ホームページの作成
高等学校(農業系)第3学年・課題研究
群馬県立勢多農林高等学校 中沢 公司

インターネット利用の意図
 農業経済科3年の「課題研究」の授業は,生徒の要望に応じて情報処理班・農業経済班・農業会計班に分かれて,実施されている。この内の情報処理班は,生徒それぞれのホームページの作成に取り組むことになった。早速,生徒のホームページを発信している長野県岡谷工業高校のホームページを参考にして,それぞれの生徒の自由な発想で,各自が世界に向けて情報発信したい内容を考え,ホームページを作成することになった。
 世界に向けて自分をアピールするホームページを作成することで,改めて自分を考える機会を提供し,またこのことで作成に必要な知識・技術を身につけるといった,自発的で自然な学習をインターネットを利用することで実現することを目標にした。 

 
1 単元 課題研究(ホームページ作成)
 
(1) ねらい
   自分のホームページを作成し情報発信することが,ホームページ作成のための基礎  知識を自然に,なおかつ確実に身につけるために有効と考えられるので、生徒と話し合いをしながら、実施することにした。
 
(2) 指導目標
 @ホームページの作成には,HTMLの文法を理解しなくても,作成できる便利なソフトが数多くあるが,基礎知識を身につけるために,HTMLの基礎的な文法を理解させる。
 Aホームページ作成に必要なデジタルカメラの使用方法及び画像処理ソフトの使用方法を理解させる。
 B意欲的な生徒を対象にJava Scriptの文法を理解させる。
 
(3) 利用環境
 @使用機種
 生徒機 NEC PC-9821Ra266  42台
(CPU:PentiumU266MHz,RAM:64MB,HDD:2.0GB)
 A周辺機器
    
・モニタ 10台
・液晶プロジェクタ 1台
・スキャナ 12台
・フィルムスキャナ 2台
・デジタルカメラ 7台
・MO 2台
    
 B稼働環境
  
・WWW兼メールサーバ 1台
・Proxyサーバ 1台
       
            
 Cその他の利用ソフト
  ・Netscape Navigator
  ・Adobe Photoshop
  ・一太郎8
 
2 指導計画
 
指 導 計 画
留 意 点
(1)HTMLの文法
 ・<HTML><HEAD><BODY><HR>
 ・<IMG SRC>
 ・<A HREF>
 ・<CENTER>
 ・<TABLE>
・教師が説明しながら,一太郎で基本的な
 ホームページを作成し,生徒はモニタを見ながらHTMLの使い方を学習する。
・共通フォルダに事前に入れた,本校の実験動物の写真の画像を利用し,<IMG SRC>を使った,画像の表示方法を,同様に
 生徒はモニタを見ながら学習する。
・<CENTER>や<TABLE>を使った,水平方向の文字や画像の配置方法をモニタを使って学習する。
(2)Adobe Photoshopによる文字(ロゴ)作成
 ・ドロップシャドウ
 ・浮き彫り文字
 ・アクリル文字
 ・夜光文字
 ・反射文字
 ・ネオン文字など
・基本的ないくつかのグラフィック文字の作成方法を,モニタを使って学習する。
 
(3)スキャナ・デジタルカメラの使い方及び
  画像処理
 ・スキャナでの写真の読みとり
 ・写真の画像処理
 ・デジタルカメラの撮影と画像の読みとり
 
・生徒の要求に応じて,随時デジタルカメラの使い方を説明し,生徒に使わせる。
 このとき,同時に数人の生徒を集め,お互いに手助けできるようにする。
・GIFとJPEGでの保存の違いについて説明し,基本的にはJPEGで保存するように指導する。
・解像度と表示時間について説明し,各自の解像度を設定させる。
・画像処理では,明度とコントラストなどの調整方法ができるようにする。
(4)Java Scriptの文法
 ・オブジェクトについて
 ・メソッドについて
 ・プロパティについて
・オブジェクト指向プログラミングの概念を理解させ,オブジェクトの生成は,変数にオブジェクトの先頭アドレスを代入することであることを理解させる。
・主なメソッドとプロパティの使い方を理解させる。
(5)ホームページの登録
 ・FTPによるホームページの発信


・TCP/IPの設定方法を含んだインターネットの接続方法について説明し,理解させる。
・Next FTPの設定方法及びこれを使ったホームページの転送・更新方法を説明し,自分で利用できるようにする。
(6)課題研究のまとめ
 ・課題研究集録の原稿作成
・学校指定の様式に従って,要旨,はじめに,研究の内容,まとめの順に作成する。
・研究の内容では,生徒のホームページを載せ,これについての説明を付ける。
 
3 利用場面
 
(1) 目標
  ホームページ作成の基本的知識・技術を身につけた上で,各自の創意工夫による自分のホームページを作成し,発信する。
 
(2) 展開
学習活動・内容 活動への働きかけ
1 ネットサーフィン ・Netscape Navigatorの使用方法を教える。
2 検索エンジンの利用

・YAHOO! Japanの使い方の指導をする。
・群馬県,岡谷工業高校,環境,インターネット放送局,チャットの体験をする。
3 ネチケットについて

 
・インターネット上のエチケットについて,問題点を整理し,個人名と個人の写真については,本人の了解を得ないと発信できないこと。そして,他人を非難したホームページを作成しないことを確認した。
4 HTMLの使い方について

 
・本校の実験動物であるゴールデンレトリバーを事前にデジタルカメラで撮影し,ホームページの共通フォルダに入れておき,これを活用しながら,教師用のコンピュータで,一太郎を使ってホームページを作成し,生徒はモニタで見ながら,同様にホームページを作成する中で,基本的なHTMLの文法を覚え,自分のホームページを作成できる能力を身につけるようにした。
5 Adobe Photoshopによる文字作成
 
・生徒が自分のホームページで利用したくなると予想されるグラフィック文字を8種類,教師用のコンピュータで作成し,生徒はモニタを見ながら,自分のコンピュータで作成し,基本的な知識・技術を身に付けた。
6 スキャナ・デジタルカメラの使い方及び画像処理
 
・必要に応じて,数名の生徒を集め,使用方法を説明し,明度・彩度・コントラスト及び解像度の調整ができるように指導した。
7 FTPの使い方 ・ホームページが完成した生徒から順番に,同様の生徒数名を集めてFTPの設定を説明し,登録した。
 自分でインターネットを始めようとしている生徒に対しては,TCP/IPを含む接続の設定方法の説明を実施した。
8 課題研究のまとめ ・生徒の最初のページをコピーでクリップボードに貼り付け,Adobe Photoshopを使って周辺を切り取ったものを,一太郎に貼り付け,その下に生徒の感想を入力させた。
 
(3) 生徒の感想
  A君
   ページ内容:本人が回った心霊スポットの紹介や,地元の心霊スポットの噂話など作者自身が実際に調査した,地元では有名な心霊スポットなどを紹介するページです。
   心霊スポットの場所,行ってみての感想,体験などが書いてあります。
   今後,写真なども載せる予定です。
  B君
   このホームページは,力作に力作を加えたはずのホームページです。ちょっと失敗したが,おれらしいホームページが完成しました。おれの描いた絵すごいでしょ!苦労しました。このHomepageでおれのすべてを表現できないけれど初めての体験だから納得はいかないけどこんなもんかな!
  C君
   学校の授業のために作ったホームページです。内容はまだガラガラです。
   ちょっとだけJavaScriptを使っています。メニューにカーソルを合わせるとメニューが点滅したり,モザイクがかかったりします。
   他に「http://www3.justnet.ne.jp/~suzukike」に「スズキエンタープライゼス」のホームページがあります。
  D君
   人間関係の中において,自己アピールの存在理由には非常に大きいものがある。これからは世界的にも,国際化の流れはとても大きいものがあり,その中でも,インターネットが,第一歩ではないかと思う。
   我々経済科3年は,それぞれの存在をインターネットにより世界に飛ばし,国内だけに留まらず世界に視野を広げ,世界規模での自分の存在価値を認識できるのではないだろうか?。そうしたことにより世界のあらゆることに敏感になり,柔軟な思想と行動力が養えると思う。
   インターネット利用の最大の目的は「楽しむ」ということにあり,楽しみながらインターネットを利用していきたいと思う。
 
4 実践を終えて
 
 本校にインターネットが導入されて3年目になり,また今年度からコンピュータが更新され,インターネットを導入した学習を沢山の生徒が行うことができるようになった。
 昨年度一部の生徒のみで実施していたホームページの作成を,今年度は課題研究の情報処理班のおよそ20人の生徒が行った。
 課題研究は,生徒の自主性を重んじた授業であるために,ホームページ作成のための基本的なHTMLの文法やAdobe Photoshopの使い方以外は,生徒の必要に応じて数人ずつ集めて説明し,生徒同士が助け合いながら,ホームページを作成するようにした。
 自分の発信したい内容のホームページを,自由に作ろうということで作成に入ったが,自分の考えをまとめることに時間のかかる生徒が多かった。
 世界に向けて,自分の名前を出して情報を発信するといった,初めての経験に対して,始めは冗談半分にとらえていた生徒も,時間の経過とともに真剣に取り組むようになった。
 内容的に問題があったり、技術的にも未熟ではあるが、学習活動に無理がなく,自然に基本的な知識・技術が身に付くといった点において,生徒の自分のホームページの作成は,有効である。それは,生徒の感想を見れば分かることだが,生き生きとした感想が多数寄せられている。
 今後の課題として,自分の発信したい内容を決めるのに,時間がかかりすぎる生徒への対策,また取り組むテーマによって,調査に重点を置く生徒,グラフィックの作成やJava Scriptなどの技術に重点を置く生徒とに分かれるので,これに対する職員側のレベルアップや分業の必要性がある。
 
ワンポイント・アドバイス
 インターネットを利用し,ホームページを作成する上で,教師側に求められているものは,生徒の要求に応えられるための技術的なレベルアップであり,このことに多大な時間が費やされるが,同時にインターネットを楽しむ余裕もまた必要である。
 生徒のテーマ設定と同時に,教師も自由にテーマを設定し,ホームページを作成し楽しむ。といった取り組みが「課題研究」には合っているように考える。努力する中で,本当に教師が楽しく取り組むことができれば,生徒も自然と本気で取り組むと考えるが,これができるのが課題研究であり,今後はこの方向を目指したい。
 
参考文献       Photoshop4.0ロゴ・コレクション(工学社)他
利用したURL    http://www.valley.or.jp/okako/ 他