学校放送番組とインターネットを連動した共同学習
小学校第5学年・環境学習
大垣市立静里小学校 宇野 芳彦

インターネット利用の意図
 NHK学校放送番組「たったひとつの地球」をもとにした環境学習を行い,その経過や成果をインターネットを使って他校と交流する。交流のページは「たったひとつの地球クラブ」という名称で,その下に「クラブ日記」と「地球だいじょうぶ?」の2形態の交流広場を設けてある。
 「クラブ日記」(個人単位orクラス単位の参加)では、番組の進行に合わせ,みんなで考えたい「テーマ」が提示され、そのテーマに関する意見や調べたことを,自由に書き込んでいく。いわゆる掲示板形式である。書き込まれたコメントには,適宜,スタッフからレスポンスを返して,より深い学習につなげたり,お互いのコメントを比較しあったりするように促していく。
 「地球だいじょうぶ?」(クラス単位の参加)では、交流校のグループを作って番組をきっかけにした共同学習を進める。グループごとにお互いの学習成果をホームページ形式で掲載し,そのページにコメントを書き合うことで,意見や知識を共有していく。その他,フェニックス会議なども積極的に使って学習を進めていく。

 
1 地球だいじょうぶ?
(1) ねらい
 環境学習を進める場合,身近な視点から取り組む場合とグローバルな視点から取り組む場合とがある。児童が問題点や疑問を持ち,意欲的に追求活動を進めていくためには常に適切な指導援助が必要になる。そのための学習プログラムが準備されているのが,この「学校放送とインターネットを連動させた共同学習プロジェクト」である。ここでは,電子掲示板による交流,ホームページの作成と相互参照,テレビ会議システムによる交流が可能である。これらを通して,常に刺激を受けながら意欲的に追求・表現・交流を行う児童を育てるため,コンピュータやインターネットを活用して学習を進めることにした。
(2) 指導目標
 学校放送番組「よごれていく空気」を視聴して,抱いた問題点や疑問点について他校の児童との交流を通して理解を深め,身近かな環境から地球規模の環境まで関心を持ちながら意欲的に課題を追求し,わかったことをコンピュータを使ってまとめ,情報発信することができる。
 このような活動を通して,「課題意識→課題追求@→意見交流→課題追求A→調査活動→情報発信」の情報活用能力を育てる。
(3) 利用場面
 この学習では,次のような学習場面でコンピュータを活用する。
 (1)電子掲示板への書き込み
  放送番組を見た後,感想や意見を掲示板に書き込む。書き込む前に他校の児童が書いた意見などを読んで,それに対して意見を書いたりすることもできる。児童が書き込んだ意見については,担当スタッフからていねいなコメントが返ってくる。児童は随時インターネット接続し,それを見て新たな疑問や調べる方向が見えてくる。
 (2)疑問を持ったテーマについての調べ学習
  番組や電子掲示板を通してもっと調べてみたいことについて,関連のホームページを検索して調査するときに,インターネット接続されたコンピュータを利用する。教室からもノートでインターネット接続し,いつでも情報を引き出し,プリントアウトできるようにしておく。
 (3)調べたことをホームページにまとめる
  本やインターネット,取材(聞き込み調査)などで調べたことを交流し,さらに深めていくためにテーマ別グループごとにホームページを作成する。
 (4)テレビ会議システムによる交流
  調べたことについてリアルタイムに交流し,一緒に話し合ったり討論するためにフェニックスを利用する。
(4) 利用環境 
 (1)使用機種 FMV-TOWNS 22台
 (2)周辺機器 デジタルカメラ ソニーMAVICA 7台 
 (3)稼働環境 コンピュータ室 FMV-TOWNS 22台(64kでインターネット接続)
        教室 SONY Vaio7671台 (28800bpsでインターネット接続)
 (4)利用ソフト ハイパーキューブ2,インターネットエクスプローラ4.01
 
2 指導計画

指導計画(7/9) 留意点
(1)「たった一つの地球」を視聴し,思ったことを話し合う。
 ★インターネットの利用





 
・ビデオに収録しておき,もう一度見たい児童が何度でも見られるようにしておく。
・メモをとりながら見ることも認め,自分の意見の書き込みに生かす。
・自分の思ったことと,友達の思ったことを聞き比べながら話し合いに参加する。
・疑問点については,本やインターネットなどを利用し調べておくように助言する。
★「こねっとgoo」の利用の仕方について,指導する。
(2)「クラブ日記」に意見の書き込みをする。(図1)
 ★インターネットの利用



 
・画像データを必要とする児童にはデジタルカメラ,スキャナなどを準備する。
★他の児童の書き込みやスタッフからの意見も読みながら書き込めるよう助言する。
・調べたことについても書き込めるよう,時間を十分確保する。
・全員が書き込みを終えたら,プリントアウトして,教室に掲示しておく。
(3)(4)放送番組「大気汚染」に合ったテーマにもとづいて,グループごとに調べ学習を行う。
 ★インターネットの利用
(5)調べたことを学級で中間発表し,仲間のアドバイスを受ける。
 
・調べ活動に入る前に,テーマ別グループごとに小テーマと調べ方まとめ方について相談する時間をとる。
★調べ方は,本・インターネット・取材(聞き取り)などを紹介し,適宜援助する。
・調べたことをメモする紙と,コピーしたり,プリントアウトした資料を閉じておくファイルをグループごとに準備しておく。
(6)(7)(8)「ハイパーキューブ」で調べたことをまとめ,HTMLに変換する。





 
・「キューブワード」では,「編集」→「コピー」→「張り付け」すれば画像データを入れることができることを助言する。
・イラストや図は「えほんらいたー」を利用して画像データを作成する。
・Mavicaの画像データは「インターネットエクスプローラ」で表示して張り付けることを教える。
・まとめが完成したら「ホームページ機能」の使い方を教え,「ホームページ書き出し」をしてファイル保存する。
(9)テレビ会議システム(フェニックス)
 を利用して意見交流する。(図2)
・ディベート形式で行えるように,テーマ話し合いの手順などを,相手校と事前に打ち合わせておく。
・児童は自分の考えを持って,話し合いに臨めるようにする。

図1 クラブ日記への書き込み画面
図2 フェニックスで意見交流
 

3 利用場面

(1) 目標

  テーマ別グループごとに「大気汚染」について調べたことを,「ハイパーキューブ」 でまとめ,ホームページの形にする。見る相手のことを考えながら,よりよい作品づくりに取り組むことができる。

(2) 展開

学 習 活 動 活動への働きかけ 備考
1 本時の学習の進め方を知る。
・グループごとに活動の見通しを持たせる。






・コンピュータ
・デジタルカメラ









・大型ディスプレイ
調べたことをホームページにまとめ,広く知らせよう
2 テーマ別グループのまとめを「ハイパーキューブ」で作成する。
  ●大気汚染とは?
  ●恐ろしい大気汚染
  ●自動車の排気ガス
  ●環境にやさしい車は?
  ●大垣市では環境を守るためにどんなことをしているか?
  ●大垣市の空気の様子
  ●これから私たちはどうすればいいのか?
3 作成したまとめをホームページの形式に書き出して,保存する。

4 まとめのホームページを見て感想を話し合う。
・能率を上げるため,文章入力,画像データ製作などを分担して行うようにする。

・タイトルの字の大きさや色を見やすく工夫させる。

・「コピー」→「張り付け」を利用して,グループの作品を一つにまとめる。

・「ホームページ機能」や「ホームページ書きだし」の使い方を助言する。
・修正,加除する点について明らかにする。



 図3 大気汚染調査グループのホームページ
図4 グループのまとめを作成

 
 
4 実践を終えて
 現状では放送番組を利用している学校と,インターネットを利用している学校が必ずしも一致しているわけではないが,これを両方とも有効に活用するときの学習の広がりには期待が持てる。学校放送番組をきっかけにして,自分たちの地域のことを調べ,それをインターネットを利用して比べ合うようなことは,これからますます盛んになってくるだろう。
 児童らは,クラブ日記の掲示板への書き込みでは,「コメントが入っていたときは,むこうの人がきちんとぼくの書いたことを見ているとわかって,うれしくなりまた書き込みしたくなった。」,「ほかの小学校と話し合って,わからないことを解決できたから,とてもおもしろかった。」という感想にあるように,テーマに基づいて他校の児童と意見交流できたことや,一人一人に対してスタッフのていねいな対応があったことが,児童の学習を深める上で大変有効だった。
 また,「地球だいじょうぶ?」での大気汚染についてのホームページづくりでは,児童は難しそうに考えていたが,「ホームページをグループで分担してしっかりできたのでよかった。作る方法が少しわかってきた。」という感想を書いている。
 さらに,情報収集の時には,「こねっとgoo」がとても役に立ったと児童らは口をそろえる。ごく自然にキーワードを入力しながら,情報検索の方法を身につけていったようである。

 今回の実践を通して,インターネットに関連したコンピュータリテラシー(情報検索,情報収集,ホームページ作成など)は,飛躍的に向上した。また,調べ学習やNox調査を通して「大気汚染」さらに「環境問題」への関心は高まった。この取り組みではさまざまなメディアを利用して行われる。メディアがあるから利用するのではなく,これらのメディアを必要に応じて「道具」として利用していくことが大切であろう。放送とインターネット,それに他のメディアや体験をうまく融合したマルチメディア学習の可能性は,今後広がっていくに違いない。

ワンポイントアドバイス

 こねっと・ワールド(http://www.wnn.or.jp/wnn-s/)には,インターネットを使って学習を進めるための情報が満載である。国内外の学校間交流を呼びかけるコーナーでは,交流希望の学校を検索することもできる。また,プロジェクトに参加することで,共同学習に参加することができる。インターネットを活用して離れた地域の学校と学習を進めたいと考えている学校は,まずここを訪れてみるとよいだろう。本実践は,このプロジェクトの一つに参加したものである。

 
参考文献
 インターネットが教室になった (高陵社書店)こねっとプラン実践研究会
 
利用したURLなど
 たったひとつの地球クラブ (http://plan2.mbc.ntt.co.jp/~club/)  環境庁 (http://www.eic.or.jp/eanet/Kmain.html)
 電気自動車館 (http://www.alpha-web.or.jp/jeva/)
 学研 大気汚染調査のページ (http://kids.gakken.co.jp/kagaku/taiki/taiki.htm)
 環境問題を調べよう (http://www.enjoy.ne.jp/~eisshindo/kankyou.htm)