インターネットを利用した進路学習
−職業調べ・高校調べを通して−
中学校第3学年・特別活動
佐賀県玄海町立有浦中学校 丹野 到
インターネット利用の意図
現在,インターネットを代表とするコンピュータネットワークの発達やコンピュータの急速な進歩と普及によって,社会は高度な情報通信社会へと変貌を遂げようとしている。
ホームページや電子メール,チャットやテレビ会議システム等のコンピュータによる通信は,遠く離れている人同士を結ぶ新しいコミュニケーションの手段となりつつある。また,様々なデータが蓄積されたホームページは,情報の検索・発信に活用できる。
そこで,「職業調べ」「高校調べ」にインターネットを活用し,生徒の興味・関心を高めるとともに進路学習におけるコンピュータやインターネットの活用を探ってみた。
1 インターネットでの「職業調べ」「高校調べ」
(1) ねらい
本校は平成8・9年度の機器利用研究指定校として,各教科におけるコンピュータの教育利用について研究を深めてきた。これまでインターネットの活用に力を入れて実践してきたが,研究指定が終わった現在でも生徒たちが自主的に活用したり,我々教師も授業で取り入れることが多い。インターネットの活用は一時的なものではなく定着するコンピュータの活用方法だと言える。
そこで,進路学習の一環として実施している「職業調べ」「高校調べ」にインターネットを活用し,生徒の興味関心を高めるとともに進路学習におけるインターネットの活用を探ってみた。
(2) 指導目標
「職業調べ」の指導にあたっては,自分の希望とする職業の内容や特色,その他の条件などを調査 研究させ,自分の希望する仕事に就くためにはこれからどのような勉学の道を選んだらよいのかを確 認させたい。
続く「高校調べ」の指導にあたっては,自分の希望とする高校の内容や特色,その他の条件などを調査・研究させ,進路計画の一つの材料とさせたい。
(3) 利用場面
この単元では,次のような学習場面でコンピュータを活用する。
@「職業調べ」の学習場面
希望の職業に就くための進路をワークシートにまとめさせる。その調べた内容を発表させるときに電子黒板的にコンピュータを用いる。また,そのワークシートを画像ファイル化し,ホームページのデータとしてインターネット上にFTP 転送するときにコンピュータを用いる。
A「高校調べ」の学習場面
希望とする高校の内容や特色等をインターネット上のホームページで調べさせるときにコンピュータを用いる。また,その調べた内容を発表させるときに電子黒板的にコンピュータを用いる。
(4) 利用環境
@使用機種
生徒用コンピュータ
・NEC PC-9821 Xc13(Windows95,Pentium133) 12台
・NEC PC-9801 BX2(Windows3.1,i486SX20) 20台
サーバコンピュータ
・NEC PC-9821 Xc13(WindowsNT4.0,Pentium133)
A周辺機器
デジタルカメラ
・Sony Mavica MVC-FD71
教材提示装置
・NEC MAP-602
B稼働環境
校内LAN環境
・サーバー:Windows NT4.0 Server ・クライアント:Windows95
・ダイアルアップルータ1台,ハブ4台,LANケーブル総長1.3km
インターネット環境
・OCNエコノミー(128kbps) ・ISDN回線(64kbps)
C使用ソフト
・ブラウザ:Internet Explorer3.02 ・FTP:FFFTP1.23
2 指導計画
活動(6/6)
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活 動 内 容
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指導上の留意点
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@職業の意味や産業分類について考える。
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・職業や産業の種類や数について資料で調べ発表する。
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・職業は極めて多種多様であることを知らせる。
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AB職業の内容と特色について知る。
インターネットの利用
C高等学校の内容とその特色を調べる。
★インターネットの利用
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・自分の希望とする職業を職業分類表産業分類表によって分類し,その内容や特色について調べ発表する。

図1 記入している様子
・身近かな高等学校の内容とその特色について調べ発表する。
図2 情報検索している様子 |
・職業分類表や産業分類表を活用させる。
・職業の内容や特色について資料をもとに調べ,ワークシートにまとめさせる。
・完成したワークシートをデジタルカメラで撮影し,画像データに変換させる。
・画像データを FTPで転送し,インターネット上に掲載する。
・高校別にグループを編成しインターネット上のホームページで内容と特色を調べさせる。
・希望する高校のホームページがない場合は,興味のある高校を調べさせる。
・ワークシートにまとめ発表させる。
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D高等専門学校の内容と特色を調べる。 |
・普通の高等学校や職業高等学校と高等専門学校にはどんな違いがあるか調べ発表する。 |
・5年間一貫教育の長所や高等専門学校の教育の目的について理解させる。 |
E専修・各種学校,その他の教育機関について調べる。 |
・専修学校や各種学校について教師の話を聞き,グループで話し合い,理解を深める。
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・学校教育法による学校と同等の高卒資格は得られないことを知らせる。
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3 利用場面
(1) 目標
・希望とする職業の内容や特色をつかむ。
・希望とする高校の教育の目的と種類,学科,課程等の特色をつかむ。
・意欲的に情報検索活動および情報発信活動に取り組む。
(2) 展開
@「職業調べ」
学習内容
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学習活動
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指導上の留意点
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使用機器
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前時の確認
↓
本時の目標
↓
要点の把握
↓
作業の実施
↓
内容の発表
↓
本時まとめ
↓
次時の予告
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・前時の学習内容を確認する。
| ・前時の学習内容を生徒に発表させる。
・生徒機に画面転送して説明する。
・文字や図は濃い色のペンでかかせる。
・ピント合わせやブレに注意させる。
・教材提示装置を使い短時間で発表させる
・FTPでデータを転送する。
・次時の学習内容を伝える。
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・教材提示装置
・デジタルカメラ
・教材提示装置
・コンピュータ
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希望する職業の
ホームページを作成しよう |
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・調べた内容のまとめ方,ホームページの作り方を知る。
・希望する職業をワークシートにまとめる。
・ワークシートをデジタルカメラで撮影する。
・まとめた内容を発表する。
・完成したホームページを見る。
・次時の学習内容を知る。
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※職業調べWebサイト
http://www.saga-ed.go.jp/school/edq13251/SYOKUIN/SINRO/SYOKU/indexsin.html
A「高校調べ」
学習内容 |
学習活動 |
指導上の留意点 |
場所 |
前時の確認
↓
本時の目標
↓
要点の把握
↓
調査の実施
↓
調査の発表
↓
本時まとめ
↓
次時の予告
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・前時の学習内容を確認する。
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・前時の学習内容を確認し,学習内容をつかませる。
・希望する高校のホームページがない場合は,興味のある高校を調べさせる。
・生徒機に画面転送して説明する。
・コンピュータ1台を3名程度で情報検索させる。
・教材提示装置を使って短時間に発表させる。
・感想を書かせる。
・高等専門学校について説明
する。
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第1パソコン室
↓
学校図書館
↓
第1パソコン室
↓
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希望する高校をインター
ネットで調べてみよう |
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・インターネットの使い方,情報検索の仕方を知る。
・ホームページを見て高校の特色をつかむ。
・調べたことを発表する。
・学習内容をワークシートにまとめる。
・次時は,高等専門学校について調べることを確認する。
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※職業調べWebサイト
http://www.saga-ed.go.jp/school/edq13251/SYOKUIN/SINRO/SYOKU/indexsin.html
(3) ワークシート
図3,図4は授業で用いたワークシート(生徒記入例)である。
図3 「職業調べ」の授業で生徒がまとめたワークシートの一例
図4 「高校調べ」の授業で生徒がまとめたワークシートの一例
4 実践を終えて
今回,生徒の興味・関心を高め,楽しみながら進路学習ができることを目標に「職業調べ」「高校調べ」にインターネットを活用した。
「職業調べ」では,情報発信型の授業を展開してみた。すなわち,学校図書館の資料で自分の希望とする職業に就くためにはどのような勉学の道に進んだらよいのか調べ,ワークシート1枚にまとめさせた。まとめたワークシートはデジタルカメラで画像ファイルに変換し,簡易のホームページとして進路学習のホームページ上に掲載することにした。
ワークシートをHTMLファイル化すると見栄えもよくデータの転用にも便利であるが,
HTMLファイル化するには時間がかかりすぎるため,今回はワークシートに手書きでまとめさせてみた。近年,デジタルカメラの性能も向上し文字も鮮明に映る。生徒にホームページを作らせる際,時間がない場合の一つの手段として有効である。
「高校調べ」では,情報検索型の授業を展開してみた。すなわち,インターネット上の県内高校ホームページで希望とする高校の内容や特色を調べワークシートにまとめさせた。高校の内容や特色はパンフレットでも調べられるが,インターネット上のホームページには,高校の情報がハイパーテキストで示されているとともに絵や写真でも紹介されており非常に見易い。中には動画や音声を掲載している高校もあり,最新の情報とともにパンフレットで不十分なところを補ってくれる。
「高校調べ」のインターネット活用では,生徒から「インターネットで調べて資料ではわからなかったことがわかった。」「もう少し時間がほしかった。」「自分の希望とする学科のことを調べられた。」「いろいろな免許・資格が取れることがわかった。」「部活動の様子がわかった。」「調べたい高校のホームページがなかった。」などの感想が得られた。
だが,インターネット活用も手放しでは喜べない。高校調べに活用できる高校ホームページの数はまだまだ少なく,生徒の希望をすべて網羅しているとは言えない。また,職業調べで活用できるホームページもわずかしかない。今後,進路学習におけるインターネット活用は,コンテンツをどれだけ増やせるかが鍵になるものと思われる。
ワンポイント・アドバイス
文部省が平成13年までに全国の公立小中学校にインターネット接続ができる環境を整えることを目指していることからもわかるように,これからの教育にはインターネットが欠かせないものになると考えられる。
インターネットの活用には情報発信型の活用と情報検索型の活用が考えられる。前者はインターネットに1台でもコンピュータが接続できれば可能であるが,後者はコンピュータ1台だけの接続では満足な活動はできない。
今回の活動では,「職業調べ」を情報発信型の授業展開,「高校調べ」を情報検索型の授業展開とした。各学校で,実状に応じて参考にしていただければ幸いである。
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利用したURLなど
職業調べWebサイト
http://www.saga-ed.go.jp/school/edq13251/SYOKUIN/SINRO/SYOKU/indexsin.html
進路だより「ザ・しんろ」
http://www.saga-ed.go.jp/school/edq13251/SINROHTM/SINRO.HTM