電子メールを使った色々な暮らしの学習
 
小学校第4学年・社会
横浜市立日吉台小学校 鈴木 邦明
 

インターネット利用の意図
 横浜の小学校においては,子供たちが雪国の暮らしの様子を理解するのはなかなか難しい状況にある。通常,教科書・ビデオなどを用いて学習を進めていくが,なかなか実際の雪国の苦労などは理解しにくい。教科書,テレビ,新聞等から情報を得ることはできるが,情報の時間的な劣化や質問を行いにくいなどの問題も抱えている。
 そこで電子メールを活用することで児童がより容易に様々な情報を入手することができるようにする。また,発信側から受信側への一方的な情報だけではなく,双方向に情報の流れができ,より意欲的であり,理解の深い学習を進めることができる。

 
1 雪国の暮らしの様子を知る
 
(1) ねらい
 小学校社会・4年(2002年新指導要領改訂以降は5年)の単元に「我が国の国土の様子」がある。現指導要領の内容では「自然環境としての国土の特色や自然条件からみて国内の特色のある地域における人々の生活の様子について理解できるようにし,広い視野から地域社会の生活を考える態度を育てる。」である。コンピュータで電子メールを使い,より生きた情報を得ることで子供たちの学習意欲を高めることがねらいである。
 
(2) 指導目標
 教科書,ビデオなど今まで用いられていた資料だけでなく,コンピューター(特に電子メール)など色々な資料を効果的に活用して,より広い視野から国土の様子,特に雪国の暮らしの情報を得,それらを活用し,理解を深めていく。
 
(3) 利用場面
 この単元では,次の様な学習場面でコンピューターを活用する。
 
 ○実際の雪国様子を調べる学習場面
  雪国の暮らし(様子,苦労,楽しみなど)について,コンピューターネットワークを活用し,調べていく。電子メールを活用することによって,その時の生の声を受け取ることができる。やりとりする電子メールの地域が増えるにしたがって,雪国の暮らしを多面的に見ることも出来た。また,受け取ったメールに対してできた新たな疑問などを改めて電子メールで送ることもでき,意欲的に学習を進めていくことが出来た。
 
(4) 利用環境
 @使用機種 MAC パフォーマ5210(Modem 14,440bpm)1台
 A周辺環境 特になし
 B稼動環境 教師が自宅で受け取った電子メールを印刷し配る。
 Cその他使用のソフト 特になし
 
2 指導計画
 
指導計画(6/6) 留意点
@ パソコン通信などの仕組みを理解する。
質問の内容を考える。
パソコン通信に考えた質問を載せる。
★インターネットの利用
・児童の学習意欲を高める時期を選ぶ。
・新聞やテレビの天気予報など様々な種類の情報も有効に活用できるようにする。
・パソコン通信,電子メールなど今回の学習で用いる機器などについてわかりやすく説明をする。
・パソコン通信に質問を載せる際は,多くの人から返答をもらえるような工夫をする。
ABCD受け取ったメールから雪 国様子を調べるとともに,新たな質を考える。
 雪国の人とのメールのやりとりか,雪国の実際の様子を知るととも,その他の資料も活用しながら,かったことをまとめる。
★インターネットの利用
★送られてきたメールをもとにグループで,雪国の様子(苦労など)に気づかせる。
・電子メールだけでなく,各種の資料も効果的に活用して,様々な暮らしの様子をとらえることができるようにする。
・人々の生活や生産活動をそのときの地形条件や気候条件など,自然との関係でとらえるとともに,自分の生活とも比較してとらえられるようにする。
・様々な地域の雪国の様子の違いなどにも目を向けられるようにする。
・なるべく質問が具体的になるように,工夫する。
・疑問に思っている内容ごとで,グループを作り,さらに調べる活動を続けていく。
E発表会をする。
 
・それぞれのグループが今までの活動(電子メールのやりとり,本の資料など)で分かったことなどをまとめ,発表する。
・わかりやすい発表になるよう,掲示物の内容の色,大きさなどを工夫する。
・今までやりとりした電子メールをわかりやすくまとめる。
 
3 利用場面
 
(1) 第1時(1/6)
 @目標
   電子メールを利用して様々な雪国の様子の情報(雪の様子,苦労,楽しみ,食生活,服装など)を知るための質問を考える。
 
 A展開
学 習 活 動 活動への働きかけ 備  考
1 学習の取り組み方を知る。
・ネットワーク,電子メールなどの仕組みを説明し,取り組む際に支障がないようにする。  
2 本時の学習課題を知る。

雪国の人に質問をしよう

 

3 雪国の事について知っていること,わからないことをまとめる。
 

4 それぞれが質問の内容を出し合い,パソコン通信に載せる質問を選ぶ。

・答える方が答えやすくなるように,質問をできるだけ具体的になるようにする。  
5 本時のまとめをする。
・まとまった質問の内容を確認し,次時にやることを確認する。 ・電子メール
 
(2) 第2時(2/6)
 @目標
  電子メールを利用して様々な雪国の様子の情報(雪の様子,苦労,楽しみ,食生活,服装など)を手に入れ,それらを活用しながらグループごとにまとめていく。
 
 A展開
学 習 活 動 活動への働きかけ 備  考
1 前回までの学習を思い出し,本時の取り組み方を知る。 ・前時までの学習を想起させ本時の学習意欲を高める。


 
2 本時の学習課題を知る。

雪国の様子をまとめよう

3 受け取ったメールをもとにして雪国様子を知る。
  ・電子メール
4 新たな疑問について送るメールの質問の内容を考える。 ・それぞれのグループで送られてきたメールの中で分かりにくい所などを改めて質問するようにする。  
5 本時のまとめをする。 ・受け取ったメールをうまくまとめていく方法も確認する。
 
 
(3) 第5時(5/6)
 @目標
   電子メールを利用して様々な雪国の様子の情報(雪の様子,苦労,楽しみ,食生活,服装など)を手に入れ,それらを活用しながらグループごとにまとめていく。
 
 A展開
学 習 活 動 活動への働きかけ 備  考
1 前回までの学習を思い出し,本時の取り組み方を知る。 ・前時までの学習を想起させ,本時の学習意欲を高める。  
2 本時の学習課題を知る。  


・電子メール
 
発表会に向け,今までの活動をまとめよう!
 
3 今まで受け取った電子メールなどをまとめ,発表できるようにする。  
4 本時のまとめをする。

・次時での発表に向け,確認をする。

 
 
4 実践を終えて
 
 パソコン通信を社会の授業に活用し,雪国の様子を学習する活動を通して,児童は意欲的に学習を進めることができていた。この単元(雪国だけでなく,暖かいところ,高いところ,低いところなどにも言えることである)でのコンピューターの活用は有効であったと言えるだろう。子供たちと雪国の人々をパソコン通信(電子メール)という手段を用いて,直接結びつけることによって,質問及び回答が容易になっていた。普段の学習では,どうしても子供たちが持った疑問を調べる手段を見つけることが難しい状況にある。それに比べ,今回のように,電子メールを活用する場合には子供の疑問に的確に答えてくれる相手が割と見つかりやすい。
 問題点としては,パソコン通信などを活用し,子供が手に入れることのできる情報の量がとても多くなったこと自体は良いことであるのだが,結果として単に今までの調べ学習の規模が大きくなったものだけなのではないかということである。これからの課題としては,子供の疑問を始まりにして,いかにインターネットなどを効果的に使って,学習を進めていくかということである。
 また,最近の新聞などでも話題になっているように,インターネット,パソコン通信,携帯電話のサービスなど色々な通信機器の活用の仕方についてのモラルも大事である。様々な情報があふれているインターネットでは,子供にとって有用な情報,有害な情報の区別が難しい。今以上に様々な情報通信機器が活用されるであろうこれからの時代では,教育におけるインターネットの有用な使い方について議論すべき余地がかなりあるように思われる。
 最後に,児童からは,「自分たちの疑問にわかりやすく答えてくれたのでうれしかった。」「実際に雪国に住んでいる人の話を聞くことができたので良かった。」「一方的な情報ではなくいろいろと情報をやりとりできて良かった。」「パソコンを使うと世界が広がるような感じがした。」「色々な地域な事を知ることができた。」「質問に答えてくれる人が本当は遠くにいるのに,とても近くにいるように感じた。」「日本だけでなく,スウェーデンからも電子メールが来て,本当に驚いた。」「これからも電子メールなどを使って色々と調べてみたい。」などの感想が聞かれた。
 
ワンポイントアドバイス
 この実践においてとても大事になってくることが,子供たちの質問に答えてくれる人を捜すことである。今回は,ニフティの中にある「掲示板;教えてください・教えます」というコーナーに「質問 雪国の人々へ」という題名で子供たちの質問を載せた。幸いなことに国内外から多数のメールをもらい,この授業を進めることができた。
 他にも,様々なネットワークなどを用いる方法があると思われるが,多数の人の目に触れるという点で,現時点では上記のニフティを活用していく方法が,有効だと思われる。
 
利用したURLなど
 ・ニフティサーブ