新100校プロジェクト 平成10年度実施報告


東京都立光明養護学校(肢体不自由児対象)


1.インターネット利用状況

 <生徒たちの取り組み>

 障害のある子どもたちは,その障害のために,また社会的障壁のために行動範

囲が狭まってくるため,日常生活でコミュニケーションをとる相手が限られてい

るケースが多くなる。しかし人は,今までの集団のなかに落ち着くようになると,

今度は新たな出会いを求めようとする。そして,その新たな出会いの中に自分を

認め理解してくれる人がいれば,それは人としてつながりあう喜びへとつながっ

ていく。

本校では,身体の運動機能に障害のある生徒たちに対し,新たな出会いとコミュ

ニケーションを提供してくれる道具として,また文字学習の指導の中で,自己表

現の道具として,今年度も引き続き「チャレンジキッズ」及びインターネット・

メールを利用した。また、メールでの交流では、卒業生との交流を行った。

また、病弱のために通学が困難な生徒に対し、ネットワークを利用して家庭と学

校とのコミニュケーション手段としてインターネットメールやテレビ会議などを

試みた。また、在宅学習への補助として、ホームページを活用した家庭学習の試

みを行った。

 

<教員側の取り組み>

メーリングリスト「edhand(障害児教育とインターネット)」への参加・

マルチメディアを活用した補充指導についての調査研究への参加などに取り組ん

だ。

  今年度,ホームページを使って公開したデータは以下の通りである。

 

生徒の作品・ページの公開

高3修学旅行

卒業生からのメール

高2移動教室

光明祭

生徒の宿題

ハンドサッカー大会

グループ授業紹介

 

2.平成10年度の成果と課題

 

 昨年度から引き続き校内でのネットワークの活用を広めるため、校内LANの回線

を引きパソコン室だけでなく、「職員室」「訓練室」「小学部教室」「中学部教

室」「高等部教室」へインターネットが出来る環境を広げていった。生徒の学習

への利用では、高等部が主ではあるが、誰もが使える環境を整えることで、多く

の教員が関心を持つようになり、他学部の授業の中でも利用が増えていった。

また、高等部では、休み時間や放課後など日常の中で使うようになってきており、

生徒にとっては当然つながっているものとして利用している。

本校のように運動障害のあり、外界へのつながり事が困難なものにとっては、ネッ

トワークでつながる世界は、ある意味で<生命線>のようなもので、いったんつ

ながってしまうと、それ無しでは考えられないぐらい必要なものと感じられる。

 コンピュータを上手に使うことができれば,それは結果として障害をサポート

してくれ,自己の可能性も広がってくる。また,知りたい情報を入手できたり,

新しい出会いに遭遇できたりもする。コンピュータは,まさに,障害者が充実し

た生活を送るための有力な道具となり得るものである。インターネットの実践に

限らず,コンピュータと出会ったことで,生活の質(QOL:Quality of Life

が高まった子どもたちは多いのではないだろうか。

 本校では,チャレンジキッズ及びインターネット・メールを,主にコミュニケー

ション(絵や言葉による)を楽しみ,その力を伸ばしていくものとして利用して

いるが,他にももっと様々な利用の仕方がある。今後,実践を経る中で,更なる

可能性が見つかるかもしれないし,それを子どもたちが見つけだしていくことに

も期待している。

 しかし,課題も少なからず残っている。今のところ,教師の時間のなさや学習

不足のため,情報教育に携わることができる教師がまだまだ少ないことが現実で

ある。「チャレンジキッズ」「卒業生とのメール交換」などの実践を紹介してい

く中で,情報教育の大切さを訴えることができ,多くの教師が興味を持ってくれ

ること,また,時間的余裕をつくれる環境が整うことを願っている。また,こう

したコミュニケーションツールには「教師も使いやすい」という視点も大切にな

る。教える側に敷居が高いと指導に導入しにくい。そういう点では,インターネッ

ト全体もわかりにくい構造になっていると,学習場面に取り入れにくいことにな

る。

 教師自身の力量及び,広い意味でのアクセシビリティスキルを高めることで,

情報教育の質がさらに高まったり,新たなあり方が検討されていき,結局は障害

のある子どもたちの充実した生き方を支援することになるであろうと考えている。

(文責:東京都立光明養護学校 金森克浩 kanamori@koumei-sfh.setagaya.tokyo.jp


ホームページへ