調べ学習におけるインターネットの活用について
中学校第3学年・理科
和歌山県南部町立南部中学校 山本 仁史

インターネット利用の意図
 調べ学習で生徒はさまざまなメディア(本,雑誌,新聞,ビデオなど)を利用し必要な情報を手に入れる。しかし学校の図書室の蔵書や資料には限りがあり,目的の資料が学校に保存されているとはかぎらない。
 本実践では,調べ学習を行う際に生徒が情報を入手する新しいメディアのひとつとしてインターネットのホームページを活用した。インターネットを世界に公開された情報センターと考えれば,インターネットを利用することで学校にない必要な情報を生徒が利用することができる。

 
1 地球と人間

(1) ねらい
 本単元は,地球には生物の生存を支える様々な環境要因がそろっていること,人間が利用している資源やエネルギーには天然資源・水力・火力・原子力などがあること,自然の開発や利用に当たっては自然界のつり合いを考えたり自然の保存や調整を行ったりする必要があることなど,自然環境を保全し,生命を尊重する態度を育てることをねらいとしている。
 
(2) 指導目標
 さまざまな環境問題について関心を持ち,その具体例を調べる。
 その解決法を考え,自分たちができることについて考える。
 環境問題について知るためにさまざまなメディアを利用する方法を知る。
 
(3) 利用場面
 環境問題について次のような9つの課題を設定し,3〜4名の班ごとに内容,問題点,その解決方法について調べ学習を行った。また,解決方法のなかで自分たちのできることを考えさせた。
  ・ゴミ問題      ・アルミ缶のリサイクル  ・古紙のリサイクル
  ・エネルギー問題   ・原子力問題       ・地球温暖化について
  ・ダイオキシンの問題 ・オゾン層の破壊について ・酸性雨問題
 情報の入手方法にあたっては,図書室とコンピュータ室でさまざまなメディアを利用した。メディアのひとつとしてインターネットのホームページを利用した。
 調べた内容については,班でまとめて発表をすることで学級全体に知らせ,他の班の発表を聞くことで自分たちが調べた内容以外のことについても知ることができるようにした。
 
(4) 利用環境
 @ソフトウェア
  ・Microsoft Internet ExplorerVer.4
    インターネットのホームページを見るためのブラウザソフト。
  ・Microsoft FrontPage Express
    ホームページ作成ソフトで,これを利用してリンク集を作成した。
  ・Microsoft Proxy Server Ver.1
    プロキシィサーバソフトで,このソフトを利用することでダイアルアップ接続で個々の生徒がインターネットを利用できるようになる。
 
 Aハードウェア
  ・生徒用コンピュータ  NEC PC9821V200 36台
  ・教師用コンピュータ  NEC PC9821V233
  ・ネットワークサーバ  NEC PC9821Ra266
  ・プロキシィサーバ   NEC PC9821V200
  ・ターミナルアダプタ  NEC AtermIT65Pro
    プロキシィサーバ専用のマシンに接続したターミナルアダプタを通して,インターネットに接続することで,インターネットを利用する授業の際に簡単にインターネットに接続できるようにしている。
  ・ネットワークプリンタ Canon LBP-2030
 
 B設置場所
  昭和63年1月に竣工した特別教室棟の2階にコンピュータ専用教室のCAI教室に設置されている。冷暖房完備,二重窓,二重床でコンピュータ専用に設計された教室である。準備室には電話回線(アナログ回線,ISDN回線)がある。特別教室棟2階には図書室があり,本,ビデオを利用することができる。平成9年12月にコンピュータの入れ替えが行われ(図1),生徒用コンピュータ36台がLAN によってつながれている。スキャナ4 台,カラーレーザープリンタ2台がネットワークでつながれている(図2)。生徒は百科事典のソフトやインターネットの画面をこのプリンタを使って印刷することができる。また,画像入力用にデジタルカメラ6台も用意されている。
図1 CAI教室
図2 ネットワークプリンタ
                  
 
2 指導計画(全10時間)

指 導 計 画 内  容
@オリエンテーション 班分け,課題の決定,調査方法の説明。
A図書室での調査   本,百科事典,科学辞典,科学雑誌,新聞の切り抜き集,ビデオ等で調べる。

B〜Dコンピュータでの調査
★インターネットの利用 

Windows95,ソフトの操作法の学習。
ソフトで調べる。
 マルチメディア百科事典Microsoft Encarta98
 マルチメディア統合辞書Microsoft Bookshelf
★インターネットで調べる。
E〜F調査およびまとめ
★インターネットの利用
 
図書室およびCAI 教室で調べる。
調査した内容を模造紙3枚に発表用資料としてまとめる。
発表の準備。
G〜I発表会
 
各班ごとに10分で発表。
発表後,質疑応答と評価。
最終時にアンケートを実施。  

 
 
3 利用場面
 
 環境問題に関する情報を手に入れる方法としてこれまで利用していた本や新聞,雑誌,ビデオなどのメディアに加えて今回は新たにコンピュータを利用して情報を手に入れることにした。コンピュータの利用にあたってはマルチメディア百科事典,マルチメディア辞書などのソフトとインターネットのホームページを利用した。
 インターネットの利用が目的ではなく,あくまでも情報を入手するメディアの一つとしてインターネットのホームページの情報を位置づけた。インターネットが使えるようになってすぐの授業であったのでインターネットの使い方の学習も同時に行った。今回はメールの使用やホームページを作成しての情報発信の時間はとれなかった。したがってインターネットの利用はホームページの閲覧と検索を中心にして考えた。インターネットの使い方の学習にあてた時間は30分程度で,内容は次のようなものであった。
  インターネットの説明。
  ブラウザの使い方の学習。
  検索サイトの使い方の学習。

 検索サイトでキーワードを入力して目的のページを探すのは難しい場合もあるので,事前にサーバにリンク集(図3 )をつくっていた。リンク集は,今回の実践だけのためで はなく,他の教科でも利用する中央官庁へのリンクなども含んでいる。

図3 環境問題に関するリンク

4 実践を終えて

 インターネットが使用できるコンピュータが導入されて1 ヶ月たらずでの実践であったために,Windows の基本操作,ソフト,インターネットの使用法を含めて授業で指導する必要があった。自宅にコンピュータがある生徒は19%であり,それまでインターネットを利用したことのある生徒はほとんどいなかった。そのためインターネットを十分に活用できるか心配された。しかし授業後のアンケートを見るとほとんどの生徒はインターネットを利用することに難しさを感じていなかった(図4 )。また,インターネットの利用を80%以上の生徒が楽しいと感じている(図5 )。
 
 
 
 生徒が主体的に調べていく方法をとったこともあり,今回の実践において普段の授業では積極的に参加することの少ない生徒も活発に活動した。授業だけでは時間が足りず昼休みや放課後に図書室で調べる姿,昼休みのコンピュータ教室開放の時間を利用して辞書ソフトやインターネットで調べる姿,放課後に発表資料を作成したり発表の練習をする姿が見られた。授業後のアンケートを見ても前向きな感想が多かった。以下が生徒の感想の一部である。
 「百科事典とかインターネットはとてもおもしろかった。百科事典は簡単だったけど,インターネットはちょっと難しかった。」
 「はじめは使い方が分からなくてあまりできなかったけど,何回もやっていくうちに楽しくなった。」
 「楽しかったし,調べたことがすぐに分かり,たくさんデータがでてきておもしろかったです。」
 「インターネットとかやって楽しかった。でも全員が同時に使えるようにしてほしい。」
 「コンピュータとかで,いろいろ調べて楽しかった。他の班のも聞いて,今地球上ではどんな問題があるのかいろいろ分かった。」
 「百科事典やインターネットで調べて,いろいろ書いていたけど,どうまとめたらいいのか分からなかった。本で調べていろいろ分かった。」
 「みんなで一つのことをコンピュータを使って学べたのと,みんなで調べたことを発表できたのが楽しかった。」
 これらの感想を見ると生徒はインターネットからの情報だけでなく,百科事典ソフトや本の情報も使い総合的に判断しインターネットをさまざまなメディアの一つとしてとらえているしていることがわかる。また一つの課題に対して協同作業を行うことの楽しさを感じている。
 生徒に今後使って見たいソフトを聞いてみるとインターネットが78.8%と最も高かった(表1 )。平成4 年度に行ったアンケートの結果と比較してみても最も高かった音楽に比べて28ポイントも高く,生徒のインターネッ トへの興味の強さが伺える。

 発表は各班ごとに順番に行ったが,この発表形式では一方的な発表になりがちである。また,学級単位による発表では,調べた内容が他の学級や次の学年に伝わらない。今後,学校グループウェアを利用し共有データベースに蓄積することによって,学級や学年を越えた学習に利用できる形態をとる必要がある。また,まとめた内容をホームページにのせるなどして,生徒の活動を公開するとともに,調べた内容をもとに実際に生徒が行動できるような校内体制を作っていく必要があると思う。

ワンポイント・アドバイス

 インターネットで得られる情報は生徒のために用意されたものとは限らない。内容が難しかったり,内容に誤りがある場合もある。百科事典ソフトや本などの他のメディアも利用し,生徒の理解を深める必要がある。
 生徒にとってキーワードを考え,検索サイトを利用して目的のホームページを見つけることは難しい場合もある。そこで,授業で利用できそうな情報のあるホームページや生徒が使えそうなリンク集が用意されているホームページへのリンク集をサーバにおいておけば,簡単に目的のページにいくことができる。
 

利用したURLなど

・ヤフー             http://www.yahoo.co.jp/
・グー              http://www.goo.ne.jp/
・みどりネット          http://www.erc.pref.fukui.jp/welcome.html
・環境庁             http://mx.eic.or.jp/eanet/
・佐賀県環境サーバ        http://www.saga-ed.go.jp/ps/nokita/kankyou/kankyou.html
・徳島酸性雨を測る会       http://www.nmt.co.jp/~sanseiu/
・新エネルギー財団        http://www.nef.or.jp/
・インターネット版【理科の部屋】 http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/RIKA/index.html