5.40 総合学習(3年「ふるさと仙台の行事」)
活性化する企画
宮城教育大学附属小学校 佐藤 崇
5.40.1 概要
(1)テーマ 3年生「仙台七夕とわたしたち」
(2)日程 平成9年5月〜平成9年9月
(3)ねらい
@ 仙台の伝統文化について,調べたりまとめたりする活動を通して,仙台で行われている様々な行事に対する興味・関心を高めるようにする。
A 仙台七夕祭りに参加したり,仙台の様々な行事について学習したりする活動を通して郷土を愛し,その伝統文化を大切にしていこうとうする態度を育てるようにする。
B 様々な製作活動や調査活動などを通して,友達と協力して活動することの大切さや楽しさとともに行事に参加する喜びを味わわせるようにする。
5.40.2 実施
(1)活動内容
a.仙台七夕に参加
本校では,1年生から3年生まで七夕飾り作りに取り組んできている。1年生は校内に飾り,2年生になると近くの宮町商店街に飾る。そして,3年生になるといよいよ夏の東北3大祭りの一つ「仙台七夕」が行われる一番町商店街に飾る。3年生の子どもたちは「仙台以外の人たちにも,わたしたちの作った七夕飾りが見てもらえるんだ」ということで,一生懸命に飾り作りに取り組んでいた。
b.飾り作り
まず,七夕飾りに込められた願いや,歴史について調べはじめた。飾りの紙の着物には,子どもが大きく丈夫に育って欲しいという願いが込められていることを知り,自分たちも大切にされていることの喜びを感じ取ることができた。
また,長く続いている仙台七夕も戦争のために中断したという事実も知ることになる。七夕を中断させた戦争の悲惨さも学ぶこととなった。
それらの学習を経た後,七夕飾りに取りかかった。学年を横割りにし,全部で20のグループを作った。それぞれのグループの飾りには,仙台の名所,仙台の祭り等のテーマがあり,七夕飾りの一番上に当たるあんどんの部分に,絵や言葉で表現されている。また,あんどんの下の吹き流しの飾りも同じテーマで統一されている。
c.インターネットの活用
飾り作りに熱中しているとき,子どもたちから「ぼくたちの願いを書いた短冊を一緒に飾りたいな」という声があがった。「そうだ!そうだ!」とみんなも賛成し「願い事」を書いて,一緒に吹き流しに貼って飾ることにした。
そこで,教師からの提案で「インターネットを使って,世界中の子どもたちからも願い事を集めようか」と話したところ,「すごい!」「世界中から本当に集まるのかな?」「先生やろう!やろう!」と,子どもたちは大喜びであった。
願い事の入力に関しては,宮城教育大学の真壁さんの技術協力を得て,子どもでも入力しやすい入力フォームができあがった。
d.願い事の募集
入力フォームができ上がったところで,願い事を全世界から集めるため日本
人学校メーリングリストに以下のようなメールを流した。
宮城教育大学附属小学校の佐藤崇といいます。3年生を担任しています。3年生の総合学習で,「仙台の伝統行事」を学んでいます。特に前期は,仙台七夕に焦点を当てています。今は,仙台七夕の歴史や飾りに込められた願い等を学んだことを生かして七夕飾り作りに挑戦しています。この子どもたちが作った飾りは,各方面のご厚意で,仙台七夕に飾らせていただくこととなっています。
そこで,吹き流しの部分に,みなさんの願い事を貼り付け,全世界から仙台七夕を盛り上げようと思いますが,いかがでしょうか?趣旨に賛同される方は,どんどん願い事を入力していただきたいと思います。 |
e.世界中からたくさんの願い事が届く
入力依頼のメールを流すと世界各国からどんどん願い事が届きはじめた。
○たくさんのお友だちが,ヴェネズエラのことを知ってくれますように。日本から遠く離れたヴェネズエラ・カラカスより。カラカス日本人学校泉先生
○将来スチュワーデスになれますように。香港日本人学校4年生の学年通信にこのページが紹介されました。 香港日本人学校4年2組 松浦 広美
○最近のスイスは雨ばかり。もうすぐ子どもたちの楽しみにしているオリエンテーリングとサマーキャンプがあるというのに。良い天気になりますように。
チューリッヒ日本人学校 永田 浩
最初は,日本人学校の先生方からのメールが多かったが,時間が経つに連れて日本人学校の子どもたちからのメールもだんだん増えてきました。
○おばあちゃんが長生きして,家族全員が健康でありますように。
マドリッド日本人学校 岡田 一利

このように,願い事は,地球の裏側のヴェネズエラ・カラカス日本人学校,ヨーロッパ,スイスのチューリッヒ日本人学校,スペインのマドリッド日本人学校,返還されたばかりの香港日本人学校など世界各地にある日本人学校や日本国内の小・中学校からも届けられ,メールの総数は130を超えた。
3年生の子どもたちに,世界中から願い事が届いていることを知らせると。 「すごい!仙台七夕が世界にも知られることになるんだね。」「インターネットってすごい!」と,とても感動している様子であった。
e.仙台七夕を飾る
三年生の七夕飾り20個は,仙台市のメインストリートである一番町に飾られることとなった。世界から集まった願い事を吹き流しに貼り付け,いよいよ8月2日,一番町に子どもたちと飾りに行った。
子どもたちが一生懸命作った飾りは,見る人の心をとらえるのか,立ち止まっては,「この飾り小学生が作ったんだね。すごいね。」などとつぶやく人をたくさん見かけた。
5.40.3 効果と課題
(1)効果
願い事が届いた「ヴェネズエラって,どこにあるんだろうね。」と子どもたちに聞いてみると,全員の子が分からなかった。
「ヴェネズエラがどこにあるのか,図書室で調べてみよう。」と声掛けをすると,子どもたちは,早速図書室に駆け込み「ヴェネズエラ」を探し始めた。しばらくして,「あった!!」「ここだあ。」と歓声が上がった。
ヴェネズエラが,南アメリカ大陸にあること。日常の会話は,スペイン語。国旗の絵柄など,子どもたちは次々と調べていった。また,願い事を寄せて下さった他の国についても興味をもって同様に調べ始めた。
以上のことから
- インターネットで願い事を募集することを通して,子どもたちは,世界各国の地理や文化に大きな興味を抱くようになった。
- 自分たちで作る「七夕飾り」に,世界中から届いた願い事の短冊が付けられることで,子どもたちはより一層の意欲的に取り組むことができた。
(2)課題
- 七夕ということで,時期が夏休みに入ってしまったため,継続して交流をするという活動まで深めることができなかった。
- 機会をとらえて「互いに交流する」ところまで深めることができる活動内容を来年度以降も探っていきたい。