国語だってインターネット!
日常授業におけるインターネットの活用促進

小学校第2学年・国語科と生活科の合科
札幌市立幌南小学校 藤村 裕一


インターネット利用の意図

 2年生の国語の学習に「せかいのあいさつ」という題材がある。本校では,これまでこの単元と生活科の「Let' go ! 雪まつり」を合科的に取り扱って実践してきた。今年度は,インターネットを使うことにより,「せかいのあいさつ」の学習の幅を広げたり,雪まつりの公式ホームページや会場のライブカメラを使って雪まつりの様子を調べたりすることができるようにした。


1 せかいのあいさつ・Let's go ! 雪まつり

(1) ねらい

 『せかいのあいさつ』を読み,生活の中にある身振りや言葉に関心をもって,読みとりを進めることができる。また,発展としてさらにさまざまな国のあいさつを調べ,海外からの観光客がたくさん来る雪まつりで,実際に使ってコミュニケーションすることができる。

(2) 指導目標

インターネットを使って交流する中から,暖かい土地のくらしと寒い土地のくらしの特色に問題意識をもち,自ら生活の場で調査活動をしてわかったことを写真などを交えてわかりやすく表現し,電子メールやホームページを使って交流しながら,その特徴と背景にある工夫や努力について考えることができる。

(3) 利用場面

  インターネットを利用する場面として,以下のような場で活用できるようにした。

 (1)各教室に引かれたテレビのアンテナ線を利用した校内LANシステムDigital Wayと本 校の小学生用教科・領域別リンク集『こうなんワンダーランド』の国語リンク集を用い て,教科書に載っていない世界のあいさつについても調べる。

 (2)あいさつを調べた国の位置や国旗について,図書館の本の他,インターネットのホームページを使って調べる。

 (3)雪まつりでサインしてもらった海外からの観光客の国の位置や国旗,あいさつをインターネットなどで調べる。

 (4)雪まつり会場に現地集合したり,見学計画を練ったりするために,雪まつりの公式ホームページを使って調べる。

 (5)「Let's go ! 雪まつり」のまとめをする際に,雪まつり会場の多数のライブカメラから必要なものを選んで疑似再見学をしたり,障害者とコミュニケーションをもった子が手話のホームページを使って学習したりする。

(4) 利用環境

 (1)使用機器 NEC Canbe jam(ポータブルパソコン) 3台

 (2)周辺機器 特になし

 (3)稼働環境 インターネット専用線64kbpsとテレビのアンテナ線を用いた校内LANを

        用いて,各教室でインターネットを日常的に利用できるようにしてある。

 (4)その他の利用ソフト

     本校ホームページの中の小学生用教科・領域別リンク集『こうなんワンダーランド』や,本校ホームページの「雪まつり特集コーナー」を調査活動のために用いた。

 

2 指導計画

指導計画(19時間) 留意点
(1)〜(4)国語の教科書にある教材文『せかいのあいさつ』から,世界にはいろいろなあいさつの仕 方や身振りがあることを読みとる。 ・教材文の読み取りから,世界のあいさつに興味をもち,教材文に載っていない世界各国のあいさつにも興味が広がるようにする。 
(5)『こうなんワンダーランド』の国語リンク集を使ったり,サーチエンジンの「goo」を使ったりして,世界の様々なあいさつについて調べる。
★インターネットの利用
★『こうなんワンダーランド』以外の情報も「goo」
 を使えば調べられることを伝え,キーワードの入力は,子どもと相談しながら教師が補助して行う。
 
(6)〜(8)インターネットを使って調べた「せかいのあいさつ」を紹 介し合ったり,その国の位置や 国旗について交流したりする。
★インターネットの利用 
★新たに発見した「あいさつ」を使っている国の位置や国旗などを,図書館の本やインターネットのホームページを使って調べるようにする。
・世界のあいさつを実際に使ってみたいという子どもの声を,雪まつり見学の際に海外からの観光客と話したり世界地図にサインしてもらったりすることにつなげていく。
(9)〜(12)雪まつり見学の計画を立てる。
★インターネットの利用
 
★雪まつりの見学計画を,雪まつり公式ホームページや地図などを使って調べるようにする。
・雪まつり会場までの行き方,地下鉄の利用の仕方を調べるようにする。
・見学時のグループを決めるようにする。
・会場見取り図をプリントアウトして,会場内での活動計画を立てる。(各自カメラも用意)
・集合時刻や活動時間の配分に当たっては,算数科「時こくと時間」と関連づけて扱う。
・海外からの観光客にどこの国から来たのか書き込んで教えてもらうための世界地図を子どもに渡す。
・自己紹介のための名刺(英語バージョン)を作成するようにする。
・あいさつからサインの依頼までの英語を練習する場を設定する。
・どこの国から来たか教えてもらったあと,
 そこの国の言葉であいさつする練習をする場を設定する。
(13)〜(16)雪まつり会場に行って見学したり,海外からの観光客と交流したりする。
 
・自宅から地下鉄を利用して雪まつり会場に集合するようにする。
・雪像を見学し,写真を撮るなどする。
・海外からの観光客に英語で話しかけ,世界地図で自分の国を教えてもらい,その国の文字でサインしてもらう。
・相手の国のあいさつを知っていたら,その国の言葉,身振りであいさつする。
(17)〜(19)自分が選んだ方法で表現し,雪まつり見学の時の様子を発表・交流する。
★インターネットの利用
 
・劇,カルタ,すごろく,紙芝居など様々な方法で発表・交流できるようにする。
★記憶があやふやなところを,雪まつり公式ホームページで調べたり,雪まつり会場内に多数設置されたインターネット・ライブカメラから最適なものを選んで疑似再見学したりして調べることができるようにする。
★会場内で障害者とコミニュケーションをもち,手話や点字に興味を持った子が,関連ホームページで調べることができるようにする。

 
3 利用場面
(1) 目標
  本校の教科・領域別リンク集『こうなんワンダーランド』や「goo」などのサーチエ ンジンを用いて,世界のあいさつやその国の位置,国旗などについて調べ,様々なあい さつや外国への興味・関心を広げる。
(2) 展開

学 習 活 動 活動への働きかけ 備 考
1 国語の教科書の『せかいのあいさつ』を読みとって,おもしろかったこと,もっと知りたくなったことについて話し合い,学習問題を設定する。  ・教科書に出ていたあいさつを動作化する場を設定する。
・国によって,言葉や身振りが大きく違うことに着目できるようにする。





 
ほかにどんな国のどんなあいさつがあるんだろう?  ・テレビのアンテナ線を使って各教室にインターネットを接続した校内LANの教室内HUBにポータブルパソコンを接続して利用する。
2 『こうなんワンダーランド』や「goo」を使って,教科書に載っていない国のあいさつについて調べる。



3 発見した世界の様々なあいさつを言ったり,動作化したりして発表する。              

4 あいさつを見つけた国の位置や国旗などをインターネットや本などで調べる。
・学習や遊びで日常的に使っている『こうなんワンダーランド』の中に世界のあいさつへのリンクがあることを知っている子どもの発言や,「goo」の使い方を知っているこの発 言を取り上げ,全体に広げる。
・子どもがあいさつを発表した国がどこにあって,どんな国旗の国なのかを問いかけ,その国に対する興味が広がるようにする。
・国の俗称と地図に出ている正式名称が異なる場合は,教師が補説する。
5 雪まつり見学で,実際に海外からの観光客に会ったときにしてみたいことを発表し合う。  ・国語科「せいかのあいさつ」の成果を生活科「Let's go ! 雪まつり」で生かしていけるように,意欲を高める。  

 
4 実践を終えて
 昨年度まで,本校では,職員室1台と図書室2台の端末でしかインターネットを利用することしかできなかった。この環境下では,少ない端末をいかに授業の中で生かすかという発想の研究しかできなかった。
 しかし,今年度テレビのアンテナ線を使った校内LANシステム(Digital Way)を用いて全教室をインターネットに接続することにより,その状況が劇的に変わった。これまで,「わざわざ」図書室や職員室に行かなければインターネットを使うことができなかったのが,ポータブルパソコンを教室に持っていってLANに接続すれば,いつでも自分の教室でインターネットを利用できるようになった。その結果,日常の授業の中でインターネットを利用することが飛躍的に増え,インターネットを授業の中で活用してみようという教師も増えていったのである。今や,ポータブルパソコンが足りなくて,困っている状況でさえある。
 さて,このように各教室でインターネットが利用できるようハード面の環境が整備されたが,各担任や子どもたちからすぐに注文されたのが,「ブラウザを立ち上げたら,すぐに『こうなんワンダーランド』が出てくるようにして!」ということであった。本事例の学級の子どもたちも,まさにそのことを真っ先に要望してきた。つまり,日常の授業の中でインターネットを使おうと思っても,自力で授業に使えるサイトを探し出すのは大変なので,そのようなサイトにあらかじめリンクを張ってある教科・領域別リンク集を使いたいということである。
 しばらく日常授業におけるインターネット活用を進めてきて,「これからは教科・領域別というだけでなく,学年別・単元別にまで整理したリンク集がほしい」との要望があがってきている。そのため,その準備作業は進めているものの,完成までにはさらに多くの時間と人手が必要になると思われる。そこで,CECなどどこかの団体やグループが中心になって,そのようなリンク集を共同作業のもとで作成するという方法も考えられるのではないだろうか。
 

写真1 こうなんワンダーランドの表紙

 

  

  写真2 国語リンク集のページ

 今後,すべての学校がインターネットの接続されるなど,ハード面の環境整備が進めば進むほど,上記のようなソフト面での環境整備が必要になると思われる。
 そして,現在,3年生の札幌市の様子の調査活動,4年生の社会科で全学級がパソコンを教室に常備して共同学習を行ったり,5年生が産業学習や環境学習,6年生の道徳の調査活動や歴史学習・政治学習・国際理解学習で,インターネットを活用するなど,大きな成果を上げている。
 特別な研究授業でなく,日常の授業の中でインターネットを活用していく積み上げの中から,よりよい教育利用の在り方をさらに探っていきたいと考えている。

ワンポイント・アドバイス

 日常授業において活用できるホームページを検索する際,『幌南ワンダーランド』などのリンク集の利用以外に,「goo」などのキーワード検索のできるサーチエンジンの使い方を指導しておくと,効率よく目的のページを発見し,利用していくことができる。また,中学年以上では,絞り込みの方法も理解できるようになるので,検索の効率をさらにアップさせることができる。

 

利用したURL
 幌南ワンダーランド(http://www.kounan-es.chuo.sapporo.jp/wonder.htm)