新100校プロジェクト 平成10年度実施報告

長崎市立淵中学校


1.インタ−ネット利用状況
(1)短歌の鑑賞
  古典作品の学習を進める中で,生徒が創作した作品を,E-mailを使用して学校外の人
 に批評してもらい,推敲を行うという取り組みを行った。これによって相手を意識した
 創作をすると共に,鑑賞の幅も広げることを意図した。
  和歌の鑑賞にしても,その和歌を現代風に作り替える作業にしても,それらを見てく
 れる外部の人がいるということで,生徒たちはこれまで以上に意欲的に学習に取り組む
 ことができた。
  また,自分の意見や考えを表現する場としてインタ−ネットの世界があることを認識
 すると共に,インタ−ネットを活用することで,人から意見をもらうことができるとい
 うことを実感できた。
(2)日本の政治と政党
  普段身近に感じることのない政治が,自分たちの生活と深く結びついていることを理
 解するため,政党の政策を1ヶ月間にわたって調査し,その中で生まれた疑問を解決す
 る手段として,政党のWWW を見たり,E-mailを送るという取り組みを行った。
  自分たちの疑問をE-mailを使用して質問することで,一人一人が社会の一員として政
 治に参加する姿勢を身につけることができた。
(3)冬の天気の特徴
  インターネットを利用して気象情報を取得し,冬の天気の特徴を理解するという取り
 組みを行った。
  冬の天気の情報を,日本各地の様々な場所から,幾つかの種類(ひまわりの画像,天
 気図等)収集して検討することで,その特徴を理解することができた。また,実際の天
 候と比較することで,身近なものとしてとらえることができた。
(4)外国の中学校とのE-mailの交換
  郵便に比べて簡単に素早くメッセ−ジのやりとりができるというE-mailの利点を用い
 て,外国の同年代の子供たちと積極的にコミュニケ−ションを図ろうとする取り組みを
 行った。
  E-mailを読んだり,書いたりしていくことを通して,積極的にコミュニケ−ションを
 図る態度が養われ,更に学習が進むにつれ,外国語に対する興味も高まり,その言語を
 話す人々やその言語を育んできた文化に対する理解を深めた。
  また,外国のことを受け身的に理解するだけでなく,自分たちのことや学校,身の回
 りのこと,興味を持っていることなどを知らせることによって,日本の文化や日本人の
 考え方などを見つめ直すと共に,海外に知らせることにも通じると考える。

(5)WWW 美術館鑑賞
  インタ−ネットを利用することによって,間接的ではあるが,時間的な制約に縛られ
 ることなく,美術館とその所蔵作品に触れることができるよう取り組みを行った。
  生徒たちは,部活動や塾等で忙しく美術館へ行く余裕もないのが現実である。しかし,
 美術館や博物館などの身近な文化施設を積極的に活用する態度や習慣を育てることは,
 生涯学習においても大切なことだと考える。
(6)廃棄物の処理と環境保全
  生活排水やゴミ処理に関する情報をインタ−ネットを利用して取得し,地球規模で見
 直しが訴えられている環境問題について考察する取り組みを行った。
  教科書に示されたものだけでなく,インタ−ネットの使用により得られた,具体的な
 事例などの情報から,環境問題を身近な問題としてとらえることができた。
  また,日常生活の場面でも環境保全に対する関心が高まった。
(7)食品新聞の情報収集
  生徒が自らの食生活を見直し,健康な生活を送るために,インタ−ネットを利用して,
 食品の特徴を調べ,食品新聞を作成した。
  生徒たちは,最近話題になっている食品や身近にある食品についての具体的な情報を,
 視覚的に得ることで,自らの食生活を振り返り,食品への関心を高めた。
(8)職業調べのための情報収集
  進路に対する意欲付けを図るため,例年1年生の特別活動で「働く人びとを知る」こ
 とを学習の中心に据えて,様々な職業についてE-mailを利用して,それぞれの職業の方
 の生の声を入手し,学習を深めている。
  特に本年度は,調査報告をHTML文書で作成し,データベースとして本校WWW に掲載し
 た。こうした活動から,生徒たちはこれからますます進んでいくであろう情報化の流れ
 を体で感じると共に,情報を処理する能力を培えたと考える。
(9)インターネット同窓会の企画
  本校では,WWW 開設時から同窓生に対して,WWW 上に交流の場を提供している。
  「卒業すれば終わる」という生徒と学校との関係を,卒業してからも結びつきのある
 ものとするよう,卒業生・在校生・教職員等,本校に関わった者すべてが参加し,意見
 を交換したり,思いを述べたりすることができるような交流の場を設定し,学校という
 枠を越えた「人的ネットワーク」の構築を行っている。
(10)パソコン部による観光マップ
  本校へのE-mailの中には,本校第2学年でも行っている修学旅行の事前学習による質
 問が多く含まれている。
  そこで,パソコン部による観光マップの作成を行い,WWW 上に公開したところ,多く
 のメールが寄せられ,現在もパソコン部が交流を深めている。

2.平成10年度の成果と課題
 本年度は,昨年度までの取り組みをより一層充実したものとするために,教科・特別活
動におけるインタ−ネットの有効利用を中心に据えて,研究を行った。
 そうした活動の中で,教師が指示を与えなくとも,生徒たちが自主的にインタ−ネット
を活用して情報を収集するようになった。インタ−ネットが,新聞や書籍と同等に,情報
収集の一手段として生徒たちに浸透すると共に,生徒たちが機器の操作に慣れ,抵抗無く
インターネットに親しむようになったことが本年度の大きな成果である。
 また,国内外の中学校や様々な人々と交流を繰り返すことで,コミュニケ−ションに対
する関心が高まり,学習に積極的に取り組む姿が見られた。
 しかし一方,交流が頻繁に行われるようになったことで,ネチケットの問題が浮上して
きたことも確かである。特に,E-mailに対する返答の遅れや文章の内容など,今後検討し
ていかなければならない課題である。
 また,ネットワ−クを利用した犯罪や教育上好ましいとは思えないWWW の増加など,ネ
ットワ−ク上のモラルの低下も感じられ,情報リテラシ−の向上を図っていく必要性も痛
感している。

3.新100校プロジェクトに参加して
 本年度は,長崎市教育委員会委託研究の最終年度ということもあり,成果発表会を行っ
た。市外,県外からの参観者もあり,インタ−ネットの教育利用に対する関心の高まりを
感じた。しかし,各校ともインタ−ネット環境が整っていないため実践例に乏しい。今後,
現場での教育利用の実践例を広く収集,公開するような情報デ−タベ−スを構築すること
によって,インタ−ネットの教育利用に関して,啓発を図る必要があると考える。
 新100 校プロジェクトがどのような展開を見せるのか定かではないが,インタ−ネット
の教育利用に対して,地域の中核として今後も研究を続けていきたいと考える。


研究

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