総合的な学習の時間におけるインターネット活用実践の試み
足利市立愛宕台中学校 教諭 野田 潔

インターネット利用の意図
 平成10年11月に文部省が2002年から実施される「新学習指導要領」を発表し,総合的な学習の時間が新設された。インターネットで「総合的な学習の時間」について検索した。その中に,2教科以上の合科による実践例(香川大学教育学部付属坂出中学校)があった。愛宕台中でも,次年度に向けて「総合的な学習の時間」の研究を,教務主任を中心に開始した。2教科以上の合科による指導,授業で作った作品の公開,伝言板(BBS)による交流,特別活動,部活動等の活動内容発表といった情報発信を総合的な学習の時間で行う実践を試みる。そのために,インターネットを利用する。

1 総合的な学習の時間におけるインターネット活用

 平成10年度,初めて免外美術を担当した。「美術と技術・家庭科」の,合科による実践。学校行事,文化祭,修学旅行,林間学校,学年行事(クラスマッチ,サツマイモ栽培,収穫,焼き芋等),生徒会活動,部活動,等の行事を,情報基礎,選択技術,特別活動等で,生徒にHTMLファイル化させる。HTMLファイルで教材を自作する。前記のような実践を行いながら,「総合的な学習の時間」において,どのようにインターネットを学校教育で活用したら効果が上がるか研究してみようと思い,テーマを決めた。

2 指導計画

(1) シンメトリーなコンピュータグラフィックス
 平成10年度の愛宕台中は,美術:週1時間,技術・家庭科:週2時間なので,技術・家庭科の時間にコンピュータの基本操作を指導する。美術の時間は週1時間しかないので,コンピュータグラフィクスの制作にあてる。完成した作品は校内のサーバに保存し文化祭で公開する。さらに,愛宕台中のホームページで公開する。技術・家庭科の時間に,公開した自分の作品と友達の作品に対するコメントをワープロで書く。

(2) 生徒会やクラブ活動の様子の発表
 生徒会,クラブ活動の様子を技術・家庭科の授業でHTMLファイルにして,インターネット上に発表させる。
 平成8年度〜平成9年度の2年間,生徒会顧問の指導のもと生徒会本部役員が中心になり,各クラスで話し合い,平成9年の生徒総会後「いじめ0生活(ゼロライフ)」を成文化した。「いじめ0生活(ゼロライフ)」を受けて,平成10年度に,「僕らの6生活宣言」をした。「いじめ0生活(ゼロライフ)」と,「僕らの6生活宣言」にすべて関わったのは,今の(平成10年度)3年生である。3年生は,技術の授業で,HTMLファイルの学習をしている。授業で生徒にHTMLファイルを作らせ,ホームページに公開する。

3 利用場面

(1) シンメトリーなコンピュータグラフィックス
 H10年4月,校長より「H10年度は,免外で「美術」を担当してほしい。」と,頼まれる。初めて美術を担当することになり,美術の教材研究を始める。美術の教材にコンピュータグラフィクスがあったので,その指導方法の教材研究を開始する。
 足利市立第三中学校のK先生が,美術の授業で,コンピュータグラフィックスを教えているということを聞いて,春休み中に三中に行き,K先生の指導方法,取り扱っている教材,使用ソフト,生徒作品等を教えてもらう。使用ソフト:スーパーキッド。一,三年で,生徒に指導している教材及び,生徒作品を見せてもらった。後日,フロッピーで,三中の作品を,愛宕台中に送ってもらった。そのファイルの一部を校内のサーバに保存し,サーバ内のファイルをコンピュータ室のクライアントからアクセスできるようにHTMLファイルを作った。
 美術の授業の時,生徒に自分のCG作品を制作する前に,サーバ内のファイルにアクセスさせて,自分の作品制作の参考にさせた。
 サーチエンジン,Yahoo,GOO等で,生徒のCG制作指導の参考になりそうな作品を探す。
 いろいろなホームページを探した結果,東京都江戸川区立葛西第二中学校,静岡県小笠郡菊川町立菊川東中学校,石川県立小松明峰高等学校,宮崎県立延岡商業高等学校のホームページにあるCG作品が,美術の時間に生徒にアクセスさせるのに適していると判断した。その他にも,生徒の喜びそうな,アニメのキャラクターのCG作品等のあるホームページもあった。しかし,「美術の授業で生徒にアクセスさせる。」ということを考えると,上記の4校が適していると判断した。Eメールで,ホームページとCG作品のあるページの2カ所に,リンクを貼ることをお願いした。
 現在,愛宕台中学校のリンク集にある4校の「生徒CG作品のあるホームページ」は,上記のような視点で探した。校内のサーバーにある,「足利市立第三中学校の生徒CG作品」と,リンク集のCG作品を,美術の時間に,生徒に制作させる前に,自由にアクセスさせ,自分のCG作品制作の参考にさせた。
 東京都江戸川区立葛西第二中学校は,学校の公式のホームページでなく,美術の先生が自分の指導した生徒の作品を,個人で運営するホームページに公開したものである。そのページに,シンメトリーなCG作品のコーナーがあった。そこで公開されている作品は,タウンズペイントで制作させたそうである。ここに公開されているCG作品を見て,愛宕台中の生徒に,シンメトリーなCG作品を制作させようと考えた。
 生徒に制作させる前に,試作品をキューブペイントで制作した。試作したCG作品はGIFファイルで保存し,その手順をHTMLファイルで作り,校内のサーバーに保存した。その結果,美術の授業の時,生徒は,その校内のサーバー内のファイルにアクセスし,制作手順を確認しながら,自分のシンメトリーなCGの制作を進めることができた。このファイルは,愛宕台中のホームページに公開してある。

(2) 美術と技術・家庭科の時間の実践
 2,3年生は,美術の授業が週1時間しかないので,コンピュータの基本操作は,技術の時間に指導した。美術の時間は,主に,シンメトリーなCGの制作作業をさせた。

技術の時間に指導したコンピュータの基本操作
 Windows95の基本操作,起動方法,終了操作,マウスの基本操作(マウスの持ち方,左ボタン,右ボタン,ポイント,クリック,ダブルクリック,ドラッグ他),ファイルの保存方法,保存したファイルの呼び出し,アプリケーションの起動,インターネットエクスプローラの基本操作(希望するページのアクセス方法,校内サーバーの共有フォルダ内のファイルにアクセスする方法等),閉じるボタン,最大化ボタン,元のサイズに戻すボタン,最小化ボタン,複数の窓の使用方法(インターネットエクスプローラでサーバ内のファイルにアクセスしながら,キューブペイントでCGを制作する等),cube for Windowsの基本操作(キューブペイントでシンメトリーなCGの制作作業に必要な基本操作 等)

 コンピュータの基本操作を学習した後,サーバ内の「足利市立第三中学校の生徒CG作品」と,リンク集にCG作品のあるページに,直接リンクを貼ったページに自由にアクセスさせた。これから自分の制作するCG作品の参考にさせた。
 平成10年10月24日〜25日に行われた愛宕台中の文化祭の時,2,3年生全員の作品を校内のサーバに保存し,生徒氏名をクリックすると作品を表示するHTMLファイルを作り,コンピュータ室からアクセスできるようにして,文化祭に来た人に見てもらった。と,同時に,CG作品をプリントアウトして,黒,青,緑の3色の台紙を用意し,制作した生徒に自分で選んだ色の台紙に貼らせ,美術室に,その他の作品と一緒に展示した。
 「愛宕台中の2,3年生全員のCG作品を校内のサーバに保存し,文化祭で公開している。」と,説明したところ,「1年生の作品は無いのですか?」と,言われた。そこで,技術・家庭科の教室に展示してある,1年生全員のマガジンラックをビデオカメラで撮影し,その映像をビデオキャプチャーボードでコンピュータに取り込み,後日,愛宕台中のホームページで公開することを約束した。
 10月24日,25日に愛宕台中で行われた文化祭で校内のサーバーで公開したファイルを,ホームページに公開する作業を始める。学校長と教育委員会の前川先生と相談して,制作した生徒氏名のフルネームでなく,作品と名字のみを公開することにした。生徒が美術の時間に制作した作品「シンメトリーなコンピュータグラフィックス」を10月29日に,愛宕台中のホームページに公開した。
  http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/kyouiku/atagodai/CG98/Cg98.htm

H10.11.15(日)
 愛宕台中のホームページに公開した生徒のCG作品に対する,生徒宛のメールが届く。
 良い作品を制作した生徒に対するコメントの後に次のアドバイスをしてもらった。
 最後にアドバイスをひとつ。この授業では人間や動物の顔がそうであるような「シンメトリー」−左右対称という基本的な構成要素を学習しているのですが,さらに植物や宇宙の星々など広く目を向けてみてください。そうするとだんだんと枝分かれしていく樹木の構成の不思議さ,植物のつるや銀河の渦巻きの構造や,ほかにも自然の不思議な造形に驚くことがあるでしょう。これから機会があったらそれらを生かして制作に取り組んでみましょう。
 みなさんの作品と出会えたことが私にとってもおおきなプラスになりました。これからも野田先生のご指導のもといろいろなことに取り組んでみましょう。ありがとうございました。宇都宮大学教育学部研究生 日下田 英彦 E-mail higesan@olive.ocn.ne.jp
 日下田先生と連絡を取る。先生から送っていただいたEメールを,原文のまま,ホームページに公開する事,Eメールの一部に手を加えたものも公開する(どの作品に対するコメントか分かるように手を加える)ことを了解してもらった。
 生徒に原文のままのEメールと,一部に手を加えたEメールを見せる。このEメールは,日下田先生の了解が得られたので,愛宕台中のホームページに公開し,校内のサーバにも保存した。

H10.11.16(月)
 1年生全員のマガジンラックのjpgファイルをインターネットのホームページに公開。
 久野小のF先生と,筑波小のY先生にEメールで、生徒作品を公開したことを、伝える。

H10.11.26(木)
 小学校5,6年で現在の愛宕台中2年の担任だった久野小のF先生よりEメールが届く。
久野小の時の担任の生徒だけでなく,2年生全員にコメントを書いてくれた。

H10.11.27(金)
 F先生に用事があったので,久野小にいきメールのお礼を言った。
 メールをホームページに載せる(全文をそのまま載せることと,一部手を加える)ことの了解を得た。(後日,日下田先生のメールと同じように加工し公開予定。)
 この,メールは印刷して,愛宕台中の教職員に回覧し,2年生に配布した。また,2学期に行われた第2学年部会の時にも,生徒の活動の様子や,文化祭の時の様子を話し,印刷して保護者にも配布した。
**文化祭後の3年生のCG指導実践**
    美術 週1時間
    技術 男子 週3時間
       女子 文化祭後 週1時間

美術の授業
 文化祭後の最初の美術の授業で,友達の作品を鑑賞させる。
 自分の作品の題名,コメント,友達の作品に対するコメントをキューブワードで書かせる。
 日下田先生よりメールが届く。
 生徒に原文のままのEメールと,一部に手を加えたEメールを見せる。
 日下田先生のメールを参考に,友達の作品のコメントをキューブワードで書く。
 「作品の題名があったほうがよい。」というメールをもらう。
 メールを紹介し,作業を続けさせる。
 5人以上,友達の作品にコメントが書けた生徒は,2作目の制作に取りかからせる。
 2作目は,最初に題名,テーマを考えさせて,そのテーマに合うようなコンピュータグラフィクスを制作させる。完成した順に,ホームページに公開する予定である。

(3) 情報基礎
 CG作品を自由に(美術の時間のようにシンメトリーという指定なしに)キューブーペイントで制作し,キューブワードでタイトルを作り,背景色を自分で指定し,HTMLファイルにする。
 情報基礎時間に制作した男子全員のCG作品をH10年12月18日に,ホームページに公開。   http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/kyouiku/atagodai/H10g3nen/Index.htm
 キューブワードで,B5縦に中学校生活の中から,修学旅行,合唱コンクール,体験入学,文化祭,生徒会活動,部活動,等の文章をかき,その文章の中に,キューブペイントで作ったCGをコピーして印刷し,文集を作らせる。
 生徒会長が12月22日に,いじめ0生活と僕らの6生活宣言のページを完成させる。
 12月24日の朝,学校長に生徒の作ったページを見てもらってから,愛宕台中のホームページに公開する。
いじめ0生活   http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/kyouiku/atagodai/Seitokai/0Ijime.htm
僕らの6生活宣言 http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/kyouiku/atagodai/Seitokai/6life.htm
 いじめ0生活,僕らの6生活宣言をホームページに公開後,愛宕台の伝言板に書き込みがあった。

(4) 今後の予定
 学校生活の中で,自分でテーマを見つけ,HTMLファイルを作る。
 授業で作ったファイルは,学校のホームページで,公開する。

4 実践を通して

 平成10年11月に文部省が「新学習指導要領」を発表し,総合的な学習の時間が新設された。文部省のページにアクセスし,新学習指導要領をプリントアウトして,職員室で回覧した。このことを通して,愛宕台中の教職員にもインターネットの利点の一つを紹介することができた。
 年度の途中で発表になった,総合的な学習の時間の指導の研究を,愛宕台中も開始した。インターネットで検索したページの中に,2教科以上の合科による実践例があった。それらのページを参考にしながら,愛宕台中において,総合的な学習の時間におけるインターネットの活用の実践を試みた。
 3学期は,3年の情報基礎,美術,2年の技術・家庭科,美術,選択技術,1年の技術・家庭科の授業でHTMLファイルを作り,公開する予定である。また,コンピュータ部の生徒は,自主的にHTMLファイルや,Midiファィルを作り,公開している。
 情報基礎の授業で,コンピュータでやってみたいことを自由に書かせた。インターネットにアクセスする授業を行っていない時は,「コンピュータでゲームをやりたい。」と,答える生徒が多かった。しかし,今年はインターネットに関する事を,コンピュータを使ってやりたいと答える生徒が多かった。なかには「選択技術で学習した内容の,発展学習(選択授業で学習した内容より,複雑なホームページの作り方)を,情報基礎の時間に学習したい。」と答えた生徒もいる。生徒にとってインターネットにアクセスするということは,コンピュータゲームのようにおもしろい,いや,それ以上におもしろく,魅力のあるものであることが推測される。

ワンポイント・アドバイス
 総合的な学習の時間におけるインターネット活用実践を試みて,多くの人たちと知り合うことができた。その一部を紹介すると,生徒に久野小のF先生の掲示板(BBS)に書き込みを行わせた。F先生を通して,千葉県のPIKACHU先生,PIKACHU先生を通して,秋田県の教頭先生,さらにアメリカの中学2年生の母親のaki3 さんと,交流の輪がひろがっていった。さらに,チャットで,スペイン,ハワイ,イギリスに住む日本の人たちと交流することができた。
 そのことを,ある中学校の先生に話し,その中学校のホームページにも掲示板(BBS)を作り,愛宕台中と掲示板による交流の提案をした。しかし,その学校では,いたずらで書き込まれる心配があるために,掲示板は作っていないそうだ。
 学校の実態にもよるが,掲示板が可能な環境の場合,生徒に,メールではなくても交流ができることを体験させられる

参考にしたURL
足利市立愛宕台中学校ホームページ  http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/kyouiku/atagodai/
筑波小学校  http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/kyouiku/tsukuba/menu/menu.htm
香川大学教育学部附属坂出中学校  http://133.92.58.28/center/secondary/sakachu/
東京都江戸川区立葛西第二中学校  http://www.asahi-net.or.jp/~sk4t-skmt/index.htm
静岡県小笠郡菊川町立菊川東中学校  http://www1a.meshnet.or.jp/~kikuto/index.htm
石川県立小松明峰高等学校  http://www.nsknet.or.jp/kmhs/
宮崎県立延岡商業高等学校  http://www.nobeoka-chs.nobeoka.miyazaki.jp/
久野小学校F先生のホームページ  http://www.sunfield.ne.jp/~spring
PIKACHUさんのホームページ  http://members.aol.com/pippikachu/pikachu_diary/pikatop.htm
aki3さんのホームページ  http://www.aki3.com/
秋田県の教頭先生のホームページ  http://www2.justnet.ne.jp/~assoonas/WELCOME.HTM