校内ネットとインターネットを活用した情報教育
中学校3年生 技術・家庭科
千葉県長生郡一宮町立一宮中学校 中村 健一
インターネット利用の意図
 インターネットを中核とするデータ通信網の発達によって,現代社会は大きく変わりつつある。技術・家庭科の「情報基礎領域」の学習でも,コンピュータ活用法の基礎的な技能の修得だけに留まらず,情報通信網と結びついた端末としてコンピュータをとらえ,情報の活用,発信の在り方についても重点を置いた学習が必要になってきている。そこで,インターネット上の情報を活用する調べ学習としてのワープロ新聞つくり,情報の発信体験のためのホームページ作成等に取り組んだ。
 
1 技術・家庭科 ワープロ新聞・ホームページ作成
 
(1) 指導目標
 @情報を主体的に選択し,活用できるようにする。
 A情報の発信・受信の基本的ルールを身につけさせる。
 B情報化による生活の変容,社会への影響を理解させるとともに,問題点についても理解させる。 
 
(2) 使用システムについて
 サービスプロバイダー  ダイアルアップ同期64KB
 
 
      
                図1 システム概要      
 本校は図1の様にシステムを構成している。校内全域にLANを張り,インターネットへは同時に最大40台まで接続が可能である。ただしメールアカウントは1つしかない。
 サーバー上に職員用領域,生徒用領域,CAI 教材領域,外部からの研修者用領域を作り,それぞれアカウントによって権限を分けて管理している。生徒へは入学時に名札の裏に貼るシールの形でユーザー名とパスワードを配布している。
 また,校内のみのクローズド環境で全校生徒にアカウントを発給し,電子メールシステム,電子掲示板システムを立ち上げて運用している。はじめからインターネット世界にいきなり出させるのではなく,このシステムで電子コミュニケーションの擬似体験をさせ,利点と危険性を教えるようにしている。
 
      
2 指導計画 
      
| 指  導  計  画
 | 留   意   点
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校内ネットによる情報の発信・受信練習☆CCMAIL
 ・ネットワークへのログオン
 ・日本語入力練習
 ・Eメールの発信と受信
 ・電子掲示板の活用
 ・電子コミュニケーションの利点
 | ・情報基礎は3年生で実施するが,本単元は他教科でのパソコン活用の基礎となる事項でもあるので1年入学時に実施する。 ・パスワード管理の重要性について指導する。
 ・匿名性による無責任な書き込みの問題性について考えさせる。
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インターネットによる情報の収集と活用(ワープロ新聞の作成)
 ★インターネット利用
 ・インターネット活用の注意点
 ・サーチエンジンの検索練習
 ・データの収集と保存
 ・調査テーマの決定
 ・ワープロ新聞つくり
 | ★個人情報をウェブに書き込まないように厳重に指導する。 ★情報の正当性について考えさせ,取捨選択することの重要性を教える。
 ★どうしても必要な問い合わせメールは,教師立ち会いのもとで送らせる。
 ・著作権について指導する。
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ホームページによる情報の発信練習★インターネット利用
 ・テーマの決定
 ・素材やデータの収集
 ・ホームページの作成
 ・校内ネットでの発表
 | ★グループ別にテーマを決めさせ,インターネットを活用して資料を収集させる。 ・ハイパーテキストの概念を修得させる。
 ・インターネット上のデータには著作権が存在することを教え,学校では特例的に一時的な利用ができることを理解させる。
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インターネットを利用した交流学習★インターネット利用
 ・Eメールによる学校交流
 (交流相手を決めて1対1交流)
 ・フェニックステレビ会議システムによるリアルタイム交流
 | ★メールによる交流は不特定多数の者とはさせず,信頼できる学校間で行う。 ★メールアカウントが一つしかないので,各自のメールを一つのファイルにまとめて交換する。
 ・メールによる交流相手とテレビ会議を行い実際の姿や声を聞かせ実感を持たせる。
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3 利用場面
      
(1) 校内ネットによる情報の発信・受信練習
  入学時のレクチャーとして,ネットワークへのログオンの仕方,日本語入力の仕方,CAI 教材の使い方,電子掲示板とメール(本格的な利用は3年次)を4時間程度かけて指導している。図2は電子掲示板の様子である。このフォーラムは生徒の希望で制作されるようにしている。最近では自作小説と自作詩の投稿フォーラムが人気である。 
  これらの運営を通して匿名での投書では,時折無責任な書き込みや虚偽の情報の書き込みがあることに注目させ,ネットワーク使用の心得についても指導している。3年次では始めに本格的にメール・掲示板を使わせた上で,本物のネット上の人間関係のトラブルやサイバーストーカの例などを話し,実際のインターネット使用時には,不用意に個人情報の書き込み等を行った場合の危険性について指導している。 
 
 
 
      
            図2 校内電子掲示板
 
(2) インターネットによる情報の収集と活用(ワープロ新聞の作成)
  3年次では「情報基礎」のワープロ学習として新聞つくりを取り上げている。
 《学習の流れ》 
ワープロの基本的な技法の説明と練習(日本語入力については既習事項なので文字の装飾,映像のカットアンドペースト程度の指導で制作に入らせることが可能である。)
      ↓ 
個人新聞のテーマの決定(興味・関心を高めるため自分の一番興味のあることについて,みんなに知ってもらうというスタンスで制作させた。) 
      ↓ 
ネットサーフィンによる情報の収集(サーチエンジンによる検索の仕方,収集した情報やデータの保存の仕方を指導した。)
      ↓ 
    新聞の作成
      ↓
校内サーバーによる生徒間閲覧(全校生徒が個人フォルダーを持っているので,作品はサーバー上に置かせ,自由に読み合えるようにした。) 
               
以下は生徒作品の例である。
 

 
 
 
     図3 宇宙について      図4 遊園地の新アトラクションについて
 

 
 
 
     図5 マンガについて     図6 サッカーについて 
 
(3) ホームページによる情報の発信練習
 《学習の流れ》
   共同作業グループの決定(5名程度のグループをつくり共同で制作に取り組ませた。) 
       ↓
   グループのテーマの決定(興味・関心にそって,制作テーマを決めさせた。)
       ↓
   インターネット・CD-ROM・図書等からのデータ収集
       ↓
   各パーツごとに分担し,ページ作成(ハイパーリンクの概念を教えるため,分業制として各自分担部分について制作させた。)
       ↓
   ページ間リンクの作成(各自の制作部分をハイパーリンクで結合させ,関連づけさせた。) 
       ↓
   校内サーバーで公開・閲覧(個人フォルダーにデータを置き,校内で自由に見られる形で発表させた。) 
   
   以下は生徒作品の例である。
   
   
    |  |  | 
   
    | 図7 お笑いについて | 図8 幕張について  | 
   
(4) インターネットを利用した交流学習
《学習の流れ》
   相手校から自己紹介メールの受信
        ↓
   交流相手を決めて相互に電子メールを交換
        ↓
   フェニックステレビ会議システムで,リアルタイム会議
・はじめまして,私はテニス部です。もうすぐ試合なので緊張しています。いつも負けてばかりなので勝たせろー!って感じです。あなたは何部ですか?・・ 
・わたすは陸上部ですぁでも練習を少しさぼりぎみです。それはそれで,わたすは,今,悪魔城ドラキュラX月下の夜想曲をマシュった,でも200%にみたいのが現状です・・私はピアノをやっています。上手じゃないけど楽しいです。私は色々なアニメを見ています。アニメは好きですか?弟がいるので3チャンネルのアニメものをよく見ています。 
 修学旅行はどうでしたか・
 
4 実践を終えて
   
(1) 生徒の変容
   生徒のコンピュータに対する意欲は大変高く,パソコン教室を使った授業の時間を心待ちにしている。インターネットの活用については,検索エンジンを駆使して,効果的に自分の必要とする情報を収集しワープロ学習やホームページ制作で活用できるようになった。レベルの高い生徒はマルチタスク環境を利用して,インターネットで情報を 見つつ,ワープロでまとめるという作業をこなしている。 
  インターネットやマルチメディアを使った学習では,簡単な基礎技能さえ修得させれば,後は適切なテーマと必要最小限な援助を与えることで,極めて主体的な学習が展開できる可能性を持っている。 
   
(2) インターネット活用上の問題点
  インターネット上の情報は,生徒が利用することを考慮して書かれているものは少ない。今後は,教師や生徒が教材を自主制作してウェブの形で全国的に資産を貯めながら,相互利用していくことが必要である。また,インターネット上の情報は玉石混交であり,教育上好ましくない内容のものも多い。これらの有害情報にどう対処していくかという対策が重要である。同時にインターネットで得られる情報だけではなく他のメディアや体験活動による補完も必要である。 
   
ワンポイント・アドバイス
  
    | 低い通信コストで多数のPCをインターネットに接続するには,パフォーマンステクノロジー社の「インスタント・インターネット」の活用が有効である。1回線で同時最大に50台までのPCがダイアルアップ接続できる。 | 
   
利用したURL 
 一宮中ホームページ http://www.mobara.ne.jp/~ichimiya/