暖かい土地と寒い土地で交換日記!
全国はてな会議から大阪・札幌交換日記まで
小学校第4学年・社会科
札幌市立幌南小学校 藤村 裕一

インターネット利用の意図
 4年生社会科の学習に、「さまざまな土地のくらし」の学習がある。これまで、本校では、電子メールを使って質問に答える「北国情報サービス」やホームページで北国の生活・文化を紹介する「北国情報コーナー」を使って、沖縄や本州各地の学校と共同学習を進めてきた。
 今年度は、全教室からインターネットを利用できる校内LANが設置されたことを生かし、「全国はてな会議」として同時に全国各地の学校と共同学習を進めたり、毎日電子メールとホームページを使って日記を交換したりする中で、暖かい土地のくらしと寒い土地のくらしについて、自ら問題を発見したり、足を使って調査したことを報告し合ったりして、実感的に学習を進めることができるようにした。

 
1 暖かい土地のくらしと寒い土地のくらしと

(1) ねらい  暖かい土地と寒い土地の気候の特色や人々のくらしの様子について調べ、生活や生産の工夫や努力について考えることができるようにする。
(2) 指導目標 インターネットを使って交流する中から、暖かい土地のくらしと寒い土地のくらしの特色に問題意識をもち、自ら生活の場で調査活動をしてわかったことを写真などを交えてわかりやすく表現し、電子メールやホームページを使って交流しながら、その特徴と背景にある工夫や努力について考えることができる。
(3) 利用場面   インターネットを利用する場面として、以下のような場で活用できるようにした。
 (1)電子メールを使って、互いのくらしについて報告し合う。
・よりわかりやすくするために、デジタルカメラで撮った写真などを添付できるようにする。
 (2)ホームページを使って、電子メールでは伝えきれない情報を知らせ合う。
 (3)電子メールとホームページのフレーム機能を使って、比較しやすいように交換日記を行う。
 (4)チャットやNetmeetingなどを使って、リアルタイムの意見交換を行う。
(4) 利用環境
 (1)使用機器 NEC Canbe jam 3台 IBM PC-3003台
 (2)周辺機器 デジタルカメラ(電子メールに添付する写真の撮影)
        スキャナー(ホームページ作成用)
        IBM ViaVoice98用ヘッドセット(チャットの際の音声入力等に使用)
 (3)稼働環境 インターネット専用線64kbpsとテレビのアンテナ線を用いた校内LANを用いて、インターネットを学習情報センターとして利用している図書館や各教室から利用。

 (4)その他の利用ソフト
   チャットや電子メールの入力用に、音声入力ソフトとして、IBMのViaVoice98を利用した。その他、インターネットの利用に当たってはNetscape Comunicatorを、ホームページ作成には、dB-soft Hotallを用いた。

2 指導計画

指導計画(14時間) 留意点
(1)交流する相手校がどこにあるかを知り、学級ごとに主に交流する相手校を選ぶ




・沖縄、大阪、東京などの中から、主に交流する相手校を子どもたちの興味関心により選択する場を設定する。(電子メールで、共同学習の申し込みのあったところを対象とする。)
・交流希望校が多い場合は、子どもたちに選択されなかった学校については、授業時間外で交流したり、学校交流委員会に交流を依頼したりする。
(2)インターネットを使って相手に知らせたいことを考える。
・自校の特色ある活動などについて考えたり、暖かい土地・寒い土地ならではのくらしの工夫について考える。
(3)〜(10)電子メールやホームページを使って交流する。
★インターネットの利用





★電子メールを使って、自分たちの学校生活や家庭生活について報告し合うようにする。
・よりわかりやすくなるように、写真などを添付するようにする。
★交換日記を行っている学校との間のやりとりについては、他の交流校も見ることができるようにホームページ化する。
・子どもたちが特に興味を持ったことを取り上げ、みんなで考える場を設定する。
(11)〜(12)交流を通して学んだことをホームページにまとめたり、チャットやNetmeetingを使っ多リアルタイムの意見交換でさらに学びを深めたりする。
★インターネットの利用
・ホームページを作成するに当たっては、相手から送ってもらった写真を使ってよいか、写真に写っている人に掲載してよいかなどの教科をもらい、著作権や肖像権に配慮することが必要であることに気づくようにする。
★相手校の環境により、ソフトを選択する。

 
3 利用場面
(1) 目標

 日記を交換する中で、子どもが興味をもった「洗濯物の干し方の違い」をきっかけに、その違いの背景に気候の違いがあり、気候の違いがそのほかの生活の違いをもたらしていることを考えることができる。

(2) 展開

学 習 活 動 活動への働きかけ 備 考
1 子どもが興味をもった大阪の子どもたちからの「洗濯」のことについての交換日記を読み合い、どうしてこんな質問をしてきたのかを考える。
・大阪市立西淡路小学校4年生の交換日記の意図が不明な部分がどこかを問いかける。


 
・交換日記をスキャンコンバーターと大型テレビで大写しにする。
 大阪の友達は、なぜ洗濯のことを質問してきたんだろう?
・海外との交流には翻訳ボランティアの協力を得る。





・気候の違いについては、インターネットも用いて調べることができるようにブックマークに、関連サイトを登録しておく。
2 大阪の友達が、洗濯のことについて質問してきた理由を考え、話し合う。

3 大阪と札幌の「洗濯物の干し方」の違いをはっきりさせ、その理由を考える。

 ・大阪では冬でも外に干しているという記述と、外で布団を干している写真から考える。

 ・札幌では室内で干していることを、大阪の友達がなぜ気づかないのかを考える。

 ・札幌の夏の洗濯物の干し方とその背景について考える
・洗濯の仕方ではなく、干し方に着目していることに気づくようにする。
・文章と写真とを照らし合わせて考えるように助言する。
・大阪では冬でも洗濯物や布団を外に干せるが、北海道ではできないことから、気温と降雪の有無など気候の違いに気づくようにする。
・大阪の友達は「札幌では冬は洗濯物を干せないのではないか」「乾燥機が必要ではないか」と考えているのに対し、札幌では乾燥機を使わずに室内で干して何も不自由していないことから、札幌の暖房の強さを伝えればいいことに気づくようにする。
・札幌では、冬に暖かい室内で干すことが習慣化し、夏でも室内で洗濯物を干す家庭が多いこと、また、外に洗濯物を干すことを恥ずかしがる家庭が多いことなど、気候が生活の仕方や人々の感覚にまで影響を与えることに気づくようにする。
4 「洗濯物の干し方」について、大阪の友達にどんな返事を書くのか、それ以外にも気候が理由で生活・文化が異なるものがないか考える。
・大阪に送る交換日記の中身と、取材したり、写真を撮ったりすることをはっきりさせる場を設定する。

 
・交換日記の大まかな構成を黒板に整理する。

 
4 実践を終えて
 従来のように、数回の電子メールの交換やリアルタイムの意見交換だけで学習するのと違い、毎日日記を交換することにより、より親近感を持ったり、自ら問いを見つけたりしながら、学習を進めていくことができた。 以下、その具体例を紹介したい。

 

 2月3日 晴れ 気温 5℃

 

私たちは、4年2組の5、6ぱんです。
私たちは、家庭の洗濯物のことを、調べました。写真を見てください。大阪では、洗濯機で洗って、外でほしてます。ほしたあとで、アイロンをかけています。お天気のいい日にはふとんもほしてるねんで。

質問します。
1 そっちでは、かんそう機を使っていますか?
2 そっちでは、雪がふっているのにどうやってかわかしていますか?
3 そつちでは洗濯物を、どのようにして干してますか?

わたしたちの、大阪では、いろんな、服があらえるねんで。例えば、ジャンパーや、セーターなど、他にも、いろいろな、服があらえんねんで。北海道では、洗えない洗濯物も、大阪では、洗えるかもしれへんで。とても、洗物機ってふしぎだね?いろいろ、服が、洗えてべんりやで。(それは北海道でも同じでしょう!:教師より)

北海道では、雪がふってて洗濯物がほせないかもしれないけど、雪がふっててうらやましいな?

作品1 2月3日の大阪市立西淡路小学校から届いた交換日記

 

写真1 教室で交換日記を見る子どもたち        写真2 大阪・札幌交換日記のページ

 このように、子どもたちはこれまでの学習と違って、互いのくらしを紹介し合う中で、自ら問いを発見し、主体的に追求していくことができた。
 また、毎日交換日記で、自分たちのメーセージに対する返事をもらうことで、これまで自分たちでは当たり前すぎて気づかなかった「寒い土地ならではのくらし」「暖かい土地ならではのくらし」にも気づいていった。
 本時でも、札幌の子どもたちにとって「洗濯物を室内で干すこと」「暖房がよく利いていて、冬でも室温が25℃程度あるから、室内でも洗濯物がよく干せること」は、あまりにも当たり前のことすぎて、それが寒い札幌の気候を反映したくらしであることに、最初は全く気づいていなかった。大阪の子どもたちの質問や大阪のくらしとの比較があってはじめて気がついたことである。
 このように、「全国はてな会議」、特にその中でも「交換日記」は、非常に有効な学習方法であった。
 しかし、毎日写真を添付した電子メールと、両者の日記を比較してみることができるようにしたホームページを作ることは、きわめて大変なことである。担任だけでなく、情報教育担当の教師が各学級に協力することが不可欠である。

ワンポイント・アドバイス

 「交換日記」のように、毎日情報交換する場合、事前に形式を決めておいて、そこに子どもたちが文章と写真をはめていけばすぐにできあがるようにしておくと、非常に便利である。また、この際、子どもにとって問題となりそうな写真をトップにもってきて、子どもの注意を喚起するようにしておくとよい。
 このように、電子メールとして交換する段階から、最終的にホームページに掲載することまで考えた構成としておくことで、学習の実況中継的なホームページづくりも可能になる。