大津市立平野小学校
大津市立平野小学校は琵琶湖の南端にあって、生徒数は850名程度のごく普通の公立小学校である。1995年に「100校プロジェクト」への参加を契機に、「小学校におけるインターネットの利用」というテーマで情報教育の研究をおこなうことになった。以降4年間、毎年各学年で研究授業を実施し、インターネットの利用研究がスタートした。また、この4年間に職員の手で校内LANを敷設したり、校内で作成した研究紀要の販売資金を元手に中古でコンピュータを買い揃えたりして、次第に情報機器のハード環境を整備していった。現在では、4台のサーバーが稼働し、約40台の端末が校内各所に配置され、自由に子どもたちが使っている。
ネットワークを活用する教育的意義の一つに「共同学習」があげられる。ネットワークを活用することで、今まで知り得なかった他校の子どもたちと互いに交流することができる。僻地校や小規模校の子どもたちは、ネットワークを用いて新しい友達を見つけることができるだろうし、多数の中に埋もれ孤独感をかみしめている子どもにも、もしかすると光を差し込むことができるかもしれない。平野小学校で今まで取り組んできた共同学習は以下のようなものである。
95年度 |
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96年度 |
インターネットカルタ大会 チャレンジキッズ |
97年度 |
全国ライブカメラマップ 全国学習資料マップ ごんぎつね遠隔共同学習 国際調査隊 全国発芽マップ チャレンジキッズ レーティング研究WG |
98年度 |
びわ湖共同学習 ビデオクリップを利用した教材作成 国際調査隊 全国発芽マップ インターネットカルタ大会 ごんぎつね遠隔共同学習98 チャレンジキッズ バリアフリーキッズ レイティング研究WG 情報倫理のカリキュラム共同開発 学校検索 ダイナリンクウェブ |
クイックタイム3.0やビデオクリップを簡単に撮影できるデジタルカメラの登場により、従来よりたいへん簡単にビデオクリップをWEB上に発信できるようになった。また、通信環境の向上により、今までより高速で高品質な通信環境も次第に整いつつある。このような環境の変化を背景に、ネットワーク上でビデオクリップを教育に利用する教材の作成が現実味を帯びてきた。そこで、平野小学校では全国の多くの教育現場の方と共同で、ビデオクリップを利用した教材リソースの共同製作を呼びかけることにしたのがこの企画である。
社会の情報化は、社会を構成する個々の人間が好むと好まざるとに関わらず社会が一体となって突き進んでゆくことになる。このため、国民は社会の情報化がもたらす恩恵を等しく享受する権利を持っているのと同じように、社会に生きるすべての人間は情報化がもたらす危険性や暴力性のリスクをも等しく負うことになる。つまり、情報化がもたらす多くの課題は国民共通の課題とならざるをえないのである。したがって、これらの情報化のもたらす様々な課題を解決する能力は、すべての国民が等しく身につけておかなければならない「生きる力」の一つであって、学校教育がこの領域で積極的に責任を果たさなければならないのである。平野小学校では昨年度よりニューメディア開発協会が中心となって進めているレイティングの運用実験に小学校として参加している。その中で、レイティング基準や適切なプロファイルの作成などの研究に参加した。
びわ湖は日本一の湖で、滋賀県の面積の六分の一をしめ、滋賀県の文化や産業に昔から深く関わっている。また、滋賀県だけでなくびわ湖の水は近畿各県の飲料水に利用され、水を通して近畿各県が結びついている。
びわ湖は南北に長く、北部と南部では自然や文化などにずいぶん違いがある。つまり、滋賀県下の学校はびわ湖をぐるりと取り囲んで建っているのである。そこで、各学校からびわ湖に関する情報を発信し、このページにまとめることにした。このページはいわば、「子どもたちが作るびわ湖百科事典」をめざし、それぞれ自分の関わりからびわ湖を調べ、わかったことを発信してゆこうと考えている。
4.新100校プロジェクトに参加して
「総合的な学習の時間」創設に代表される教育改革は、一言で言えば「子どもをみすえた創造的教育」の実現であり、教育の規制緩和である。情報教育の研究は、ともすると機材やシステムなど、ハードや学習環境の「利用法」が中心に語られる場合も少なくなかった。もちろん、それら学習環境の構築や整備が大切であることは今まで十分述べてきたが、しかし忘れてはならないのは、教育の主役は子どもたちであり、我々の取り組みもすべて「それは子どもたちのためになるのか」という視座を持たなければならないということである。今後も「総合的な学習の時間」実施に向けて、子供が中心となる学習課程の創造につとめなければならない。
こどもたちの学習を支える学習環境の構築や整備も大切な課題である。とりわけ、ネットワークの面から言えば、校内LANを整備し学校独自のサーバーを教師が管理できるスキルの向上が今後の教育の情報化を進める上での鍵となるだろう。ダイアルアップでの接続は「小作農」であって、学校には専用線が必要である。
6年前、平野小学校で情報教育の研究を進めるに際してみんなで話し合って決めたことがある。それは、「1人の100歩より、100人の1歩を大切にしよう。」ということである。我々は常にこのスタンスで研究に取り組んできた。そのため、飛び抜けた研究成果もない代わりに、職員全員が情報教育に関する理解や必要性を自覚し、情報機器の扱いについてもある程度の水準は達成できるようになった。毎年4月に転勤してくる先生方も半年も経てばサーバーにアクセスして公務分掌のファイルを加工することができるようになる。今後もこのような職場のコンセンサスと連帯が大切である。
100校プロジェクトへの参加が決まったとき、前校長のM先生は大津市教育委員会に掛け合って下さって、当時の最新鋭パソコンを8台、特別に導入されることになった。このことがあったおかげで校内LANの構築がスムーズに進んだと言える。また、M校長は県内の社会教育施設が持っている琵琶湖に関する情報を積極的に活用できないかと提案され、県立琵琶湖文化館や県衛生環境センターなどから「琵琶湖の魚」「琵琶湖のプランクトン」の情報をいただいて平野小学校のサーバーから発信することになった。このように平野小学校がインターネットの活用に関して4年間取り組んでこられたのもこのM校長先生の貢献に追うところが多く、このような管理職の先生の確保とリーダーシップの発揮が大切である。
今後の教育の情報化を進める上で、教職員のスキル向上が鍵であると述べたが、ただ単に研修を行うだけで情報化を進展させることは困難が予想される。そこで、職場の情報化を支える教員の「リーダー」と、それらのリーダーと連絡を取り合って広域ネットワークの視点で教育の情報化を推進する専門職である「情報化推進コーディネーター」の育成が今後必要とされるだろう。