新100校プロジェクト 平成10年度実施報告

高知県立高知西高等学校


1.インターネット利用状況

一般に、授業でのパソコン・インターネットの利用方法として、CAIやシミュレーションといったものなどがあげられる。しかし、授業で普通に行われている教師の活動(学習内容の伝達)がパソコン・インターネットで表現できると考え、実現するために、ホームページ作成の技術を利用し、次のような視点をもって「ネットワーク教材(ハイパーブック西高校)」を作成している。

(1)伝えたい内容をずばり載せる。

(2)公式の覚え方を工夫する。

(3)伝えたい内容を一覧にする。そして生徒と教師が共有する。(授業マップ作り)

(4)教え方の手法(授業のねらい)とその考え方を伝える。

(5)問題を解決するために、身につけてほしいアプローチを伝える。

(6)具体的な学習の取り組み方法を伝える。

 ・実践項目2 「高等学校開放講座コンピュータ入門」

 生涯学習推進事業の指定を受け、地域社会の人々を対象にした開放講座を開設した。タイトルは「コンピュータ入門」、その実践は次の通りである。

    第1回 9月12日(土)9:00_12:00開校式・基本操作

    第2回 9月26日(土)9:00_12:00インターネット入門

    第3回10月 4日(日)9:00_12:00電子メール

    第4回10月18日(日)9:00_12:00表計算入門

    第5回10月24日(土)9:00_12:00パソコンソフトの活用法

 ・実践項目3 「有害情報から子どもたちを守るブラウザとメールソフトの開発」

 インターネットを教育で活用する場合の問題点は、「情報の信頼性」と「有害情報へのアクセス」である。ホームページは予告なしに突然変っていることが多く、生徒個人に任せたインターネットでの検索には予期せぬ有害情報へのアクセスが心配される(本校では解決済み)。単なる「自由なアクセス」は、ともすると「教育のないアクセス」になりかねず、やはり、教育的配慮の下での自主性、個性の尊重がある「自由なアクセス」が必要である。

 ・実践項目4 「進路指導におけるインターネットの活用」

 1、2年生を対象にインターネットで進路希望大学の募集要項、過去の入試問題、カリキュラムなどを入手させ、進路の意識づけをはかった。ホームページから大学の特色やホームページを開いている学生の考え方など、入学案内にはない情報に触れることで、進路決定への動機づけにも効果的であった。

 もちろん、3年生にとっても、大学の出願状況などの情報を見ることで、進路指導に役立てることができ、学びたい専門教科の大学検索、入試要項とほぼ同じデータの入手、生徒の過去のデータから学力分析とその指導法など、インターネット活用の場面が数多く存在している。

       (課題意識の共有を目的とした内線電話による校内LANの構築)

 100校プロジェクト、新100校プロジェクトで培った、知識・技術を利用し、1200名の生徒の一人一人を大事にしていくことは、100名近くの教職員が課題意識の共有化をすることなしではありえないと考えている。

 その課題を共有するために、校内文書全文検索システムの構築、定期考査や各文書の電子化をすすめてきた。情報化はお金さえあれば形も、場合によっては内容さえ、体裁だけは整ってしまう。やはり、教育の原点に帰った活用が望まれる。

 

 

2.平成10年度の成果と課題

 インターネットは便利な道具ではあるが、まだ発展途上の児童・生徒にとって、インターネット上の情報は多過ぎるほどあり、その中には、有害情報も含まれている。この現状で、子ども達に自由にインターネットにアクセスさせることは、大きな産業道路へ交通法規も伝えないままに、道路の真中へ送り出しているようなものと考えている。情報の交通法規を教えていくことも情報教育のひとつとし、学校はいわば自動車教習所のようなものととらえ、インターネットという道路へ出るための練習機関としての役割が大きい。おとなのあたたかい目の見守る中で、情報リテラシーや情報活用能力の育成を図らなければならないと考えている。

 インターネットでのネットワーク教材は新しい教材であるため、生徒が戸惑わないように、その学習の姿をビデオ化し、授業のレディネスを図った。これは、授業内容へのスムーズな導入においても非常に効果があった。本校のコンピュータ室には37インチのTV1台であるので、文字情報は伝わりにくい。そこで一画面には多くの情報を入れず、注目すべき領域のみ拡大表示して説明できたことは、生徒の学習姿勢を事前に形成できたことにつながったと考えている。

 また、プリント教材との併用、小テストの実施などで繰り返し学習できることに加え、休んでいた生徒への配慮にも効果があった。

 

 教師側にとって、教材開発によりこれまで気づかなかった点や伝え方の新たな発想が出てくるなど、授業の改善に大きく役立った。教材はHTML形式なので、クラスや生徒に応じた教材に加工することができたので、教材の共有化も図れたと考えている。再生産性の高い教材である。

 生徒は、ネットワーク教材で授業のポイント(視点)を前もって持つことになり、教師側の説明がより伝わりやすい状況になってきている。一方的になりがちな授業において、生徒と教師が授業内容についてコミュニケーションをとりながら、生徒の授業内容の理解を進めていくことができた。

 

 昨年度の課題「教材をHTML化する際に、どうしても化学記号や数式の表現に限界がある。」から、引き続き数式ワープロと、数式をブラウザで表現できるシステムを開発している。

 市販のブラウザでは、余計な機能もあり単機能で授業に使えるブラウザも開発した。有害情報へのアクセス制御とともに、プロキシーサーバーのYESリスト(アクセス許可リスト)の運用により、日々出現してくる有害ページにも対応している。

 また、電子メールでの問題点(チェーンメールなど)を防ぐ意味でも、独自にメールソフトを開発し、教師の指導のもと、授業で使える電子メールを生徒は体験できた。

 教職員対象に、インターネット、www、メールを体験してもらい、そのよさを知ってもらう研修会を年4回ほど実施したが、操作法を含めた研修では、単にそのときの研修のみで終わってしまうことが多く、次の段階へつなげていくことが不充分であった。教員が自由にできるインターネットの環境を整えていかなければならない。

3.新100校プロジェクトに参加して

 100校プロジェクト、新100校プロジェクトに参加して、インターネットを教育に利用するため取り組んできたことは、いかに授業に使えるか、どのような形であれば生徒の基礎学力の定着に有用であるかであった。学校がインターネットへ接続することにより、高度情報化社会へ対応できる生徒の育成、そして、今の生徒の学力が向上していくことに期待感を持ちながら教材開発をすすめることで、生徒と教師の学校生活での大半を占める授業の重要性をさらに感じることができた。

 インターネットに接続する理由が明確でなければ、誰も利用しない。インターネットにただつないだものになってしまう。今抱えている問題を解決する情報がそこに存在すれば、インターネットも教育の場面で広がりをみせるだろう。生徒と教職員にとってその課題の答えが、ネットワークにあるという視点を持ってもらうこと。そして、その情報をいかに作り、集めていくかが私たちの役割であったように考えている。

 本校では100校、新100校での取り組みを評価していただき、来年度も常時接続によるインターネットの活用ができるようになりました。この場をかりて、関係の皆様にお礼申し上げます。ありがとうございました。


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