清泉女学院中学高等学校
1.インターネット利用状況
本校ではコンピュータ教室並びに図書室におかれているすべての生徒用コンピューターから自由にインターネットにアクセスできる環境が整い、授業において、あるいは自由時間に活発にインターネットが利用されるようになった。
1.1 自主企画
「学校を越えたネットワークコミュニケションの試み―オンラインディベート―」
昨年度に続き、今年もインターネット上で他校の高校生と「オンラインディベート」を以下のように実施した。
(1) 1998年9月 第3回オンラインディベート 東北学院高校文化祭企画に参加
(2) 1998年11~12月 家庭科の授業において、第4回オンラインディベートを実施。
(3)
1999年2月 オンラインディベートの参加者が本校に来校、交流会(オフラインミーティング)がもたれ、そのときに口頭によるディベートが行われた。なおこのディベートを展開するに当たって、新100校の重点企画である「既存データベースの活用」を図って資料の収集を行った。
1.2 「GLOBE」(環境のための地球学習観測プログラム)への参加
文部省が実施したグローブ・プロジェクトの参加校として、中学生高校生のボランティア約100名が気象観測データを定期的にインターネットを通じて送り続け、さらにそのデータをもとに高校1年生のゼミ、高校1年生の「理科」の授業ならびに中学2年生の「理科」の研究授業が行われた。
1.3 中学2年生の「情報基礎」の授業におけるホームページづくりの実施
中学2年生の「情報基礎」の授業では生徒に「インターネットの利用の仕方」を8回にわたって行い、グループでホームページづくりの課題に取り組んだ。
その生徒の作成したホームページの作品集の一部を、神奈川新聞社ならびに岩崎学園主催の「ソフト・アイディア・コンテスト」に応募し、「特別賞」を受賞した。
1.4 高校1年生のゼミ「インターネットで情報発信」の実施
高校1年生の希望者30名によってインターネットで情報発信を目的としたゼミが設置され、インターネットによる情報検索、おすすめホームページの紹介、さらにホームページづくりの課題を追求した。
1.5 本校ホームページの充実
中学2年生の「情報基礎」の授業で作成した作品、高校1年生の「インターネットゼミ」の作品、中学3年生の「論文要旨集」の公開、高校2年生の「学校日誌」の紹介など生徒の作ったものの発表の場として、本校のホームページが利用されるようになった。
2.平成10年度の成果と課題
2.1 インターネット利用の日常化
昼休みや放課後などの自由時間にインターネットにアクセスする生徒によって、コンピュータ教室はほとんどいつも満員という状況になり、生徒にとってインターネットの利用は学校生活の一部となって定着している。生徒たちはいろいろなホームページにつなげて情報収集をしたり、メールやチャットを利用して学校を越えたコミュニケーションを楽しむようになった。
2.2 インターネット・リテラシーの修得
オンラインディベートやグローブ・プロジェクトへの参加に刺激され、生徒は自然にインターネット・リテラシーの能力を身につけてきた。
特にそれが顕著に現れているのは、中学3年生の自由研究の課題である「論文」の作成においてであり、生徒たちはインターネットを通して情報収集をしたり、アンケートを実施したりするようになったということであろう。
さらにその研究の成果を世界に向けて「情報発信」できるように育てていくことが次の課題になるのではないか。
2.3 課題
(1)
生徒が自由にインターネットにアクセスできるようになって、インターネットの持つ負の側面の認識やネティケットの修得、プライバシーや著作権の問題などについて生徒とともに考えていく必要性を痛感する。
(2)
単に情報収集のためのみの利用にとどまらずに、自分たちの意見を発表したり、作品や研究の発表の場として利用するなど「情報発信」のために活用していくということを意図的に追求していきたい。その場合にどのようなメッセージを発信し、どのようなコンテンツを公開したらいいのかという「価値ある情報」「世界と共有すべき情報」についての意識を育てていきたい。
(3)
特に生徒自身がこれからの自分の生き方を考えるための参考になるような「生き方データベース」の構築を本校独自の課題として設定し、それを学校や地域あるいは国を越えた協働のサイバースペースとなるように発展させること。
(4) ファイアーウォールの確立などセキュリティの確保
校内向けのイントラネットを整備し、校内で公開される内容と校外に向けて公開していくべきコンテンツとを分け、相互にファイアーウォールをもうけてセキュリティを確保する。
(5)
「100校プロジェクト」が終わるに当たり、サイトとしての技術的独立性を確立しなければならない。とくにサーバーの運用を自分たちでできるようになることをめざす。
3.「新100校プロジェクト」に参加して
インターネットを教育に活用していくという先駆的な試みに参加できたことを、とても光栄に思うし、そのような環境が与えられたことをこのプロジェクトを支えてくれた多くの方に心より感謝したい。とくにCEC
や IPA
などの暖かいサポートがなかったら、とうていここまで来ることはできなかったし、また神奈川県の「100校関係者」によるネットワーク
KICE
(神奈川県インターネット教育活用研究会)
の労を惜しまない技術的支援には頭の下がる思いである。このボランティア精神なささえられたネットワークによる協力態勢こそがこれまで、そしてこれからも「インターネットと教育」を支える源泉であることを確信する。
この成果を自分たちだけのものとしてしまうのではなく、この経験を生徒たちが受け継ぎ発展させていくことを通し、あるいはこれを通して築きあげてきた担当者のネットワークを通して、これからこの課題に取り組もうとしている多くの教育関係者に対して広く分かち合う姿勢を持ち続けたい。これまで与えられてきたことをこんどは与えることによってさらに発展させていくことこそ、このプロジェクトに参加してきたものとしての責務であろう。
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