情報 すてたり ひろったり
小学校第6学年・社会
相模原市立淵野辺小学校 渡部 強

インターネット利用の意図
 6年生でも, 実体験を伴う学習は好きであり, 生き生きとするものである。この単元を学習するに当たって, 国会にしても内閣の関連機関にしても, 子どもたちは普段目にすることのない教材だけに知らないことが多い。本来は国会等を訪ねて実際に見て, 聞いて学ぶ学習スタイルがよいのだろうが, なかなか予定が立たないこともある。その場合, 新聞やTV,インターネットを利用することでバーチャル的な体験ができ, 学習がより本物に近い形で進められる利点がある。本単元は, インターネット等を大いに利用できる単元である。

 
1 わたしたちのくらしと政治のはたらき
(1) ねらい
 ・身近な政治を手がかりとして国の政治のしくみとはたらきについて理解する。
 ・国の政治のよりどころである憲法の精神を理解するとともに,共に生きる社会の一員としての自覚をもつ。
(2) 期待する子ども像
 ・日常生活における政治や選挙,憲法問題,福祉などについて興味,関心を持ち,自分の生活と関連づけてとらえることができる子ども
 ・資料や調査の結果をもとに,自分の考えを論理的に組み立てることができる子ども
 ・新聞, TV, インターネットなどの情報を収集,整理,選択して,学習に利用したりまとめたり発表したりすることができる子ども
 ・政治のしくみやはたらき,日本国憲法の三つの原則について理解することができる子ども
 ・PCやインターネットに興味,関心をもち,より親しみをもつことができる子ども
 
2 指導計画
(1) 単元の構成(13時間扱い)
[単元の主題]
(2) 単元構成の意図
子どもの実態から
 くらしや政治に関わる学習は, 生活科における地域の探検活動, 第3学年「まちの公民館」「すみよいまち」, 第4学年「くらしの中の水とごみ」などや第6学年の歴史学習にも現れている。本単元はこれまでの学習をふまえたうえで, 具体的な事例を通して毎日の生活と政治のかかわりの学習の展開を図っている。
 政治とのかかわりは, 日常的な営みの中に形として現れないため, 児童にとってはなじみにくく興味・関心が薄い。しかし,具体的な事例や資料収集など具体的な学習活動を積み上げることによって主体的意欲的な学習が成立しやすい。こうした意味で, 導入に各地で具体例のある火山や地震災害の例を挙げるとともに,「国会議事堂を訪ねて」「総理大臣の一日」などの活動を取り入れ,学習の活性化と理解の深化を工夫した。
 
教材の精選から
 「日本のあゆみ」では,歴史の流れの中における人権の拡大のあゆみを学習してきた。その発展上に本単元は位置づけられる。子ども達の身の回りに展開するさまざまな生活が, 政治とどのようにかかわっているかをまず考えさせ,それが日本国憲法の精神や三つの基本原則と,どのように結びついているのかを具体的に学習できるように教材の精選を図っている。
 また国会の審議内容,権力分立の様子,人権侵害の状況にも疑問をもたせるようにして,ただ単に政治の原則や憲法の理念だけを学ぶような学習にならないように,教材の精選を図った。
 学習の流れとしては,身近な事例から,地方レベルの政治のはたらきに気づかせ,それを学習の土台として国の政治のしくみ, 憲法の精神と三つの原則の学習へと発展させていく。







1 身近な政治とのかかわりを, 具体的な資料や調査活動などを通して実証的に学習させる。
2 国の政治についても,新聞を読んだり,インターネットを利用して,総理大臣の一日などのように,具体的な資料に基づいて,問題解決のできる学習活動を工夫する。
3 国民の一人として,常に自分なりの考えや意見を述べたり判断したりまとめたりする姿勢を培う。
 
3 利用場面
(1) 本時の主題   「内閣は, どのようなしごとをしているのだろう」
「内閣総理大臣の一日」を調べながら
(2) 本時の目標
 ・内閣総理大臣の一日の行動を調べながら,行政機関の主なはたらきを理解するとともに,国の政治が三権分立のしくみに支えられていることをとらえることができる。
 ・PCやインターネットに興味・関心を持ち,より親しみをもつことができる。
(3) 本時の展開(本時6/13)
  発問・動機づけ 学習活動・内容 教師の支援 T.T(担任T1)


○国会で決めたことがどこで, どんなしくみのもとで,実現されるのだろう。 @国会で決めたことは, どこが実際に行うのか話し合う。 @国会で決められた法律や予算はどこで執行されるのかということから課題意識をもたせる。 T1.発問
内閣は, どのようなしごとをしているのだろうか。
   
調

○内閣総理大臣の一日を, 追いかけてみよう。 A新聞にある「首相の一日」の切り抜きを読んで分かったことや疑問,感想を出し合う。 A1週間前後に着目させ, その多忙ぶりをつかませる。分からない語句はOHCや口頭で補足説明したり, 首相官邸等についてはインターネットのホームページを開かせる。 T2.課題短冊の添付
OHCの操作支援

T1.T2.
児童のインターネット操作の個別支援 
○内閣は, どんなしくみになっているのだろう。 B内閣のしくみについて調べ, 分かったことを学習ノートにまとめる。

・内閣は, 国会で指名された内閣 総理大臣が国務大臣を任命してつくられ, 内閣総理大臣が, 最高の責任者である。

・内閣のもとに各省庁がある。
B「首相の一日」
の切り抜きやインターネットの資料, 資料集, 教科書等から,その関連をとら えさせる。

・内閣は, 国会で指名された内閣総理大臣が国務大臣を任命してつくられ, 内閣総理大臣が, 最高の責任者である。

・内閣のもとに各省庁がある。
T1.T2.
児童のインターネット操作の個別支援

T2.OHCの操作支援
○内閣では, どんなしごとをしているのだろう。 C内閣のはたらきについて調べ,
 分かったことを学習ノートにまとめる。

・国会で決めた法律や予算にしたがって政治を進める。

・各省で, 仕事を分担している。

・予算を作って国会に提出する。

・裁判官を任命する。   など
C日常生活における具体的な問題を取り上げ, それがどの省の分担であるかを考えさせ, 各省のしごとをおさえさせる。 T1.T2.
児童のインターネット操作の個別支援

T2.OHCの操作支援



○内閣のしくみやはたらきと, 国民の生活とは, どんな関係があるのだろう。 D内閣のしごとと国民の生活とのつながりについて話し合い, 内閣のまとめをする。 D身近にある各省の出先機関を調べることで自分の生活と関連づけてまとめさせる。宇宙科学研究所や各省庁についてはインターネットのホームページを開かせる。 T1.T2.
児童のインターネット操作の個別支援

T1.まとめ  
 ※首相官邸(http://www.kantei.go.jp/)
 ※総理官邸キッズルーム(http://www.kantei.go.jp/jp/kids/index.html)
 ※文部省宇宙科学研究所(http://www.isas.ac.jp/index-j3.html)
 ※官公庁リンク集(http://www.ntt.co.jp/SQUARE/Town/JP/gov.html)
(4) 本時の評価
 ・内閣のしくみについて明確にとらえることができたか(学習活動Bでの発言, 学習ノートの記録, インターネットの利用状況から)。
  →各省庁や行政委員会などの職掌については, 細部に立ち入るのではなく, 概略をおさえるにとどめておく。
 ・内閣のはたらきを, 国会のはたらきと関連づけて指摘できるか(学習活動@Cでの発言,学習ノートの記録, インターネットの利用状況から)。
 ・各省庁のしごとを, 日常生活における事例と結びつけて考えることができたか(学習活動Cでの発言, 学習ノートの記録, インターネットの利用状況から)。
 ・内閣のしくみやはたらきを的確にまとめることができたか(学習活動Dでの発言, 学習ノートの記録, インターネットの利用状況から)。
  →地域にある各省の出先機関に着目させる。
   例えば, 法務局, 税務署, 宇宙科学研究所, 郵便局, 公共職業安定所, 陸運支局などについて, テレホンガイド(NTT)やパンフレットを参照する。
 
4 実践を終えて
(1) 単元上での改善点  
 ○見学の計画がなかったので, 多くの資料を活用して本物体験に近づけた。
  ●児童・・・新聞のスクラップ, 資料収集, インターネットによる情報収集。
  ●教師・・・インターネットの情報, 「国の政治と国民の生活とのつながり」における親の職業との関連化。
(2) 本時の工夫点
 ○資料活用・・・インターネットから(首相官邸, 各省庁, 文部省宇宙科学研究所等)。
         新聞(首相の一日), テレホンガイド(NTT)から。
         その他、必要と思われた資料をたくさん用意。
 ○機器活用・・・インターネットの利用。
         OHCの使用(パソコン室は広く発表の声が聞こえにくいので,発表時に学習ノートや資料を一斉画面で同時に見合った)。
 ○学習の生活へのふりかえり
         ・・・親の職業や政治の身近な出先機関を調べた。
(3) 児童の反応 
  実際には見学等をしていないのだが, インターネットの利用によってより身近に感じているようだった。特に, 「官邸のVRツアー」はまるで見学をしているような気分になり,児童には好評だった。インターネットによるバーチャル体験は, 児童にとって有意義だったようである。                                 
ワンポイント・アドバイス
 インターネットの利用は, 今までにない新しい学習スタイルである。ただそれはあくまでも自分を助ける「道具」として自分の活動を支援するためであり, より大切なことは人間同士のふれあいである。コンピュータ等を通して体験するのは, あくまでも間接体験や疑似体験であって, 実際の社会体験・自然体験などの直接体験こそが大切なのである。
 また, インターネットはリアルタイムに情報が得られるといわれるが, 一度でスムースにアクセスできる保障はなく, 画像の大きさ等によっては, かなり時間がかかることがある。そのために, 単位時間で授業がうまく流れないことも少なくない。前もって必要なホームページをフロッピー等に保存して活用するとか, 授業時間の弾力的な運用等を考えておく必要がある。
 更に, 自由に利用させることが多くなるにつれて, ネットワーク利用上のルールやネチケット, プライバシーの保護や著作権に対する正しい認識, そしていわゆる情報化の「陰」の部分の問題等を指導していかなければならない。
 
利用したURLなど
 ・首相官邸(http://www.kantei.go.jp/)                
 ・総理官邸キッズルーム(http://www.kantei.go.jp/jp/kids/index.html) 
 ・文部省宇宙科学研究所(http://www.isas.ac.jp/index-j3.html)     
 ・官公庁リンク集(http://www.ntt.co.jp/SQUARE/Town/JP/gov.html)