みんなに地球環境保全を呼びかけよう!!
---総合的な学習における環境学習を通して---
中学校第1学年・総合
知多市立東部中学校 高橋 幸男

インターネット利用の意図
 生徒が自分の興味関心に合わせた学習課題をもち,自ら進んで情報を収集する。集めた情報を編集・加工したり,第三者にわかりやすく伝えるために学習内容をまとめ,表現したりする活動は,とても意義深いことである。そこで,そのような学習活動をより効果的に実現するために,インターネット上の膨大なホームページを資料として収集したり,電子メールを使って,教えてほしいことを専門機関に質問したり,自分たちの学習成果をホームページなどを通じて発信したりして,インターネットを効果的に活用していきたいと考えた。

1 地球環境保全を呼びかけ,行動しよう
(1) ねらい
  総合的な学習で環境問題を取り上げたのは,地球環境の崩壊の危機が差し迫っている中で,生徒一人一人がその深刻な状況を自らの問題としてとらえ,自分たちのできるところから行動していく態度を身に付けさせたいと考えたからである。またその際には,自ら興味関心のある課題(テーマ)を見つけ,その課題に沿った調べ学習を取り入れたいと考えた。生徒が課題を解決するために様々な情報を収集し,その情報を周りの人にいかにわかりやすく伝えるかを考えて発表する活動は,生徒の「情報活用能力」の育成に,大変有効であると考える。また,学習活動において必要不可欠であるコンピュータは,あくまで学習するための一つの道具にすぎないという立場から活用する方法を学ばせていきたい。それは,自分の学習目的に一番あったメディアや手段を選び,活用していくことが真の「情報活用能力」であると考えるからである。
(2) 指導目標
 地球上におきている様々な環境問題に目を向け,今後の消費社会への危機感をもち,できることから行動を起こし,地球環境の保全に貢献しようとする意欲を育てる。
 さらに,自分が調べている環境問題の深刻さを,周りの人にわかりやすく訴え,よく理解してもらうために,コンピュータを使ったり,直接自分でインタービューに出かけたりして,有用な情報を活用し,情報活用能力を育成する。
(3) 利用場面
 この単元では次のような学習場面でコンピュータを活用する。
 @課題を見つける場面
 大まかな環境問題の種類については全体の場で提示するが,より自分たちの興味関心にあった学習課題を設定するために,百科事典ソフトやインターネット上のホームページなどを活用する。
 しかし,すべてコンピュータを用いて決めさせるのではなく,新聞や図書館の書籍なども併用するよう指導する。
 A情報を集める場面
 環境問題について,ホームページなどを通して調べたり,わからないことについて,電子メールなどを使って質問したりすることによって,今まででは考えられなかったら機関などから,直接アドバイスや回答をいただいたり,遠く離れた距離から生じる時間的なロスを感じることなく,調べ活動を行うことができる。また,デジタルカメラなどの周辺機器も有効に活用させる。
 B学習した成果をまとめたり,発信・表現したりする場面
 環境問題について調べてきたことを,第三者に発表し,環境問題の重大さをわかってもらうために,ワープロのフォントや文字サイズなどを工夫してわかりやすくした発表用資料を作り,プレゼンテーションソフトを用いて発表する。また,その際に必要なスキャナ等の周辺機器も有効に活用させる。ただし,必ずコンピュータを活用させるのではなく,発表のねらいにあわせた(例えば,写真だけをできるだけたくさん見せたい場合は無理してコンピュータを活用する必要はない)方法をとらせていきたい。
(4) 利用環境
 @使用機種
 ・WindowsNT サーバ( 校内LAN 管理用     NEC  Express
           コンピュータ室内管理用    NEC  PC-SV30E)
 ・教師用コンピュータ   NEC PC-MA26DS7 1台
  生徒用コンピュータ   NEC PC-MA23CS5 40台
 A周辺機器 
 ・ デジタルカメラ  CP-500 10台
 ・ イメージスキャナ(教師用GT-9500WIN 1台, 生徒用 USB 接続PK-UP001 4台)
 B 稼働環境
 ・民間プロバイダに,ダイヤルアップルータを用いて,64kbps/sで接続している。
 ・校内LAN の整備により,コンピュータ室,特別教室,普通教室などコンピュータがあればいつでもインターネットに接続することができる。
 ・学校独自のドメインを取得して,メールサーバを学校側に配備し,プロバイダから定期的にメールの配信を受けることにより,生徒個人用メールアカウントの発行が可能である。
 C利用ソフト
 ・Microsoft Word(発表各種資料製作用)
 ・Microsoft Power Point (プレゼンテーション発表用)
 ・Microsoft Internet Explore(ホームページ調べ閲覧,メール操作用)
 ・Paint Shop Pro(画像処理用)
 ・Virtual Host Service(メールサーバソフトのことで,サーバにインストールすることにより,プロバイダからのメールの配信を受けることができる。また,クライアントからはブラウザを用いてメールのチェック,送受信などを行うことができるなどの特徴がある。)
 ・日立マイペディア '98(調べ学習用百科事典ソフト)

2 指導計画(15時間完了)


学習活動・内容


指導上の留意点



@A学習課題を決定する。
★インターネットの利用
☆マイペディアなど(百科事典ソフト)

・生徒が自ら地球環境の崩壊に対して危機感がもてるよう,動機付けを図る。
・ホームページやCD-ROM(百科事典ソフト)を中心に,図書館の書籍などを用いて,環境問題に関し,みんなに訴えたいことを見つけ出し,追求する課題を決める。



BC課題を追求し、発表できるような計画を立てる。 ・学習の見通しをはっきりさせるために,追求の手だてや発表の方法についての説明もする。



D〜I各班別に追求学習を行なう。(図1)
(そのうちGは中間まとめ報告会)
(予想される生徒の活動)
・インターネット(WWW,電子メール)で調べる。
・ CD-ROM(百科事典ソフト)で調べる。
・書籍で調べる。
・現場へ直接出向き,カメラ,デジタルカメラ,ビデオカメラなどで取材したり,インタビューをしたりする。
パンフレットなどを収集する。
★インターネットの利用
☆マイペディアなど(百科事典ソフト)

・教師は班毎に学習の支援を行なう。
・中間まとめ報告会では,自分たちの進めてきた学習を客観的に見させ,発表内容や方法などを評価し合い,今後の学習に活かすようにする。


図1 追求学習をしている様子



J〜Mこれまで調べてきた内容を発表できるようにまとめる。
☆ワープロ,プレゼンテーションソフトなどの利用
・まとめ方,ソフトの使い方などは,学習の進度に応じて,班毎に指導する。



N課題を追求してきた結果を発表する。(図2)
(予想される発表方法)
☆プレゼンテーションソフト(図3,4)
☆ホームページにまとめたもの

壁新聞
写真
(機器の利用)
OHPの利用
OHCの利用
VTRの利用
液晶プロジェクタの利用
その他
・学年行事として計画し、できるだけ多くの生徒の前で発表させる。
・質疑応答の時間を設け,出された質問については,できるだけ自分たちで考えて,答えさせる。



図2 発表風景
 
図3 まとめられたプレゼンテーション   図4 まとめられたプレゼンテーション

3 利用場面
(1) 目標
 主な発表内容や調べ学習の経緯,困っていること,みんなに聞きたいことなどを中間まとめとして報告したり,意見交換をしたりして,今後の課題追求や発表に役立てる。
 また,これまで調べてきた内容を,クラスに発表できるようにまとめたり,調べの足らない内容についてさらに課題追求をする。

(2) 展開

生徒の活動
指導上の留意事項


1 本時のねらいについて,教師の話を聞く。
今まで調べてきたことの中間発表をし,その結果を今後の調べ学習や本発表に役立てていこう。
5

○追求学習の中間報告をし,いよいよ本発表に向けてまとめの段階に入ることを知らせる。
○発表内容の予告のほかに,夏休みからの調べ学習の経緯,クラスメートから聞いてみたい情報などを発表することを伝える。
○発表後に質疑応答の時間を設けるので,積極的に質問をしたり,内容についての感想を発表したりするよう促す。
○発表をする態度,聞く態度に留意させるとともに,発表内容,態度などを相互評価することを知らせる。
○発表後は,クラスメートからもらった助言などを生かして,少しでも良い発表になっていくように,調べ学習の続きを行い ,本発表に備えていくことを知らせる。
評:ねらいをつかみ,一生懸命発表しようとする意欲をもつ。(観察)




2 班ごとに中間発表をする。
(1)班ごとに中間発表をする。 ・ 班の追求テーマ
・ 訴えたいこと
・ 見学に行った場所
・調べたもの
・調べた内容
・その他報告したいこと
困っていること,
みんなに聞きたいこと
など
(2)発表について評価し,アドバイスする。 ・声の大きさ
・声の調子
・発表内容
・方法に関するアドバイス
25

○班ごとに発表の分割分担をさせ,なるべく全員が発表を経験できるようにさせる。
○資料を効果的に使い,発表が簡潔でわかりやすいものになるよう指導しておく。
○班の希望によってはコンピュータ等の機器を利用させる。
○評価はできるだけ具体的,客観的になるようにさせる。
○発表内容や方法へのアドバイスは,その班のためになる書き方で書くように留意させる。
評:中間発表を資料などを適切に用いて行うことができる。
(発表)
評:発表内容を客観的に評価し,適切なアドバイスができる。
(発表)



3 班ごとに課題追求活動をする。 ○参考資料を調べる。
・インターネット
・図書館書籍
・その他書籍 ・資料
○質問をする。
・電子メール
・手紙・電話など
○発表の準備をする。
・レジメ作り
・資料作り
・発表の役割分担・練習
45 ○評価用紙を各班に分ける。
○本発表にむけて,調べの終わっていないところや足りなかったところを中心に追求したり,発表の準備をしたりさせる。
○調べに使うメディア・資料内容に応じて,図書室も利用してよいことを知らせる。
○決められた時間になったら,コンピュータ室に集合するように知らせる。
○各班に調べ方や発表方法についての適切なアドバイスをする。
評:課題に向けて,班で協力して活動を進めることができる。(作業票,観察)



4 本時の学習のまとめをする。
(1)作業票に本時の学習の感想を記入する。
(2)次時の予告を聞く。
50 ○作業票へ今日の中間発表の感想も含めて記入するように知らせる。
○今後の予定と必要な作業内容について確認する。
 
4 実践を終えて
 次は活動後の生徒の感想である。
 ・私は,こんなに地球は危なくなっているとは思わなかったので,びっくりした。自分のできることでいいから,地球を守れるよう心がけていきたい。次の機会には,食べ物やお金がなくて困っている人や,そういう人たちを助けるために,どんな人が,何を行っているのかを調べ,私も協力していけるようにしたい。あと,勉強になったのは,コンピュータを使った資料作り。また,いろんな所で役立てていきたいと思う。
 感想からわかるように,この学習を通して,生徒はとても意欲的に自分の関心がある課題について,調べを進めた。そして,自ら課題を見つけ,学習していくことの喜びを知った生徒は,さらに次のことを学び続けようという意欲にも目覚めたようである。また,そこで出会った様々な情報や人々との出会い,これからの生徒の生き方にどう関わってくるのかがとても楽しみである。コンピュータ,インターネットを通じて,情報を活用した学習を通して,それらのメディアとしての有用性に気づき,これからもそれらを活用して,様々なことについて,学びを深めていくことであろう。
 コンピュータ,インターネットを活動の中に盛り込んだ課題追求学習は,生徒の活動意欲を高め,情報を活用し,自分から学んでいこうとする態度の育成に,非常に有効な手段であることがわかった。また,活動の最後には,学校の仲間に自分の学んだ成果を「地球を大切にしてください」というメッセージを盛り込んで,発信するという表現活動があったことが,生徒のモチベーションを高めたと痛切に感じている。これからの学習において大切なのは,コンピュータ,インターネット他様々な情報を上手に活用する力を育てることであるが,特に第三者に伝えようとする表現力,コミュニケーション能力の育成に力を入れていく必要性がある。

ワンポイント・アドバイス
 情報収集の場においては生徒の検索するサイトは末広がりに広がっていく。もちろん,環境学習の領域を越えていくことはないが,中には目的の情報になかなか出会うことができず,授業時間をサイトの検索だけで終わってしまうという班もある。どのような情報を必要としているのかを察知し,授業時に適切なアドバイスができるよう準備をしていく必要性を感じる。また,生徒の活用が予測されるホームページについては,リンク集を作ってその中で調べさせたり,サーバ内にホームページをダウンロードしておくとよいと思う。また,電子メールの活用については,専門機関だからといって適当にメールを送っても,返事が返ってこないことが多い。教師が事前に調査をしておき,返事をくれそうなところを調べておく必要がある。NTT 主催のこねっとセミナー内「こねっとチューターに聞こう」などを利用するとよい。
 


利用したURL
こねっとプラン教科別リンク集 (http://wnn.or.jp/wnn-s/kyoukapage/index.html)
こねっとチューターに聞こう  (http://www.wnn.or.jp/wnn-s/tutor/ask2.html)