新田開発について調べよう
小学校第4学年・社会科
日田市立石井小学校 平川 秀徳

インターネット利用の意図
 地域開発などにかかる先人の偉業・努力に関する内容を扱う場合,その資料の収集や活用が難しく,児童の興味・関心を高めながら学習を進めることが十分にできない。そこで,学校にインターネットが導入されることを機に,子どもが日頃見ることができない多くの情報や資料の収集が容易で,学習に活用することができるホームページを使った学習を構想した。本研究では,「小ケ瀬井路」をテーマにしたホームページを自作し,それを学習交流や教材プリントの作成に活用した実践を紹介する。

 
1 新田開発(小ヶ瀬井路)
 
(1) ねらい
  「小ヶ瀬井路」は校区を流れており,子どもたちは日常的に井路と接している,身近な存在である。また,「小ヶ瀬井路」は地域の人々の生活を豊かにしたいとの願いに発し,先人の幾多の苦難とそれを乗り越える努力により建設された井路であり,現在の生活にも大きな恩恵を与えている。
  しかし,子どもたちは井路の建設に至る経緯や現在の生活への恩恵などの知識や関心も薄い。小ヶ瀬井路について学習することにより,小ヶ瀬井路の理解を深めるとともに,先人の知恵と努力に感動し,地域を見直す態度が育まれると考える。
  現在使用している副読本「私たちの日田市」と併用しながら,これまで登録されていない資料を追加表示できる教材としてのホームページを作成し,活用すれば,学習効果は一層高まるものと考えられる。
 
(2) 指導目標
  まず,ホームページを使いながら小ヶ瀬井路の建設への努力や苦労をうきぼりにし,どのような願いで建設されたのかを理解させる。次に,それが現在の暮らしにも深いつながりをもっていることに気づかせる。そして,井路完成の歴史と現在の生活とのかかわりを学ぶことにより,地域のよさを見直す態度を育てたい。以下,観点別に目標を述べる。
 <関心・意欲・態度>
 ・小ヶ瀬井路見学から課題を作り,解決しようとする意欲をもつことができる。
 <観察・資料活用・表現>
 ・小ヶ瀬井路ホームページから,必要な資料を取り出し,検証することができる。
 ・学習の成果をホームページに,写真・絵・文章などを用いて,まとめることができる。
 <思考・判断>
 ・小ヶ瀬井路の作られた目的や工事の工夫に気づき,その偉大さがわかる。
 <知識・理解>
 ・先人たちが,地域の発展や生活の向上のために,小ヶ瀬井路を建設した過程を理解できる。
 
(3) 利用場面
  この単元では,次のような学習場面でコンピュータを使用する。
 @見学前
  教師自作の小ヶ瀬井路のホームページで概略をつかませ,見学ポイントを教える。
 A見学後
  見学したときの画像を取り込んだホームページを使って,見学内容を確認する。疑問を出し合いながら,ホームページや副読本「私たちの日田市」やその他の資料を使いながら,調べ学習をしてまとめる。
 Bまとめ
  ○×クイズとして問題と間違いのコメントを考えさせ,ホームページとしてまとめる。
 
(4) 利用環境
 @使用機種 NEC PC9821-NW15 18台(子ども) GATEWAY-SOLO-9100XL 1台(教師)
 A周辺機器 デジタルカメラ SONY MVC-FD7 1台 
       CD-R SONY PCV-S600 1台
 B稼働環境 自作ホームページデータをハードディスクに転送(CD-R)したものを使用
 Cその他の利用ソフト ホームページビルダーVer.3.07
  教師が子どものデータを登録する形で,ホームページを作成。
 
図1 授業の様子   図2 見学の画像を取り入れたホームページ
図1 授業の様子
図2 見学の画像を取り入れたホームページ
 
2 指導計画(12時間)
 
授業の流れ 主な発問 ホームページ活用例
課題作り
 2時間
小ヶ瀬井路って何だろう?
小ヶ瀬井路を探検してみよう!
☆教師自作のホームページ閲覧
見学の様子をホームページに
課題追求
 6時間

 
こんなに苦労してまで作ったのはなぜだろう?
 新田開発
 日田通船の水を確保するため
☆見学ホームページ
☆教師自作ホー ムページの利用
 切石を組んでいる画像
 閘門式運河の仕組み(動画GIF)
課題のまとめ
 3時間
小ヶ瀬井路について,まとめよう!
みんなのホームページを見よう!
 パソコンで 広用紙で 紙芝居で
広用紙にまとめたものを画像に
CD-Rに保存して閲覧
ホームページを印刷して掲示
学習のまとめ
 1時間
小ヶ瀬井路クイズを作ろう!
 例 小ヶ瀬井路を作ったのは,
   広瀬久兵衛である(正解)
問題と解説を子どもが考え,それを教師がホームページ化して,クイズを解きあう(JAVASCRIPT)
発展学習 ★インターネットに公開しよう!
他の地域教材作成へ
(伝統工芸 小鹿田焼き)
★教師の方で登録,公開,交流
 5年生や6年生での発展学習へ
 
図3 ○×クイズに取り組む子ども   図4 工事の苦労や工夫のホームページ
図3 ○×クイズに取り組む子ども
図4 工事の苦労や工夫のホームページ
 
3 利用場面
 
(1) 目標
 クイズのホームページに挑戦させ,クイズ作りをすることで、これまでの調べ学習の中から内容の定着を図る。
 
(2) 展開
学 習 活 動 教 師 の は た ら き か け 検 証 内 容
1.小ヶ瀬井路の○×クイズをする
 (10分)
○○×クイズのページを開いて,問題を解きましょう。
問題例(10問)
Q1.小ヶ瀬井路は,日田市にある。
Q2.小ヶ瀬井路は,明治時代に作られた。
・2人1組で,一緒に考えさせる。
・間違えた問題は,もういちど最初からやり直させる。
・問題がわからない場合は,ホームページをみるか,これまでの学習資料をみるように指導する。
・速く終わった子どもには,別のクイズにも取り組ませる






・ホームページや学習資料を活用したか
2.クイズ作りをする。
 (20分)
○クイズのページを参考に○×クイズを3問作りましょう。
・2人1組で,それぞれで作らせてお互いに問題を解きあうようにする。
・問題作りの参考に,ホームページやこれまでの調べ学習を参考にさせる。
・速く終わった場合は,板書させる。
・ホームページや学習資料を活用したか
3.クイズを発表する。
 (10分)
○クイズを発表しましょう。
・板書したクイズを発表させ,みんなで解き合いながら,学習をふりかえる。
・児童作成のクイズを使ったホームページを作成して,時間があれば挑戦させる。
 
4.学習のまとめをする。
 (5分)
○小ヶ瀬井路が作られた経緯や広瀬久兵衛の努力,現在における井路の役割等についてわかったこと,感じたこと等を書かせる。
・作成した問題については,ホームページに登録することを告げる。
 
 
4 実践を終えて
 
 小ヶ瀬井路見学遠足の画像を使ったホームページを作成して,授業ではそのホームページを使いながら学習していったので,子どももよく見ていた。ローカルでの利用であったので,画像も大きく表示されるように設定し,家の近くの様子や,クラスの子どもが表示される場面では,子どもは興味深く見ていた。
 小ヶ瀬井路の水が,日田通船の閘門式運河に利用されたことは,子どもは知らなかったが,この説明をするのに動画gifを使ったのは好評だった。これは,子どもでも簡単に作成できるものなので,子どもにも作成させたいものである。
 まとめの学習で,小ヶ瀬井路○×クイズを作成させた。授業では,教師が早速ホームページ化して,すぐにブラウザでクイズが解けるようにしたので,自分の問題が出されるととても喜んでいた。クイズの問題や,間違いのコメントを考えることで,これまでの学習を振り返ることができた。
 また,小ヶ瀬井路ホームページのデータを2次利用して,教材プリントを作成し,ホームページを再構成して,他の学校でも授業を行った。ここでも同じようにクイズをしてもらったが,他の学校の友達が作ったクイズを解くのは,とても楽しいようだった。
 児童からは,「コンピュータをつかって、小ヶ瀬井路のことがくわしくわかった。」「コンピュータで動かしたりするのが楽しかった。小ヶ瀬井路の見学で見られなかったところが見られた。」「クイズとかあって、いろいろな写真を見たりして楽しかった。また何回もしたい。」「自分で作った問題をいれてもらってうれしい。」「○×クイズが勉強にもなるけど,遊びのようにもできるので,楽しくていいなとおもいました。写真とかもでるので,見やすいと思います。」「パソコンであんなことができるなんてすごいと思った。○×クイズは100点になったからうれしかった。」などの感想が見られた。
 
図5 通船の仕組みの動画   図6 子どもの作成した○×クイズ
図5 通船の仕組みの動画
図6 子どもの作成した○×クイズ
 
ワンポイント・アドバイス
 その地域にしかない情報は,インターネットへの情報発信に最適である。小ヶ瀬井路について,検索しても見つからなかった。そこで,ホームページを作成,インターネットに公開すると,検索で表示されるようになった。このように,必要な情報を収集することも大切だが,発信することも大切であるように思う。ホームページ作成ソフトとデジタルカメラを利用すれば,子どもでも簡単にホームページを作成できる時代になっている。広用紙でまとめる時代から,ホームページで学習したことをまとめる時代に変化しているのである。たとえインターネットに公開できなくても,CD-Rに保存すれば,データの2次利用も可能である。
 
参考文献 
 日田通船ものがたり 郷土の新聞 天領日田 1996
 私たちの日田市 第7集 日田市教育委員会 1998
 広瀬淡窓物語 版画:宿利博幸 文:鍋倉松子 1998
 
利用したURLなど
 http://www3.justnet.ne.jp/~hirasen/WELCOME.HTM
 
図7 小ヶ瀬井路ホームページ
図7 小ヶ瀬井路ホームページ