母国語を学び会おう

高等学校 第2学年 「英語実務」(商業)

名古屋市立西陵商業高校 影戸 誠  寺西 寿雄


インターネット利用の意図
 インターネットが「珍しいもの」ではなく,どの学校でも活用していく段階となった。
 昨年末までの文部省方針は「2003年までにすべての学校にインターネットを導入する事」であった。しかし1999年1月にはさらにこれを前倒しをして,2001年までに設置するとの方針を打ち出した。
 このような状況において,クラブ的なものより,「総合的な学習」「情報」の授業として,近い将来すべての学校で展開されることに備えたいと考えた。
 授業での活用,国際交流,異文化理解,音声動画の活用,新しいWebの機能の開発,これらをキーワードとして,この企画を考えた。

 
1 日本―韓国共同遠隔授業
(1) ねらい
 ・英語を共通語として,韓国語,日本語をインターネットを活用し相互に学習する。また授業で定期的に行うことにより,交流を深める。
 ・両国の生徒にとって英語の活用はやや難があるので,教師が展開の主導権を握り,ディスタンス・エデュケーションの実験としても位置づける。
 ・会話パターンを決め,交流に必要な両国の基本会話を修得させる。
 ・Webコラボレーションなどの新しい機能に挑戦し,これから展開されるであろう共同授業に適したインターネット機能を探る。
 ・画像データは大きな助けとなるためWeb上の画像を作成する。
 ・CU-SeeMeだけでなく音声と動画を使ったソフトを活用し,日常的に「音」に接することの出来る環境をつくる。
 ・日本側も相手校のインターネット活用を支えるようなサポートを積極的におこなう。(現地訪問図1参照,機器のサポート,ソウルでの共同事例発表会参加図2参照)
 
(2) 指導目標
 ・一時間の授業を日本,韓国の教師が指導する事によって,共通言語が英語であることを肌で感じさせる。
 ・授業の中に定期的に組み込むことにより,意識の中に常に「韓国」を置くよう指導する。
 ・相手校教師,生徒の本校訪問時には,積極的に韓国語・英語を使わせるようにする。
(3) 事前指導
 自前アンケート「これから旅行したい国」によると韓国の人気はあまりなく,ハワイ,アメリカ,北欧に比べその数値は低いものであった。さらにどちらかというと行きたくない国という数値が出た。
 昨年の3年生もこのような傾向を持ったが,貿易実践の取り組みを韓国と行うことにより,そのイメージは大きく変わった。
 授業の展開の中でイメージが変わっていくものと予想した。また国際化副読本を活用し,文化面,経済面,歴史の概要を把握させた。
 授業がスムーズに展開できるよう,教室内でCU-SeeMeの扱いなどの練習もおこなった。
 
2 指導計画

活動計画 活動内容
5月 教師による事前テスト

★CU-SeeMeをスムーズに行うためのテスト


6回実施
★CU-SeeMeのテスト
 提示したテキストが読めるか
 音声だけを活用する場面の検討
 画像クオリティーの適正値
 送信・受信パケットの適正値の検討
 パケットの通りやすい曜日の検討
5月 第1回授業
 
★英語での自己紹介,学校生活についての質問,
 生徒間交流
6月 第2回授業
 
★「韓国語でなんていうの?」
 挨拶,自己紹介
6月 第3回授業
 
★「日本語でなんていうの?」
 挨拶,自己紹介
7月15日 ソウルにて共同発表
図1参照
国際会議(ソウル)に日韓担当教諭
共同発表 100校プロジェクトの我々の取り組み
7月〜8月
★日韓教師によるWebコラボレーションの
 検討
 
★日本語のテキストなど読めないため
 Web上に画像をおき,基本単語を相手に提示。
 韓国側はWeb上への掲載が難しかったため,
 ファックスで日本側に送信
9月 ★Webを使った授業 4回目

 
日本側生徒が担当の単語を相手に説明
セッション開始までは英語で会話
メーリングリストも同時利用
9月 ★音声・静止画ファイルの制作送信 音声と静止画を入れたファイルを相互に送り合った。
10月学校祭シーズン ★電子メールによる交流継続
11月19日 交流会 韓国側教師,生徒が本校を訪問。交流会を行う。
12月 ★韓国側音声ファイルの制作
図3参照
基本会話ファイルの制作
 
12月〜1月
プレゼンテーションファイルの制作
★送信
グループごとにプレゼンテーションファイルを制作
英語,(挨拶,自己紹介部分韓国語)
 

3 利用場面
(1) CU-SeeMe,Netscape,画像音声ファイルを使ったレッスン
 使用機器 CU-SeeMe ver3.1 韓国側リフレクター Windows95
 画像転送装置,音声転送装置 With voice Multi
(2) レッスン内容
 (例1)韓国側から日本側生徒への指導
 ・英語で今日のレッスンの内容説明
  英語でジョン先生が韓国語会話内容を説明する。さらに発音の仕方など説明。
  生徒には電子メールで送られた教材が事前に配ってある。
 ・発音練習
  ジョン先生がプリントにしたがって発音する。生徒はそれを繰り返し,ジョン先生が評価。代表 生徒が一対一で発音,ジョン先生の評価を受ける。
 ・生徒間会話練習
  韓国語学習の後,同じフレーズを使って日韓の生徒で英語を使ったフリートーキング。(図4参照)その後韓国語での会話練習に入る。
 「高校生は英語ではHigh school studentですが,韓国語ではなんと言いますか?」(韓国語で質問)
  いくつかのパターンを練習する。
 ・ホームワーク
  授業終了後,音声・静止画ファイルを韓国語で作成し韓国側に送信する。そのファイルの対して,ジョン先生から評価の電子メールが来る。(図5参照)
 (例2)日本から韓国へ (日本側教師の指導)
 日本側 CU-SeeMeで簡単な挨拶の後(英語),Netscape Conference 機能を活用した。
  この機能は,韓国側画面をコントロールできるものであり,説明にしたがって,必要な画面を相手プロジェクターに映し出した。CU-SeeMeの音声あいるはCooltalk機能を直前のテストで,聞き易 い方を選択して行った。

 Conference機能

 

   

 Web画面にはこれは基本単語が絵付きでJPEGファイルで貼り付けてあり,これらをスクロールしながら授業を展開する。図5 図6参照

 CU-SeeMeの音声からは相手生徒の発音が聞こえてくる。

 日本側教師「私は韓国の高校生です。」の言葉に韓国生徒はこれを繰り返す。

 その音声に対し,評価を与える。

 
 図1 現地のサポート  図2 ソウルでともに発表
図3 韓国側の生徒が作った
音声ファイル
図4 ゴミの分別もテーマに
(韓国側から送られてきた画像)

            

  
図5 プリントに従って学習  図6 Web上の画像




4 実践を終えて

(1) 生徒の声

 ・私は他の国の言葉が知りたかったので,韓国語を教えてもらったときうれしかったです。それもネイティブ!少しの言葉だったけど,韓国語ってすごいなと思いました。韓国の人は英語はとても上手だったので,すごい勉強をしているのだと思いました。

 ・日本人の私が,英語を勉強するように,韓国の高校でも英語の他に日本語を勉強しているなんて,全然思っても見ませんでした。そうやって日本語を勉強していることを見ると,日本人として何かうれしく感じるものが在りました。

 ・韓国の高校生とCU-SeeMeではなして,日本の高校生と同じ様なことを考えていて,そういうことがわかるとうれしいです。

(2) 共同学習として

  生徒によい刺激をあたえ,新しい授業を創造したい,そんな願いをジョン先生と私は持っている。これらは何回か会う内にお互いに確認し合ったことである。

  回線のスピード,相手のインターネット技術レベル,確かにこれらをクリアーしなくてはならないが,何よりも大切なのは基本的な考え方であろう。学校教育という非常に人間くさい領域のなかで,継続的に粘り強く取り組むには最後は哲学の一致であろう。

  共同学習という設定でこのプロジェクトを展開して来たが,やはり授業として時間を設定する事が肝心である。

  土曜日2限に設定したことで,生徒もこの日を楽しみにする様になった。

(3) 回線・機器の活用

  今回は昨年11月より,本校の回線が64k専用線から128k光ファイバー(月額45,000円)になったことからCU-SeeMeがよりスムーズに使える様になった。

  これまで,音声がうまく届かない,見せたい画像がうまく表示されないという問題が5月から11月までの授業にはあったが,11月からはスムースに行えるようになった。

  ダイアルアップででは無理な企画であり,CECのサポートは大変助かった。

  今回使用した,Netscape Conference機能は無料で配布されているVer.4に添付されているものであり,その利用価値は高いと思われる。

  また,静止画・音声送信ソフトは扱いも簡単であり,英語版もあるので国際交流には適したソフトといえる。

  これまでRealAudioなどの動画ソフトを使い国際交流に活用してきたが,生徒作品が作るにはいくつもの技術指導が必要であった。また画像と英語,韓国語の吹き込みはリアルタイムで行われるため,緊張感から来る失敗が多く,時間がかかってしまった。

  その点,静止画であり,さらに音声部分だけを何回も入れ直すことのできる今回利用のソフトは生徒作品作りには適している。

(4) 2000年代の授業

  現在「総合的な学習」「情報」などに向けて,ネットワークを活用した授業研究が行われているが,ネットワークの広がりは国内での共同授業から生徒の興味関心の高い海外へとすぐに発展していくものと考えられる。

  今回の国際共同授業をさらに発展させ,モデルケースとしてさらに発展させていきたい。

ワンポイント・アドバイス

・定期刊行物を取ろう
 今回のアイデアはインターネットマガジンなどに紹介してあったネットスケープの一機能を使ってみた。情報収集が豊かな授業を作り出す。
・国際会議に参加しよう
 ジョン氏と一昨年の大阪の国際会議で出会ったから交流を始めた。ネットワーク関連の会議は多くの人との出会いを可能にする。電子メールで交流をしながら,お互いの考え,方向性を確 認し,それからプロジェクトを興すのが近道といえる。
・多くの失敗をしよう
 自己紹介だけで終わる苦い国際交流をいくつか体験してきた。これらの体験が「継続的なプロジェクト」とへの踏み台となっている。
・相手校教師との人間関係を育てよう
 昨年だけでも6回会っている。韓国は近く東京までの旅費と変わらない。時間をみて可能な限り相手に会い,話合うことが必要である。
・不参加生徒をなくそう
 CU-SeeMeを使った発音練習など,画面の前にいない生徒にはリピテーションさせるなどして,授業内の緊張を維持できる工夫が大切である。事前に教材を配布しておき,書き込みなど,学習保証を行うべきである。
 

 
関連URL
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