5.43 高校生の国際技術交流

石川県立小松工業高等学校 平木 外二

 
5.43.1 概要
 
 本企画では小松工業高等学校の生徒が国外の高等学校の生徒とインターネットを用いて技術的な交流をめざした。
 価値観や生活環境の全く異なる生徒と情報交換することで、本校生徒が自分達のおかれている立場を理解し、国際的な視野に立つ中堅技術者としての素養育成をねらった。また、国外の高校生へ自分の学習している内容を紹介するなかで、自らの専門知識の整理につながることを期待した。
 スタート時点で、アメリカ、ドイツの高等学校と交流を計画したが、ドイツの学校とは企画前半でコンタクトがとれず、アメリカとの交流にしぼることにした。
 また、筆者自身が9月から12月の3ヶ月間、アメリカの交流校で授業する機会を得たので、それをふまえた企画として実施した。
 
5.43.2 実施
 
 平成9年4月から8月を企画準備にあて、実施時期は平成9年9月から12月にかけての期間とし、下記のアメリカの公立高等学校と交流した。  
  ロッキーマウンテン高等学校 代表者:John Fialko教諭(教科Technology)
 
5.43.2.1 交流学校の概要
 
 ロッキーマウンテン高等学校は、コロラド州フォートコリンズ市の中央部からやや西よりに位置した生徒数1516人(男子759、女子757)の学校である。3年制で10学年から12学年までの生徒を、教員80名その他職員46人の体制で指導している。また、ネットワーク環境は学区を統括する教育委員会が管理しており、委員会内のコンピュータセンターにWWWサーバ、NEWSサーバ、Mailサーバ等が設置されている。教育委員会は4.5Mbpsでインターネット接続されており、ロッキーマウンテン高等学校を含めた学区内の4つの高等学校がT1ラインで教育委員会へ接続している。小学校、中学校もやや細い回線で同様に教育委員会へ接続している。学区内の小中高の全生徒数は22459名であったが、そのうちの約9000人の生徒に対して教育委員会がメールアカウントを発行し管理していた。アカウント発行にあたっては、保護者のサインを必要とし、厳密な事務手続きを踏んでいた。

 

5.43.2.2 企画実施の方法

 

 本企画は以下に示す専用ホームページを利用して実施した。

       http://www.komatsu-ths.komatsu.ishikawa.jp/v_room/

このページには、メッセージ入力用のページと、

メッセージ閲覧用ページがリンクさ

れている。また、生徒が自由に参加できるチャットページもリンクしてある。
 生徒は、図5.43−1の手順を踏んで参加した。最初に、小松工業高等学校とロッキーマウンテン高等学校の生徒がそれぞれのWWWサーバ機に自己紹介ホームページを作りあった。
 この自己紹介ホームページには、短い英語のメッセージストリームとGIFファイルによる自分の似顔絵、そしてその似顔絵にリンクした生徒の母国語による音声メッセージが採り入れられている。なお、音声メッセージと英語によるメッセージストリームの意味は同じものとした。これにより、お互いの生徒が相手の肉声を聞くことで文化の違いをより実感することをねらった。この自己紹介ホームページの作成にあたっての指導は、小松工業高等学校では同高校教員があたり、ロッキーマウンテン高等学校では筆者が行った。

図5.43−1 生徒の作業の流れ

 ホームページの作成を終えると図5.43−2の項目で構成されるメッセージ送信フォームへ記入し、生徒一人一人が質問へ答える形で各自の意見を送信した。
 この送信フォームはパスワードを必要とし、関係する生徒のみが参加できる形態とした。1から7の各項目をブラウザ上で記入し送信ボタンをマウスでクリックすると自動的にメッセージ閲覧ページへ書き込まれる。 この時、書き込まれた文章中の氏名は書き込んだ生徒へのメールアドレスへリンクされ、また自己紹介ページのURLの文字はそのページ自身へリンクされるようになっている。
 参加生徒は、小松工業高等学校電子情報科3年生とロッキーマウンテン高等学校10年生〜12年生のテクノロジーの教科を選択している生徒であった。


1.送信パスワード
2.氏名
3.自己紹介ホームページのURL
4.質問(1)
   今までに情報科学及び電子工学 
  の分野でどの様な科目を勉強し
  たことがあるか。
5.質問(2)
   コンピュータを使いこなすには
  何を勉強しなければならないか。
6.質問(3)
   インターネットが世の中に普及
  したときどの様なことが起こる
  と思うか。
7.相手の学校の生徒に尋ねたいこと


図5.43−2 送信フォームの項目

 

5.43.3 効果と課題

 送信フォームを利用したメッセージの送信は順調に進み、両校の生徒とも相手校の生徒の様子をメッセージ及び自己紹介ページで把握できた。短いメッセージの中にも個性的で発想豊かなものもあり(http://www.komatsu-ths.komatsu.ishikawa.jp/v_room/board.html参照)、両校の生徒は文化の違う高校生の様子に興味を持っているようであった。また、小松工業高等学校の生徒は、自分の考えを英語で表現する機会が少ないせいか、放課後の作業でやっと数行の送信メッセージを完成させるといったペースであった。しかし、苦労して送信した分、相手校の生徒に対する興味が増し、送信後の次のステップへの期待も高まっているようであった。ロッキーマウンテン高等学校の生徒は日本についての知識も少なく、交流すること自体に興味を持っているようであった。
 本企画の計画では、メッセージ送信後、メッセージ閲覧ページを参照して興味を持った生徒へ、ブラウザ上で電子メールを送信することにし、また、本企画専用のチャットルームで自由に交流する事を考えていた。しかし、ロッキーマウンテン高等学校では、セキュリティ向上及びプライベート情報の管理の観点からメールの送信をブラウザから行えないようにしていることや、小松工業高等学校と異なって1/4学期制で次のステップへ移る時期に学期が終了してしまったことが影響し、生徒間の活発な電子メールのやりとりやチャットルームでの交流には至らなかった。特にチャットルームは予想したより即時性が重要で、同時に参加している生徒がいないと効果が上がらないことがわかった。時差が10時間を超えることを考えると、チャットルームよりもむしろメーリングリストが有効であったかもしれない。

 このような事情から、両校の生徒は1、2回相手校の生徒へ、メッセージページの内容に対する質問や日常生活に関連した質問をして本企画を終えた。

 次年度は、メッセージ送信後の次のステップに工夫を加え活発な情報交換を目指したい。