学校第5学年・総合
江東区立南砂東小学校 伊藤 秀一
過程 | 主 な 活 動 と 内 容 | 支 援 と 評 価 | |||||||||
疑 問 を 持 つ |
わたしたちの食べ物は安全なの? |
※身近な,あたり前に疑問をもたせる。 ※社会科,家庭科の学習と関連づけながら, 地球と人とのかかわりという観点で,お米 作りをとらえさせていくようにする。
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思 い も よ ら な か っ た こ と |
・口で言うのと,実際にやるのでは大違いだ。 図1 東小学校の田んぼ
(必要ない) ・農薬は人間にとってもよくない。 ・足なしカエルが出たじゃないか。 (必要だ) ・農薬を使わないと,虫とり,草とり,病気が出るなど手間がかかる。 ・見た目のよいものじゃないと売れない。 ・使わないと,そこで害虫が増え,まわりへ飛んでいくのでめいわくだ |
<電子メールによる交流> ※実際にお米作りを体験することによって,作る立場の考えを理解する素地を養う。 図2 徳田小から生き物が届いた
※それぞれの立場によって,考え方に違いがあることに気づかせる。 ※米作りの背景にある問題点に気づく。
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・見た目がよくて,安全で,安い物がいい。 →消費者はわがままだ。
・お米をたくさん実らせるには,水をぬいた方がよいが,生き物が死んでしまう。 ・お米作りはそこにいる生き物たちか らみるとよくないことだ。 ・お米作りは環境破壊かもしれない。 図4 土用干しの田んぼ
<石川,鳥取の田んぼ> ・用水路でつながっている。だから生き物は水ぬきをしても川に逃げられる。 ・多くの生き物が行ったりきたりしている。 <東小田んぼ> ・まわりとつながって いない。だから水をぬくと生き物は死んで しまう。 ・水道水で給水し,下水へ排水している。 ・水槽のような田んぼだ。 図5賀露小の周り
<徳田小,賀露小との3校交流> ・消費者と生産者との信頼関係が必要だ。 ・自分たちのあり方を見つめ直そう。
・農薬を使った鳥取のお米より,私たちの無農薬米は,なぜ安いの? 図6 収穫したお米 |
※見た目を重視する今の世の中のあり方に,消費者の立場から疑問を持つ。
※田んぼの生き物を地球環境ととらえ,お米作りをそれに対する人のかかわりとして当てはめてみる。 ※環境と人とのかかわりは,どちらかを優先させると,もう一つがそこなわれることに気づかせる。
<テレビ会議による交流> ※田んぼという一つのスポットに視点をあてるだけでなく,生き物を通してまわりの環境とのつながりに気づかせる。 ※自然環境はそれぞれが相互にからみ合って成り立っていて,生き物はつながりの多いところほど多くいる。
図7 生き物が住みやすい環境がつながっていない。 ※東小田んぼが,なぜ簡単に無農薬でできたのかを考え,実際の世の中の流通システムとの違いを考える。
※見た目を重視する今の世の中のあり方に, 生産者の立場から疑問を持つ。
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主 な 活 動 と 内 容 | 支 援 と 評 価 | ||||||
○それぞれの学校の「田んぼの今」報告をする。
○それぞれの学校から,農薬の是非についての結論と,その理由を発表する。 南:私たちの田んぼは無農薬でお米ができる。 (理由) ・面積が小さい=手入れが楽 →虫とり,草取りが楽 →鳥よけも完璧 ・虫や病気がこない→まわりはコンクリートでかこまれた町なので,もともと虫も病気 も少ない。 ・売り物でない→形が悪くてもかまわない。 徳:農薬の必要性もわかるが,危険性もわかる。 ・農薬田の方が手間がかからず,たくさんお米ができた。 ・農薬田の方が生き物が少ない。 賀:農薬は使いたくないが,使わざるをえない。 ・使わないとまわりに迷惑がかかる。 ・害虫があまりに多くて使わざるをえない。 ○理解できる点,矛盾を感じる点について討論を する。 ・農薬を使わないとまわりに迷惑がかかるのも分かる。けれどもそれでは悪循環だ。みんなで減らしていけないのか。 ・特定の害虫しか殺さない農薬と言うが,益虫にも死なないだけでダメージはあるはずだ。結局,人間だって安全とはいいきれない。 ・消えてなくなる農薬というが,足なしカエルを見ると,農薬が土に残っていたことも考えられる。 図12 足のないカエル 東京の田んぼは,たしかに無農薬でできたかもしれないが,そんな量では売っても生活できない。 ・無農薬では,少ししかできないし,手がかかるので,値段も高くなる。消費者は高くても買ってくれるのか?
・生産者と消費者の信頼関係が必要だ。 ・かしこい消費者が増えると,生産者もみかけでなく,よい物を作るようになる。 ↓ そうすれば,農薬は少なくてすむ ○これからの取り組みについて発表しあう。 南:稲刈りをしたら空き缶でごはんを炊くよ。 徳:来週には,稲刈りをするよ。 賀:もちつき大会をやるよ。 ・ホームページやメールで報告していこう。 ・話し合いたいことがでたらTV会議をしよう 図13 1学期に試した,空き缶で炊いてみるね |
※現在の田んぼの状況の共通理解を図り,今日の話し合いの土台にさせる。 図9 他校との意見交換の様子
※言葉の説明は同時に消えていくので,図など 資料を提示して,相手がこちらの主張を再確認できるよう工夫させる。 図10 図11 ホームページのまとめを共通の掲示板として発表する
※やや難しい問題なので,教師の連携のもと,話し合いを支援してあげる。(必要に応じて作戦タイムをとる。) ※相手の主張を十分に尊重させる。 図14 話し合いの様子
図15 意見発表の様子 ※よりよい方向を明らかにするのが目的で,無理に結論に結びつけないようにする。
※次の取り組みの方向性を示し合い,さらにお互いを高めあう学習の発展をうながす。 |
4 実践を終えて
お米の値段 南砂東小:2等級下(1kg=250円) 徳田小:2等級(1kg=300円) 賀露小:1等級(1kg=450円) |
学校での学習は,たいてい『がんばれ』ば誉めてもらえ,評価される。けれども,実際の世の中は,そうはいかない。自分たちの作った無農薬米に値段を付けてもらうと,なんと最低のランクだった。しかも,農薬を最も使った鳥取のお米に一番高い値段が付くという世の中の現実 を突き付けられた。わずか2.5sの収穫しかない本校の子どもたち一人あたりの分け 前はたった30円にも満たないという結果に愕然とした。「草取りや虫取りも頑張ったのに」「無農薬米ということも考えて高くしてほしい」「あれっ!消費者は安い無農薬米がほしかったんだっけ!」生産者と消費者の両面から学習を進めた来たことが,現実 を見つめる手だてになっていった。
(3) 生きてはたらく環境学習へ
環境の学習のねらいは,人と地球環境とのよりよいあり方を考え,その改善に向けての実践力を養うことにある。そのためには,身近な環境を子どもたちと生活とのかかわりの中で,自分の課題として見つめさせていく必要がある。子どもたちにとって,今すぐどうこうできるものは少ないかもしれないが,将来にわたって生きてはたらいていくのが環境の学習のあり方だと考える。
ワンポイントアドバイス
インターネットやテレビ会議システムなどのネットワークの活用は,これまでの教 育の活動範囲を格段に広げ今まで以上の成果が期待できる。けれども,それらを有効 に活用して学習を進めていくためには,人として基本となるコミュニケーション能力 の育成が重要となってくる。まず,普段から伝える相手を意識した学習を展開し,だれとでも上手にコミュニケーションできる力を育てていくことが必要である。 |
・江東区立南砂東小学校(http://www4.justnet.ne.jp/`higashi_syo2/)