することができる。
・生徒同士が電子メール等で交流し、互いに疑問点を解決しあったりするなど、課題に自主的に取り組む姿勢が見られた。また、それが刺激となり、さらに高度な課題に挑戦する意欲も出てきた。
・放課後のコンピュータ室や自宅のコンピュータを使って、仮想教室上の作業ページに書き込んだり電子メールを利用して質問をするなど、授業以外の時間を自己管理し、有効利用して積極的に学習活動するようになった。

 (2)複数の学校の生徒が仮想教室に参加するときの指導方法

・仮想教室参加者の目標とするものを最初に決め、企画開始初期では生徒の積極的な参加へ向かうように各学校の指導者が工夫する。
・その後、生徒間のコミュニケーションに刺激を与える意味で、メーリングリストやテレビ会議をおりまぜ、指導の経過や生徒の活動をホームページで公開しながらすすめる。
・最後に目標としたものに対してどの程度到達したか生徒に自己評価させ、到達したところまでを整理して広く一般に公開する。

 (3)今後の課題

・参加校の教員同士でなかなか共通理解が得られず、目標設定や指導方法に差があった。今回は、事前の打ち合わせ等をすべてメーリングリストで行ったため、実際に顔を合わせて話し合う場合に比べると、意志が伝わりにくい面があった。距離的、時間的に難しいと思われるが、現時点ではまだ際に集まって打ち合わせをする機会が必要であったと感じる。
・本校では3年の課題研究の生徒が参加したが、学校によってはクラブ活動で参加したところもあり、生徒同士のコミュニケーションがとりづらい面があった。また、取り組む姿勢にも差が見られた。本来ならば、「誰でも自由に参加できる」仮想教室が理想だと思うが、今回のようなテーマでは、ある程度生徒を限定することも必要になってくるのではないかと思った。
・参加するすべての生徒が積極的に参加できる内容が望ましいが、今回はJava言語に対する生徒の理解度に差があり、教員の打ち合わせもスムーズに進まなかったため、共通の課題が設定できなかったことが残念である。今後は、まず共通の課題を設定し、それから各校の目標等を決めていく形式で進めていったほうが良いと思う。