インターネット(テレビ会議等)を利用した学校間交流
--- トライやる・ウィーク報告会 ---
中学校第2学年・特別活動
但東町立但東北中学校 伴 康史

インターネット利用の意図
 インターネットをはじめとする情報ネットワークの利用は,地域間情報格差をなくすだけでなく,人と人をつなぐもの,新しい人間関係を築くものとして大変有効な手段である。さらに,テレビ会議を利用することで,異なる地域の教室同士を接続して仮想的な教室空間を構成でき,通常では得られない交流の場を実現することができる。

 

1 交流授業

(1) ねらい
 本校は典型的な僻地過疎地域にあり,全校生徒数は108 名,1学年1クラスであり,幼稚園より同じメンバーで過ごしてきている。このような現状においてコンピュータの利用,つまりインターネットをはじめとする情報ネットワークの利用は,都市部の学校との情報格差をなくすだけでなく,人と人をつなぐもの,新しい人間関係を築くものとして大変有効な手段である。
 兵庫県では今年度より「トライやる・ウィーク」が行われた。これは学校を離れ,教室を地域に移し,生徒たちが小グループになってそれぞれ決めたところに出かける。生徒が自主的に取り組み,地域に学び,共に生きる心や感謝の心を育み,自立性を高めるなど,「生きる力」を育成する体験活動である。自分たちの活動をインターネットで発信するとともに,他校の活動を知り,情報交換を行い,視野を広げ,お互いの良さを発見させる。またリアルタイムに話し合うことにより,より深く交流する意欲を育てる。
 
(2) 指導目標
 ・情報機器を使用する力をつける。
 ・インターネット(電子メール・テレビ会議)を利用して交流学習を体験する。
 ・自分たちと相手の違いを認識し,お互い認め合う。
 ・リアルタイムに話し合うことにより,より深く交流する意欲を育てる。
 ・両校のトライやるウィークでの活動を比較する中で視野を広げ,お互いのよさを発見させる。
 
(3) 利用場面(校内での取り組み)
 交流授業までに,校内で以下のように取り組んだ。
@メール
 他校の先生と連絡を取るのに一番便利であったのがメールであった。私自身出勤し最初にすることが,メールの確認である。このようにメールを利用することは一般的になりつつあり,子供たちが大人になるころ当然のことになると思われる。そこで校内LANを利用したメール交換を行った。導入時にまず教師が基本的な操作を学びこれを利用する研修の場をもった。生徒には,インターネット利用ガイドライン(編集発行:兵庫県立教育研修所)を参考にし,まずモラル面などを教え,友達同士でメールの交換を行い,課題提出などにもメールを用い,少しずつ慣れてもらった。
Aテレビ会議
 今年度本校では,南淡町立沼島中学校と三木市立星陽中学校の2校とテレビ会議を使って交流することとなった。
 沼島中学校とは昨年よりフェニックスを利用した交流を行っている。PowerPointを使 い発表資料を作成し,これをお互いメールで交換し,それを見ながらの交流授業を行った。回を重ねる毎に技術的にかなり手の込んだ資料ができるまでになった。しかし昨年度からの交流で思ったことは,発表内容を,機械音声をいれた作品にすると,発表時には第三者的なものとなってしまい,本来の目的である人と人との交流からかけ離れたものとなった。生徒は交流することを楽しみにしているが,自由に話せる時間や電話代が限られており,授業の内容に追われることも問題と思われる。1つのテーマに沿って,お互いが討議する形が望まれる。この反省を踏まえ,今回は星陽中学校と「トライやる・ウィーク」についての交流授業を行う。
Bその他
 教師間ではメーリングリストや掲示板を利用し,交流授業の日程を調整したり,意見交換の場とした。
(4) 利用環境
@校内での授業
  サーバ  1台(PC-9821Ra23)
  教師用  2台(PC-9821V200)
  生徒用  36台(PC-9821V200 30台 PC-9821Nr13 6台)
  カラープリンタ  5台
  レーザープリンタ 2台 
  その他周辺機器
A交流授業
  両校とも環境を同じにするため,Cu-SeeMeを含むコンピュータ一式は県立教育研修所から借用した。
  プロジェクター 1台
  ISDN回線(64K)

2 指導計画

(1) 学習者
 但東北中学校の2年生の生徒は,昨年,淡路の沼島中学校と交流授業を行ったことがある。その際,テレビ会議システムを活用した経験がある。
 また今回,星陽中学校との交流授業を行うにあたり,交流授業前に但東北中学校の方から,星陽中学校に自己紹介や,地域紹介のメールを10月の下旬に1回,11月の上旬に1回,計2回のメールを送った。
 星陽中学校の2年生は1学期に,技術でコンピュータの簡単な操作方法やインターネットのしくみについて学習した。選択授業(メディア)では,毎週1回の授業の中で,インターネットを使って環境問題についてのHTMLファイル(昨年度3年生制作)を見たり,交流をしたい学校について調べたりした。9月からは但東北中学校とメール交換を行い,自己紹介,地域紹介,自分の夢紹介などを行った。11月第2週の但東北中学校の"トライやる・ウィーク"中の活動の様子をホームページで見て,但東北中学校の生徒に質問を掲示板で送った。
 
(2) 指導者
  
概要計画・立案   8月10日 (月)〜12日(水)
メール開始   9月24日(木)
電子掲示板制作要請   11月2 日(月)
電子掲示板設置   11月9 日(月)
電子掲示板書き込み開始   11月9 日(月)
ホームページ・メンテナンス   随 時
機材テスト(Cu-SeeMe)   11月25日(水)
  星陽中の所有の機器では,但東北中との直通で交流できないことが判明したため(研修所のCu-SeeMe のバージョンが違うため)研修所の機器を借用することとなった。
  
機材搬入   11月26日(木)(機器の通信チェック完了)
打ち合わせ・授業案検討   10月17日(土)〜
授業形式最終確認   11月2日(月)
     
   
 
(3) その他
 研修時に授業の大まかな概要を決めた(トライやるウィークについて)
 担当校どうしのメール交換や掲示板での交流を参照する。
 メーリングリストを使って情報交換
 研修所の協力

3 利用場面(交流授業)

(1) 展開
 活動内容  指導上の留意点

CU-SeeMeを使ってお互いに自己紹介をする

各校のトライやる・ウィークで特色ある活動等について発表する。
メールで寄せられた疑問点について質疑応答する。

来年度以降さらに充実した活動を送るためにどうすればいいか等意見交換する。
今日の授業を受けての感想を電子メールで交換する。

メール交換していた相手の顔を知らせる。

はっきり,明瞭にわかりやすく発表させる

質問事項は,発表を聞きながらメモを取らせておく。メールでの質問にはあらかじめ答えを用意していく。
今後充実したトライやる・ウィークにするにはどうするか考え,発表させる。
今後もメールの交換によってコミュニケーションが深められるように配慮する。

 
(2) 授業内容の分析
@学習への参加,意欲
 ア 授業開始前 
 どうしても自分の姿がモニターに映ることが気になる。 (手を振ったり立ち上がって動きたがる。)

 イ 授業開始 
 発表者が恥ずかしがることがあり,音声が聞き取りにくかったり,動きが大きく画像がモザイク状になることがあった。
 紙を見ながら話す生徒が多く下を向いているため表情がわからず,相手に画像で伝える内容の必要性があまり感じられない時があった。
 複数の生徒が発表するとき,マイクを持っている生徒以外の動きが大変気になった。
 (動きのないマイクを持っている生徒に対し手持ちぶさたで自分の姿が映っているので手を振ったり変わった表情をとった生徒が目に付いた。)
 相手の発表を聞くときや発表に関係のない生徒がモニターの自分の姿が気になり手を振ったり変わった表情を取り始める生徒が目に付いた。
 全体としては画像・音声ともに正常時では意欲的に取り組めていた。

・音が聞き取りにくくなると
 一度に集中力が欠けどうしても私語が多くなる。
 モニターに映っている自分の姿を確認する目的からか,手を振ったり変わった表情を取り始める生徒が目に付いた。

・画像が見えにくくなると
 集中力が欠けるが音声の時ほどではなく,どちらかというと画面を必死に見ようとしていた生徒が多い。

・相手が発表しているとき
 黒板だけを写し生徒の姿を映さない。→ 動き回る生徒が減る。
 こちらの画像を送らない → 少し回線に余裕が出る。

・音声が届かなくなったときの対処
 体で合図を送る → 比較的理解してもらえた。
 黒板などに文字を書いて写す → みえにくい
 チャットを利用 → 効果的と思えるが星陽中側で開けなかった。
 以上の方法でコミュニケーションをはかったが,なかなかうまく行かなかった。
 画像より音声が通じている方が生徒の集中力が持続して安心。今回の授業では画像より音声の方を優先にすべきだった。

・復旧作業
 再起動をかけると一時的に復旧するときもあるが回線の関係からうまく行かなかった。
 回線の関係だろうが比較的画像がスムーズな時でも音声が途切れたり,2〜3秒遅れて届くことがVTR から分かった。

A教室環境

 両校とも,暗幕をひくことができ,プロジェクターを活用するには最適であった。
 ただし,星陽中はバックがホワイトボードであったため顔が暗く映った。光源を考える必要があった。
 机のある星陽中学校の生徒は比較的落ち着いていたのだが,椅子だけの但東中学校の方が少し集中力に欠けるように思われた。

4 実践を終えて

 現在までの取り組みでは,コンピュータを使って様々な交流ができ,人と人をつなぐことができるとわかった。その際,様々な方法で自己表現できるようになった。ネットワークを利用することでこのような教育効果が期待できる。今回の授業についてまとめると

(1) 生徒の活動について
 ・ 生徒が機器に触れる機会をもっと増やすべきだった。
 ・ 自分の意志をいかに相手に正確に伝えるかということを考えさせる必要がある。
(2) 教師の活動について
 ・ 今回は相手校が決まってから目的を考えたが,目的に応じた交流相手校を探す必要がある。→全国的な情報を集約する組織が必要。
 ・ 担当教師どうしが電子メールを活用して連絡を取り合えたので良かった。
 ・ 指導案の作成も電子メールでやり取りしたので,効率よく作成できた。
 ・ 電話や電子メールなどのメディアの利点をよく理解し,組み合わせて活用することが必要である。
(3) システム,環境について
 ・ 情報手段としてのテレビ会議システムにはまだまだ改良の余地がある。
 ・ 情報収集の手段としてのコンピュータ活用を日常化していく事が大事である。
が挙げられる。
 今後もこのような取り組みをより発展させていきたいと考えている。

 

ワンポイント・アドバイス

使用機器の性能や担当者の操作能力はもちろん重要なことだが,それ以上に大切だと思われる事は以下の点である。

・ 言葉づかい,文章表現等の事前指導が重要である。
・ 相手の意見をよく聞く態度を育てる必要がある。
・ 普段からの校内の協力体制作りが必要。
 (時間割の配慮。個人任せでなく,情報教育組織を確立しておく必要がある。)
・ 教職員の機器に対する研修が普段から必要。(理解を広める)

 

利用したURL

県立教育研修所(http//www.hyogo-edu.yashiro.hyogo.jp/kenshusho)
(インターネット利用ガイドライン)