インターネットを利用した進路学習
中学校2年生・特別活動
松山市立南中学校 星川 良紀
インターネット利用の意図
インターネットを利用して得られる,会社・団体などの豊富な外部情報を用意することで,生徒が課題意識を持って,自ら情報を利用し考え,判断できるための能力を育成する。
1 進路学習(職業の内容と特色)
(1) ねらい
職業に関する情報を活用し,考えをまとめることによって,将来に対するビジョンを持たせる。
(2) 指導目標
・インターネット,書物などの情報から課題意識を持ち,職場体験や学習やその体験発表を行う中で,将来の進路についての意識を高める。
・体験をもとに,自分の考えを述べたり,職業についての視野を広めたりして,将来の進路の設計を行う。
・インターネットや書物などを有効に使って,発表資料を制作したり,日頃の学校生活を改善したりする方法を身につける。
・職業について,社会における役割を理解する態度を養う。
また,現在の学校生活において,自分のなすべき事について前向きに考える。
(3) 利用場面
@インターネットからの情報をもとに職業について調べる。
生徒が課題を持って職業について調べるため,事前に会社・団体のWWW にアクセスし,授業に必要な情報を臨時のWWW サーバにキャツシュすることで,LAN 上のコンピュータから検索できるようにした。情報が膨大なために,あらかじめ各グループで調べることを明確にさせることによって,情報整理の基本と,重要部分を見つけるポイント,こつなどを学ばせたのち,スタートとさせた。

A調べた情報をもとに,実際に企業・団体における職場体験を行う。
松山市内の職場約30カ所で実施し(1日) ,生徒は,インターネット等で得た情報をもとに,職場を見学したり実際の仕事を体験したりした。生徒には,得た情報をうまく活用して,学や実習に生かしたり,疑問に感じたことを積極的に質問したり,互いに話し合ったりするように留意させた。
B体験活動をホームページの形でまとめる。
職場体験によって得られた知識や,そのときの感想をグループごとにホームページの形にまとめた。ホームページにまとめる前の段階で,見出しや内容を下書きさせ,課題意識を明確にし,制作に取り組ませた。HTMLエディタといフリーソフトを使い,制作を容易にすることで,生徒を技術面の問題から解放し,より課題に迫れるように配慮した。制作の後,作品を各コンピュータから,LAN 上のサーバにコピーをさせ,他の生徒の作品を参考にしながら,改良できるようにした。このように制作したそれぞれのページを閲覧できるようになるまでには,基本となるHTMLのサンプルを共通に利用したり,できあがったものをサーバの中の指定場所に格納する必要があった。そのため,サーバのファイル共有の設定として以下の2種類を主に利用した。
(ア) サンプルを誰もが見れ,利用できるようにする。(アクセス権を持つものは無制限とし,ファイルを読むことのみできるようにする。)
(イ)制作者が,指定場所に自分のファイルを書き込めるようにする。(それぞれのグループしか,読み書きすることができないそれぞれのフォルダを作る。)
なお,クライアントでは,ファイル共有にマイクロソフトネットワークを使用した。
Cそれぞれのグループのホームページを閲覧し,評価しあう。
それぞれのグループが制作したページを見て評価する際には,互いの良い点を述べさせ,次回の活動への意欲化を図った。また,他の人の多くの意見から,総合的にとらえさせ,今後の課題を見出せるようにした。ホームページを見ながら,意見交換ができるようにするため,生徒一人一人にメールアカウントを与え,電子メールで自分の意見を相手に伝える体験をさせた。この体験のために,自分の意見を相手に伝える難しさと同時に,意見をもらったときの喜びを実感できるように工夫した。
(4) 利用環境
仮設したwww サーバを利用し,授業に前もって,愛媛県内,日本国内の会社・団体,それぞれ約200社のホームページをアクセスし,一時的にキャッシュにいれて準備した。なお,本来であれば,リアルタイムでインターネット上から情報を得られるようにすべきだが,電話回線等の学校内の設備上の制約があり,インターネット接続授業ができないための措置である。
グループ編成

グループ分けは6班とし、それぞれIPアドレスやメールアカウントを与えた。
このようにパソコン教室内をイントラネットのごとく構成して、学習活動を行った。
その結果生徒は、同じ教室内にもかかわらずグループどうしがあたかも独立して存在するような感覚を覚えたようである。
2 指導計画
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時 間
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指
導
計
画 |
1.職業とは何だろう?
@職業の意味(進路の教科書使って理解する)
A職業と産業の分類(インターネット,書物などの情報をもとに調べる。)
2.職業の内容を調べよう
@職業の内容と特色
A移り変わる職業の世界
(職場体験学習やその活動結果をまとめさせることによって,職業の内容を知り,将来の生き方へのビジョンを持つ。) |
1時間
1時間
5時間(本時その5)
1時間 |
3 利用場面
(1) 目標
・将来の自分の進路に前向きに考えることができる。
・職場体験の結果を意欲的にまとめ,発表活動を行うことができる。
(2) 展開
活動内容(時間) |
形態 |
教師の支援・留意点 |
評価の視点 |
1.本時の活動の内容及びねらいの確認をする。(5分) |
一斉
|
○活動のときのグループ編成については,あらかじめ決めておく。 |
◇本時の活動内容・ねらいが把握できているか。 |
2.グループ発表資料を閲覧する。(25分)
a 資料について話し合い,意見交換する。
b 相互評価を行う。
c 自分たちの活動成果をまとめる。
(調べ学習,職場体験,体験のまとめ,意見交換などをもとにまとめる。) |
一斉
↓
グ
ル
|
プ |
○他の人のよい点をみつけさせる。
○意見交換のマナーに気を付けさせる。 |
◇建設的な意見が述べられているか。 |
3.活動成果を発表しあう。(15分)
(自分たちの活動に対する感想,今後 の進路についての豊富,日頃の学校生活の改善点を述べる。) |
全体 |
○自分の考えを持って発表できるよう働きかける。 |
◇自分なりの意見が堂々とのべられているか。 |
4.本時のまとめ(5分)
(これからの生き方のビジョンを持つ。) |
一斉 |
○意欲化を図る。 |
◇充実した学校生活を送ろうとする意欲が持てたか。 |
評価に関すること |
将来の進路に対する意識が高まったか。 |
表現力を養う学習場面 |
自分なりの意見を堂々と述べることができたか。 |
4 実践を終えて
インターネットという新しいメディアを活用することで,生徒は意欲的に活動し,教師としては,教材の活用の可能性,ひいては新しい教育の可能性を見いだすことができた。
生徒は課題意識を高め,基礎的な内容を理解することができ,自分としての意見を述べられるようになった。また,一連の活動を通して,活動の成就感を味わったり,互いの良い点を認めあう態度が養われた。
電子メールを使って意見交換を行ったが,1つの教室では実際に話し合う方が速い。
しかし,学校間がネットワークで結ばれる近未来を考えると,ネットワークを使って物事をとらえることの将来性,拡張性,応用性等が認識できたように思う。
また,インターネットを授業に積極的に活用しようとしたら,現実的には次のような課題があげられる。
・コンピュータリテラシーの醸成(基礎的操作,マナー等)
・情報活用能力の向上(加工する技術を含めて)
・道具としてのコンピュータのあり方(必要な場面で必要な教具・教材を使う)
・他教科との関連を考えた,カリキュラムの編成,コンピュータ利用のための時間確保
・個別の同機種のコンピュータの配置(異機種ではキーボード操作等の指導が困難)
・活用場所の多様化(パソコン室,図書室他)
・校内LANの構築と普通教室へのパソコン配備
・教材・教具の準備に必要な時間の確保
・ネットワーク上のセキュリティの保持
以上を実現させるマスタープランの作成,予算化,実行主体の編成が急務であろう。
進路学習に関するアンケート結果
1.インターネットやコンピュータを利用した進路学習において,次の質問に対して1〜5でつけなさい。
@職業に関心を持ったり,意欲的に活動したりすることができた。
また将来の進路についての意識を高めることができた。
A工夫して発表資料を作ったり,独創的な意見を述べたりすることができた。
将来の進路についての設計ができた。
Bインターネットや書物などから効率よく情報を探し出したり,コンピュータのいろいろな機能を使って,学習したりすることができた。
日頃の学生生活を改善する方法を知ることができた。
C職業について知り,社会における役割について理解できた。
また,現在の自分のなすべき事について理解できた。
2.インターネットや書物などを利用した情報検索において,楽しかった,面白かった点を書きなさい。
(97.10.24)
・インターネットをやったことがなかったので,面白かった。もっとやりたい。
・情報の量や種類の多さにびっくりした。いろいろくわしく書かれているので勉強になった。
・いろいろな会社がホームページを出していて工夫していた。職場体験で自分がもらった資料と同じことが載っていたので驚いた。
・職場についていっそう興味が高まった。他の職場のことも知ることができて楽しかった。
・マウスで操作するだけで情報が出てきて驚いた。
3.コンピュータを利用した発表資料の制作において,楽しかった,面白かった点を書きなさい。
(97.10.24)
・いろいろなアプリケーションやコンピュータの機能を使って,資料を作り上げていったことが面白かった。
・難しかったけど,最後できてみたらけっこううれしかった。
・作品制作を通して,職業について深く理解できたので良かった。
・友達と協力してできたのが楽しかった。
・コンピュータなど普段使えないので楽しかった。
ワンポイント・アドバイス
現在,インターネットを利用した意見交換の手段として,電子メールだけではなく,ニュース,Cu-SeeMeなど,いろいろな方法がとられているが,今後ネットワークがどのように進化しても,情報検索や体験活動に始まって,情報発信を行い,相互評価に至るといった基本パターンは同じである。校内に本格的なLAN
がない場合に,授業に先立ち,仮説のサーバでキャッシュする方法は,教室用複数台のパソコンを使った生徒の同時アクセスをさばく有効な手段である。
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