新100校プロジェクト 平成10年度実施報告
 神奈川県相模原市立淵野辺小学校
1.インターネットの利用状況

 (1) 情報教育を軸とした総合的な学習

 本校における情報教育は、個々の能力に応じた情報の収集、選択、加工、構成、発信を通して主体的、自発的な課題解決の能力を育てることをねらいとしている。インターネットやマルチメディア、学校図書館等を積極的に活用した教育活動が、情報教育を軸とした総合的な学習の時間であり、本校ではチャレンジタイムと称して展開してきた。

 (2) 実践的、体験的な学習の展開                          

 インターネットやマルチメディア等による情報収集そのものは疑似体験ではあるが、現状の子どもたちにとっては貴重な体験的な学習である。一方では、情報化が進めば進むほど、五感によって外界を認識する体験の必要性が強調されている。本校の総合的な学習の時間では、体験を重視し学年の発達段階を踏まえた取り組みを進めてきた。                   

 3年生では、教科学習と連動させながら「虫はかせになろう」「自分の木となかよくなろう」を年 間のテーマとして実践してきた。前者では、子どもたち一人ひとりが各々の虫を「見つけだし」「調 べる」「飼う」活動を展開した。年度末の学習発表会では、それらの成果も盛り込んで実施した。 4年生では、毎月の第1、3土曜日の1、2校時に位置づけたが、その活動は弾力的に運営してきた。年間のテーマは「しりたがり 見たがり やりたがり 友だちと一緒に調べてみよう」で、子どもたちの課題は、学期毎に設定されチャレンジノートを活用した取り組みをしてきた。   

 5、6年生では、毎週金曜日の5、6校時をチャレンジタイムとして設定し、学年学級の枠をはずした合同の形で進めてきた。今年度は子どもたちの課題の共通化を図り9つのグループを編成した。小グループによる活動もあれば、グループに所属しながらも個人による活動も保障したきた。ちなみに今年度の編成グループは、芸能、スポーツ、環境、動植物、料理、旅行、天文、学習、趣味である。                                 

 (3) 情報通信ネットワークの活用

 マルチメディアに対応するリテラシーの育成では, 様々な情報を得て、自分なりに処理、加工し生活に役立てることが今後更に必要になってくる。

 しかし、インターネットの導入以前と以後では大きな違いを呈してきている。対コンピュータであったものが、自分の意志や相手の意志をも伝える仲介役を果たすようになり、対機械、対ソフトといった観点から、対人間という相手の存在を意識させる必要性が出てきたからである。

  本校では、校内にあるソフトを利用してインターネットを視野に入れたマルチメディアに対応するリテラシーに取り組み、多くの子どもたちはインターネットの操作方法を身につけている。そのことが情報教育を軸とした総合的な学習を可能とし、また教科学習等への活用を可能なものとしている。

   1年生・・・キーボードやマウスの操作に慣れよう

   2年生・・・自分の作品をつくろう

   3年生・・・ネットワークを使って遊ぼう

   4年生・・・ネットワークを使って友だちと交流しよう

   5年生・・・インターネットを使ってみよう

   6年生・・・インターネットで世界の友だちと交流とよう

 (4) 総合的な学習「チャレンジタイム」の取り組み例                  

  @「ケナフを育てよう」

 ケナフって何、どんな植物、どんな葉っぱ、大きさは、花は咲くの、必ず紙ができるの、名前さえ知らないケナフに子どもたちの疑問は広がり、興味津々に情報の収集がはじまっていった。これは新100校 プロジェクトの「ケナフを育て紙にする。その様子を日本全国で比べてみよう」の呼びかけに応えて活動してきた10人の子どもたちの取り組みである。初めて見るケナフの種、花壇を耕し、毎日の世話と観察が続けられてきた。デジタルカメラによる記録をホームページにその経過を発信する。逆に全国各地からの情報を入手し比較しながら活動を進め、ついには紙を作ることができた。

  このグループはケナフが地球環境問題に発展したり、全国各地の学校との交流、ケナフを育てる等々の体験をした。また育ったケナフの大きさに全校の子どもたち共々教職員をもびっくりさせられ、紙の作品に仕上がった感動を味わうことができた。

  A私たちの地球

 環境問題を取り上げたい。しかし、漠然としていて何から手をつけていいのか皆目見当がつかない。6名の子どもたちはCD-ROMを使用して用語の理解やインターネットによる情報収集をした。このことが、「子どもエコクラブ」の活動に参加することとなり、身近な河川の水質検査、酸性雨、CO2から環境を考える課題へと具体的にしていった。

 縄文人が住み着いていた「境川」は、汚染され地域の問題でもある。早速にも水質や酸性雨、CO2検査方法を調べる活動に入り、その調達には教師の支援が必要であった。

 しかし、その調査は子どもたちのみならず教員も初経験である。当然子どもたちは興味をもち自発的な活動となった。その調査結果はその都度ホームページに載せ情報の発信をした。

 

2.平成10年度の成果と課題

 (1) 地域教育力の活用

 課題解決の過程で資料等を収集する場合、学校図書館やインターネット、マルチメディアだけでは十分とはいいがたい。より実践的、体験的な学習を図ろうとすれば実 際に見る、聞く、触れる、やってみる等々の五感を駆使した学習が是非とも必要であり、豊かな感性をも育む意味からも重要である。

 地域にある自然、文化、施設、そして人材等の生きた教育力を活用する。そのためにも教師は柔軟な対応や支援をしなければならない。反面、地域教育力の把握には苦慮する面も大きい。

 (2) TTの活用

 本校では子どもたちの思いを大切に具体的な活動を支援し、生きる力を培っていきたいことから、学年を越えた支援体制・協働体制を進めている。子どもたちが十分に課題解決が図られるため、気軽にコンピュータ室を利用できる等が期待されるからである。

 教科学習におけるTTは現在3、4年生で実施されているが、総合的な学習の時間では、3年生では学級で、4年生では学級枠をはずした学年でTTを、5・6年生では学年学級枠をはずし、1・2・5・6年担任及び専科教員による1グループ複数によるTTを組んでいる。

 (3) 環境の整備

 今後、機器や環境の充実に向けて、インターネットや調べ学習ができる第2コンピュータ室や学習情報室、図書室等の整備が必要であり、校内ランを早急に実現させて、各教室でも使用可能な分散化と回線の高速化が必要になってきている。

 更に、児童のリテラシーを高めるためにも校内ホームページを充実させ、児童の学習成果の保存と蓄積等を図ると共に教師の研修も充実させて、より積極的な活用を図っていきたい。

 そして、2002年の新指導要領の完全実施に向けて全教育活動を見直しながら、インターネット等の有効活用を図っていきたい。

 

3.新100校プロジェクトに参加して

 幸いにも、新100校プロジェクトの参加やPTA、市教育委員会の積極的援助等もあって、教育機器環境は徐々に整ってきている。

 教育活動で積極的にインターネット等を活用することで、広範で 多様でより新鮮な情報が迅速・容易に収集でき、映像上ではあるが体験的に学習することによって学習の効果は向上し、広がりが出てきた。特に、課題解決学習や調べ学習等を進める上では大変効果的で、創作・表現意欲が増し、児童の主体的・自主的な活動が活発になってきた。

 また、教師間の情報交換が活発になって、教材研究や授業設計に必要な資料が容易に幅広く入手でき、情報教育はもとより、国際理解教育、環境教育、福祉教育等生涯教育に向けた学習の展開ができるようになり、教師は、児童側に立って考えるという支援者としての立場が確立しつつある。

 今、本校はインターネット等の日常化・定着化に向けて、一歩一歩確実に歩んでいる実感がある。

 来年度秋には、市教育委員会委託教育実践研究校として広く公開する予定である。

 

このほか、具体的実践を知りたい方は、こちらへどうぞ。

戻る