新100校プロジェクト 平成10年度実施報告
群馬県・前橋市立第四中学校
1.インターネット利用状況
(1) 生徒個人のメールアドレスの発行
マルチユーザ環境を構築する上で生徒個人のユーザ名とパスワードをWindowsNTに登
録した。これにより, 全生徒が個人のデータフォルダをNTサーバに持つことができるよ
うになった。また,生徒個人のメールアドレスを Bsdサーバに全校生徒数分登録し,2・3
年生の全生徒に発行してその活用を図った。ユーザ名とパスワードはアルファベットと
数字を組み合わせた。
また,希望する教職員にもメールアドレスを発行し, 電子メールを利用してもらった。
(2) メールの利用
ネチケットについて学習を深めながら,メールの利用を行った。メーラは
AL-Mailを使
い,その使い方を指導し実際にメールの交換を行った。初めは,学校内で友達同士の交換
から始まり,続いて前橋市の MENETのホームページの交流の広場でメールを読み,メール
を送って交流した。また,校内でメーリングリストを作り,技術科の授業で生徒への課題
示や自己紹介のメール送信などに利用した。
(3) 生徒会のホームページの制作と交流
生徒会のホームページを作り,生徒会の活動や行事,生徒会役員の紹介などを発信した。
また,前橋市立第二中学校の生徒会とも交流を進めている。生徒会用のメールアドレスを
作り,メールを通して,お互いの学校の紹介や特色,また,質問などを交換している。
(4) 生徒個人のホームページの制作
2・3 年生全員が個人のホームページを制作し,自己紹介などを行っている。しかし,個
人情報の問題から公開はしていないが,学校内の LANで見ることができる。
(5) 修学旅行のホームページの制作
3 年生が5 月に京都・奈良に修学旅行に行ってきたので,その旅行記をホームページで
発信した。まだ,全ての班が発信できていないが,今回は,英語の授業とも絡めてできれ
ば英語で制作しようと生徒に投げかけた。
(6) 英語科の授業での取り組み
最近の英語科の授業では,既習事項を身に付けさせるために,インフォメイションギャ
ップを用いたインタビュなどのゲーム的活動や買い物や電話をかける時の会話練習など多
くの興味深い言語活動が行われるようになってきている。しかし,ややもすると単なる楽
しさやメッセージの存在しない擬似的な体験しか残らないこともある。今年度はさらに生
徒にとって「自分のことを相手に知らせたい,相手のことを知りたい」というメッセージの
やり取りが存在するようなコミュニケーション活動を設定することで英語学習に対する意
欲や四領域に渡ってバランスの取れた英語力を身に付けてもらいたい。
また,最近,「国際理解教育」や「情報教育」という言葉をよく耳にするが,今後21世紀を
生き抜かなくてはならない生徒にとってこのような知識・技能は必要不可欠であると言え
る。このようなことから,英語科の授業において,生徒が英語を実践的に使えるような課
題を設定し,時にはインターネットを利用して教室にいながら海外の人とコミュニケーシ
ョンしたり,自分の必要な情報を引き出すような活動を積極的に取り入れて行けば,生徒
の英語を使ってコミュニケーションしようとする意欲は高まるであろうと考えた。
< 活動実践例>
(1) 京都ガイドツア (2) ビデオレタ制作(日本の文化紹介)
(3) 俳句や3コマ漫画
制作 (4) 電子メールで自己紹介 (5) 海外での「手塚治虫」について調べる
ここでは,ビデオレタ制作の学習の流れを例に取りあげて説明する。全7時間予定。
・ 本題材の学習内容と学習の進め方について,ALTとJTEの説明により理解する。
・ 6つのグループに分かれ,どこの国の学校と文化交流するか決定する。
・ ビデオレターで日本の文化を紹介する時のトピックを日本語でまとめる。
・ 電子メールで送る質問を簡単に日本語でメモする。
・ どのような内容のビデオレタを制作したらよいか,卒業生の作った例文を見る。
・ ビデオレタを制作するための原稿を英語でまとめる。
・ 電子メールを送る相手の国の文化についての質問を英語にする。
・ グループでビデオ撮影のときの役割分担をする。
・ 相手にビデオレタの内容が効果的に伝えられるように何回も練習する。
・ 相手にさらに理解してもらえるように実物や写真・絵なども用意する。
・ ビデオレタを撮影する。
・ 電子メールで相手の文化についての質問を送る。
・ 各グループのビデオレタを持ちよって,ビデオ鑑賞会を開く。
・ 各作品を見ながらお互いに良かった点,工夫されていた点などを積極的に評価し合う。
・ 今回の活動について評価カードにまとめる。
・ 相手からの質問に対する回答を読んで理解し,模造紙にまとめる
英語科の授業の実践で,次のような成果と課題があった。
(1) これらの体験を通して,生徒は身につけた言語材料を駆使しながら自己の発想を生か
して,自分なりの内容や表現を工夫することに対する意欲が持てるようになった。
(2) 海外の学校の人に理解してもらえるように,日頃じっくり考えたことのない日本の文
化や生活習慣について個人の創意工夫を凝らしたビデオレタや電子メールを制作する楽
しさを味わうことができた。また,これらに対する相手の学校からの感想や返事を受け
取った時はさらなる充実感を味わう事ができた。さらに,海外の学校との交流を通して,
様々な国の文化・生活習慣や人々の生活に目を向け,相手についてより深く理解しよう
とする意欲を持つことができるようになった。
(3) 実際に制作したビデオを海外の学校と交換するという具体的な目的は,生徒の主体的
な学習への強い動機になった。
(4) グループ活動を行う中で,各生徒の得意とする役割を分担することによってお互いが
協力し合い,英語が苦手な生徒も積極的に取り組むことができた。
(5) 海外の学校が夏休みに入ってしまい,メールで交流を申し込んだが
1校しか返事がこ
なかった。結局 ALTの協力を得てビデオレタの交換をした。また,予想以上に撮影に時
間がかかり,予定時数をオーバしてしまった。綿密な計画と事前準備が必要である。
技術科のホームページ作りでは,生徒が次のような感想を書いている。
「 技術をしていて一番おもしろかったことは,ホームページの制作です。今まで体験し
たことを色々書いたり,自分で書いた絵を載せたりして一生懸命作ることができた。それ
を後で四中のホームページで見たりすると達成感や満足感を得ることがでた。」
本校では,1 年の時から技術・家庭科の「情報基礎」領域でコンピュータやインターネッ
ト,電子メールの利用などの学習を行っている。指導資料作りやコンピュータの環境設定
などでかなりの時間を要するが,生徒にとっては有意義な学習体験となる。さらに,各教
科で貴重な体験や実践を行うことができ,生徒の意欲を喚起でき, やればできるという自
信を培うことができた。インターネットのすばらしさをあらためて実感した。また,今回
の英語科の授業実践を通して,コンピュータ(インターネット)やAV機器などは,教室にい
ながらにして生きた英語を生徒に触れさせることのできる大きな扉であることを実感した。