インターネットでふるさと味めぐり
中学校第2学年・技術・家庭科
熊本県八代郡泉村立泉中学校 多田 禎智

インターネット利用の意図
 これまで図書中心の調べ学習であったが,インターネットを利用すれば調べる手段が多様化し,いろいろな手段で地方の料理を調べることができる。そして,相手と直接話をすることにより料理の情報だけでなく郷土料理を育んだ地方の温かさも感じることができるのではないかと考え実践した。また,情報収集の手段として地方の料理を調べるだけでなく,泉村の料理や自分たちの家庭で調理した料理をホームページとして情報発信することにより郷土を見直す機会になると考えた。

1 郷土料理
(1) ねらい
  今日の食生活を見ると,市場にはたくさんの食品が出回り,いわゆる「飽食時代」の様相を呈している。いつでもどこでも簡単に食物を入手でき,食物の大切な季節感や地域性がうすれ,家庭の味も画一的になってきている。そして,食生活の合理化は,生活習慣病(高血圧,糖尿病)等をもたらしている。また,生徒たちは「食物」領域について高い関心を持っているが,素材にはあまり関心がなく整えてもらった食事や加工食品を何も考えずに食べていることが多い。
  しかし,本来,食物はそれを育んだ土地,自然や歴史にふさわしい味を持っているものである。新学習指導要領案では「日常食や地域の食材を生かした調理の工夫ができる」「高齢者など地域の人々とのかかわりができる」等が述べられている。そこで,郷土料理について調べることは先人の知恵に気付かせ,地域のよさを見直す機会として意義深い。そして,よりよい食生活を考える態度を養うことにつながるであろう。
  そこで,インターネットの活用して地域と料理のかかわりを理解し,地域のよさを見直して,それをみんなに伝えていくことをねらいとした。
 
(2) 指導目標
 @郷土料理に関心を持ち,いろいろな地方の郷土料理について自ら調べようとすることができる。(関心・意欲・態度)
 A自分たちのすんでいる郷土料理について調べ,郷土のよさを見直すことができる。 (関心・意欲・態度)
 B調べた郷土料理をわかりやすく伝えることができるようにする。(表現)

(3) 利用場面
 @情報収集の場(手段)
  ホームページ,電子メール,TV会議を通して郷土料理についての情報収集させる。
 A情報発信の場(手段)
  自分たちで料理した郷土料理をホームページに掲載する。
 
(4) 利用環境
 @使用機種  NEC PCー9821Xc16 6台 IBM Aptiva 1台 NEC PCー9821V200 1台
        Macintosh Performa550 4台
 A周辺機器  デジタルカメラ
        スキャナ
 B稼働環境  サーバOS:WindowsNT4.0  クライアントOS:Windows95
        モデム   ルータ    8ポートハブ
        校内LAN 施設(職員室,校長室,事務室,図書室,多目的ホール,教室などからインターネットに接続できる)
 C使用ソフト メールソフト  「Becky」
        WWW ブラウザ  「Internetexplorer」
        テレビ会議ソフト「Phoenix」
 
2 指導計画( 7/35)
指導計画
指導上の留意点
(1)わたしたちの食物
・アンケートの実施
・食生活や郷土についての関心度等について調べ,課題意識を持たせる。
(2)わたしたちの栄養
・食事調べ
★インターネットの活用
・栄養素の種類,食品群の分類,献立について調べさせる。
「栄養成分百科」「ビタミンブック」「ビタミ ン・ミネラル情報」「やさい・くだもの百科」「栄養成分ナビゲータ」
(3)調理計画
・献立作成
★インターネットの活用
・生鮮食品,加工食品,食品添加物について知らせる。
「今週の献立表」
(4)調理実習
・米,汁,魚,肉,野菜,めんを用いた料理
・弁当作り
・老人会の方との調理実習
(そばきり)
・課題別パートによる調理実習をする。
・異教材パートによる調理実習をする。
・郷土料理を通して,地域のよさを見直す機会にする。
・高齢者とのふれあいの場とする。
(5)郷土料理についてグループ調査
★インターネットの活用 (情報収集の場)
・料理の特徴,作り方,材料,地域の特色を調べる。
@図書館
ACD-ROM
Bホームページ
C電子メール
DTV会議 ・自分の郷土のよさを再発見する。
(6)ホームページ作成
★インターネットの活用
(情報発信の場)
・泉村の料理についてまとめる。
ソフトウェア「Word」による作成
(7)よい食生活とは
★インターネットの活用
・食糧資源の大切さや食生活と環境とのかかわりについて調べる。
 「エコクッキング」

3 利用場面
(1) 目標
 @郷土料理はそれぞれの地域の特色を表していることを知る。
 A自分たちの郷土の料理についてわかりやすくまとめることができる。
 Bインターネットを用いて,郷土の料理について発信することができる。
 
(2) 展開
過程
学 習 活 動
教 師 の 支 援
導入
5分
1 本時の活動について知る。  
郷土料理について考えよう         
展開
40分






2 班ごとにいろいろな方法で調べた郷土料理について発表する。
 ア 図書で調べた班
 イ デジタル百科事典で調べた班
 ウ Web検索をした班(図1)
 エ 電子メールで調べた班
 オ TV会議を通して調べた班(図2)

3 郷土料理調べの感想を発表する。

4 泉村の郷土料理について考え,まとめる。

(まとめが済んだ生徒)

5 ホームページを作成する。(図3)

・調べた内容と自分たちの感想を発表し合うことで,郷土料理について関心を高めさせる。

図1Web検索の様子

・発表を聞きながら,気付きをメモさせる。

図2 TV会議の様子
・例を紹介する。

・各家庭での聞き取り,調 理実習を通して資料を集めさせる。
・画像取り込みは教師で準備し,文字入力だけをさせる。

図3 ホームページ作成の様子
整理
5分
6 本時のまとめをする。 ・次時の学習内容(ホームページ作成)を確認する。
評価の観点
 @郷土料理はそれぞれの地域の特色を表していることが分かったか。
 A泉村のよさを確認できたか。
 B郷土の料理についてまとめることができたか。
 
4 実践を終えて
 これまでの調べ学習では図書が中心であったが,調べたい図書がなかったり,資料が古かったりすることもあった。また,文字を見るのが嫌いな生徒にとっては,意欲をなくす要因にもなってきた。今回,インターネットを活用したことで調べる手段が図書,CD-ROM,ホームページ,電子メール,テレビ会議システムと多様化した。そして「調べ学習」の時間になった時,生徒たちが心の底から「調べたい」と思う手段を選ぶことで,生徒たちの興味関心を最大限に引き出すことができるようになった。ただ,それぞれの手段に特徴があるので,必要に応じて手段を選択していくことが大切である。
 郷土料理調べではいろいろな手段を使ったので,たくさんのことを調べることができた。「地方でとれる特産物を使って,その地方独特の料理が作られている。」「僕たちが調べた中では漬け物類,魚を使った料理が特に多かった。」「いろいろな地域の郷土料理を調べて本当にたくさんの郷土料理があった。同じ料理もあったけど,地域によって味の違いもあった。私が見たこともない「えっ」と驚く料理もあった。」「おいしそうな郷土料理もあり,食べてみたい。」など画面上で日本のいろいろな地域の郷土料理めぐりをすることができた。そして,地域と料理の関係をそれぞれに理解していた。また,「よく土産でもらうものもあった。」と地域を身近な存在としてとらえ,親近感をもつ生徒,「最終的にできる料理は同じでも,その地域によって呼び名が変わっているので,何か世間の広さを感じた。」と料理の名前からその料理を育んだ自然や歴史にふれている生徒もいた。そして,電子メールを利用した生徒は,郷土料理に関する情報以外にも「広い地域に向けて情報を発信し,情報を集める学習はとてもすばらしいなあと思います。ぜひこの学習がうまくいくように,がんばってください。」という励ましの言葉があったり「こちらはいつもの年だと50cmくらいの積雪はあるものですが,今年はまだありません。しかし,毎朝マイナス5℃くらいまで冷え込んでいます。」という地域の最新の様子なども知ることができた。このことは,コンピュータの向こう側には人がいるということの実感につながった。電子メールによって双方向性の調べができ,これまでの図書にはない温もりのある調べ学習となり,興味・関心がさらに高まったはずである。また,テレビ会議システムでは,画面を通して生の音声情報,画像情報にふれることができ,「とても遠く離れているのに,相手がすぐそこにいるように感じた。」「相手の表情などがよく分かり,とても楽しい交流ができた。」とインターネットは距離をゼロにできることも実感していた。
 いろいろな地域の郷土料理を調べる中で,生徒たちの目は「泉村の郷土料理は何だろう」と地元に向いてきた。郷土料理をまとめるにあたりいろいろな人に尋ねたり,実際に調理をしてみた。「泉村には味噌やもろみを使った料理が多いと思った。」「火を使わず,材料も少ないので簡単だけど,いろいろな作り方があっておもしろかった。」など地域の特産物や先人の知恵にふれることができ,生徒たちは新たな発見をしていた。また,「ばあちゃんと豆腐のみそ漬けを作った。たくさん作って大変だったけど,楽しかった。もろみの量や漬け方などは独自のやり方があるそうだ。」「作り方を教えてもらったりして,今まで知らなかった泉村の郷土料理を知ることができた。」と高齢者とのふれあいや泉村を見直す機会にもなった。また,ホームページの作成では,「難しい所もあったけど説明を聞いて楽しくできた。これからもっと楽しいホームページを作りたい。」「泉中学校のホームページを自分たちで作っていきたい。」など意欲的に取り組む生徒たちの姿がうかがえた。ホームページは世界中の人々に対してアピールができる素晴らしい情報発信の手段であり,今後,調べた泉村のよさを伝えていきたい。そして,ホームページが今後,素晴らしい交流の窓口になっていくことを期待したい。
 最後に,泉村の教育目標に次のような言葉がある。「地域にへき地はあっても,教育にへき地なし」。インターネットの活用はまさにこの教育目標のとおりである。インターネットは時空を越えることを可能にしたといえる。泉中学校は山間部にあるので,今後,インターネットで共同学習などを行い,生徒の視野を広げると同時に生徒が何事にも意欲的に取り組む姿勢を育てていきたい。

ワンポイント・アドバイス
 ホームページの作成には時間がかかる。そこで,事前に画像処理を行っておくと生徒は文字入力だけで済み,時間を短縮することができる。
 電子メールやTV会議等の交流を希望する時は,「こねっと・ワールド」が便利である。これは,学校,子供,教師の要望に応える教育の情報ステーションといえる。インターネットやマルチメディアに関する有益な情報を満載しており,一見の価値がある。TV電話会議を行う時の時間の確保とテレビ電話使用のコストの問題をどうするのか,トラブルが発生した場合のサポート体制をしっかりとしておく必要がある。また,電子メールでの情報収集においては,返事が期限までに返ってこないこともある。それで,多くのメールを出しておく必要がある。
 また,生徒たちは,用件だけをメールに書いたり,前置きもなくTV会議で話をしてしまおうとするので,コンピュータの向こう側には人間がいるや迷惑行為はトラブルにつながることなどネチケットを生徒に事前に指導する必要がある。


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