新100校プロジェクト 平成10年度実施報告

宇都宮大学教育学部附属中学校

 

1.インターネット利用状況

 本校は文部省指定の研究開発学校として,平成7年度から9年度までの3か年間にわたり,総合学習教科「学び方」を教育課程に位置付けた研究を行った。総合学習教科「学び方」は,問題解決に必要とされる資質や能力を育成するために新たに開発した教科である。総合学習教科「学び方」は,問題解決に必要とされる諸技能を習得させるためのいくつかの科目を,第1学年から第3学年にわたり順に履修されるように配置されている。

 研究開発学校としての指定は平成9年度をもって終了したが,本校では総合学習教科「学び方」で扱う学習スキルの中でも,コンピュータリテラシーの重要性に着目し,第1学年後期に「情報」という科目を設定し生徒に履修させた。「情報」は,週1回2単位時間で実施した。「情報」の内容は,以下のとおりである。

 []コンピュータを使ってみよう

  ・ネットワーククライアントとなっている生徒用PCにログオンする方法を知る。

  ・日本語入力の仕方とワードプロセッサの使い方を知る。

  ・文字の修飾の仕方,及び文書のレイアウトの仕方を知る。

  ・与えられた文書例と同じ文書を作成する。

  ・作成した文書の印刷の仕方を知る。

  ・作成した文書の保存の仕方を知る。

 []担任の先生にメールを送ろう

  ・インターネットメールの使い方を知る。

  ・インターネットメールを作成する際に注意する点を知る。

  ・メール本文を書く。

  ・担任の教師に宛てて,メールを送信する。

 []表計算ソフトを使ってみよう

  ・表計算ソフトの使い方を知る。

  ・モデルデータを入力する。

  ・入力したデータを操作する。(計算,並べ替え)

 []コンピュータを利用して,いろいろな種類のグラフを作成しよう

  ・過去から現在の,自分の健康診断の結果を入力する。(身長,体重,座高)

  ・入力したデータをもとに,さまざまなグラフを作成する。

  ・作成したグラフを見比べ,それぞれの特徴を考える。

 []スポーツテストの結果をモデルデータと比較し,考察してみよう

  ・本年の自分のスポーツテストの結果を入力する。

  ・本校平均,全国平均などのモデルデータを入力する。

  ・自分のデータとモデルデータを比較するための観点を考える。

  ・さまざまな観点からグラフを作成し,比較する。

 []インターネットを体験しよう

  ・ブラウザの使い方を知る。

  ・URLの入力の仕方を知る。

  ・いくつかのWebページを閲覧する。

  ・検索サービスの使い方を知る。

  ・自分の興味・関心のある事柄に関するキーワードを入力し,さまざまなWebページを閲覧する。

 []インターネットで得られた情報をレポートしよう

  ・Webページにある文字や写真などを,複写し貼り付ける方法を知る。

  ・自分の興味・関心のあるWebページを閲覧し,そこで得られた情報をレポートにまとめる。

  ・完成したレポートを印刷する。

 

2.平成10年度の成果と課題

 ・インターネット接続環境について

  インターネット接続環境が本校にもたらした教育的効果は絶大であった。総合学習教科「学び方」には,問題解決に必要とされる情報収集のスキルが取り上げられており,それを活用して自らが設定した「課題」を追究する科目が設けられていたからだ。第2学年後期から第3学年前期のおよそ1年をかけて,生徒は自らの興味・関心に基づく「課題」を設定し,追究活動を行った。その中で培われたスキルを生かして,生徒たちは他の必修教科においても,積極的にインターネットを用いて情報収集活動を行った。また本校では,終日PCルームを開放していることから,昼休みや放課後などもたくさんの生徒がWebページの閲覧を楽しんでいた。しかし,100校プロジェクトの終了に伴い,インターネットの接続先であった宇都宮大学より,平成10年3月をもって切断されることになった。それまでの経緯からインターネット常時接続環境が不可欠と判断した本校は,独自にインターネット接続環境を維持するための方策を検討した。生徒の実態に即応したり,また授業への柔軟な対応を可能としたりするためには,外部に頼ることなく自力で運営することが重要と考え,OCNエコノミーによる常時接続を選択した。ドメイン名を取得したり,DNS,MAILなどのサーバを立ち上げたりすることには多少の困難があったが,職員相互の協力のもとに何とか実現することができた。また,本校が国立大学の附属学校であることが,予算措置などの面で有利だったことは確かである。紙面の都合で詳しく紹介することはできないが,本校のインターネット接続環境の導入・運営に関することは,今後各学校でそれらを行おうとする際の参考になると思われる。

 ・生徒の変容について

  「情報」の授業終了後,生徒・保護者に対してアンケートを行った結果,ほとんどの回答において「情報」の授業の有用性を肯定する内容が見られた。生徒は「Webページの閲覧は楽しい」「さまざまな情報を得られることがわかった」「自分の興味・関心に基づく情報収集活動は面白い」「調べようとする意欲が高まった」などの意見を述べ,保護者は「これからの情報化社会に対応する授業内容である」「コンピュータリテラシーを学ぶことは,社会に出てすぐに役立つ」「自宅でも,積極的にコンピュータを活用するようになった」などと述べている。インターネット上の情報は現在,「氾濫」とも思えるほど多岐にわたりまた混沌としているが,目的を持って活用しようとすれば十分に有用であることが確認できるだろう。また,情報を取捨選択することは他のどんなメディアにおいても必須であろう。図書・文献を中心に情報収集活動を行っていた時代には,文字を書き写し図や絵などを切り貼りすることがあたりまえで,それがかなりの労力を要するものであった。しかしコンピュータ上ではそれがきわめて容易になることに加え,居ながらにして時には海外へ出さえも瞬時に訪問することができるということは画期的である。また,インターネット上の情報は時事問題に強く,最新の情報が得られるということも生徒の興味・関心を高める上で効果的であったと思われる。何より,生徒の中にコンピュータアレルギーなるものがほとんど見られないことも大きな成果であろう。現在も,昼休み放課後のPCルームは,生徒の姿で一杯である。

 

3.新100校プロジェクトに参加して

 100校プロジェクト・新100校プロジェクト参加校として4年が経った。その間,本校では特にこれといって目玉となる活動は行わなかった。しかし,インターネット接続環境を校内のさまざまな場所に実現するため,校内LANを設置しその有効な運営を模索してきた。その結果,インターネットを今あるネットワークの延長ととらえ,きわめて日常的に利用することとなった。その過程で,ネットワークを活用するためのルールやモラルなどが自然に浸透してきたように思われる。これからは,インターネットは特別な存在ではなく,ごく当たり前にそこにある情報源となってくるだろう。そのような時代に先駆けていくつかの実践をなし得たことに誇りを持つとともに,それを可能にしてくれたこのプロジェクトに心から感謝する。


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