東京都立光明養護学校(国立小児病院内)そよ風分教室 Page2/2
<教育効果>
本分教室に在籍している児童生徒は、病気療養のため長期にわたる入院生活を余儀なく
されている。入院中の子どもたちは、同年代の子どもたちの活動範囲に比べると、非常に
限られた空間の中で生活していることになる。「インターネット」は、そのような子ども
たちにとって、病院内に居ながらにして外の世界とのつながりを実感でき、空間的隔たり
をほとんど意識することなく関わりを持つことができる有効な手段である。そのことの証
明として中学部生徒のコメントを紹介する。
「僕とインターネット」(中2 K.Y)
僕がインターネットと出会ったのが約一年前。その頃は 友だちの家でゲームの情報を
調べる以外、興味は無かった。でも、入院して「そよ風分教室」に入り、パソコンを習い
入院中も友達に負けないぐらいの情報がどんどん入ってきた。インターネットをやってい
ると、入院してても世界中が分かるし、いち早く情報が分かる。最初はホームページに書
いてあることを読むだけで、メールで 質問したりすることはできなかった。しかし、だん
だんやってい るうちに、メールをやりとりしたり、チャットに参加したりして人に聞くこ
とができるようになった。インターネットの世界は厳しい。自分が情報を発信しないと、
人からも情報を得られないということを知った。分教室でのインターネットがおもしろく、
家でもやっとパソコ ンを買ってもらい、インターネットにも接続した。分教室でインター
ネットと出会わなければ、こんなに楽しい 入院生活はなかったと思う。
<リテラシー>
転出入が頻繁なため年間を通して系統だった情報教育は難しいが、転入してきた段階で
のそれぞれのパソコン歴に応じて、リテラシー向上をはかっている。週1時間、小学部低
学年(1,2,3年生)、高学年(4,5,6年生)、中学部 (全学年)という3つのグ
ループごとに設定されている「パソコン&プリント自習」の 時間に、「インターネット入
門講座」的内容で、新転入生優先に指導している。ま た、新着ソフトやハードの操作は、
ある程度パソコンに慣れてきた児童生徒をピック アップして開封やインストールに立ち会
わせ、解説書を共に読みながら操作方法を身に つけてもらい、そのソフトなりハードなり
のエバンジェリスト的役割を担ってもらう ことにしている。「インターネットで検索する
コツは○○君がピカイチのセンス」「メールの返信の仕方は○○さんがマスターしたよ。」
というようにしておけば、後は子どもたちの中で評判が伝わり、学年や病棟を越えた自然
な交流と技術伝達のルートが広がっていく。
ニュースでネット犯罪が報じられる度に、適切 な情報収集の方法やその取り扱い方を、
教育機関で教えずにどこが教えるのかと自問 自答している。分教室でインターネットに触
れる機会を持った児童生徒がネット上の 情報に溺れたり、踊らされたりしないユーザーに
成長することを願いながら日々指導に当たっている。
○新100校プロジェクトに参加して
そよ風分教室の子どもたちは、病院という閉ざされた空間で生活せざるを得ないが、
インターネットによって外の世界とつながって、教員共々ヒューマンネットの中で成長し
ている。病気療養児のQOLを飛躍的に向上させる「インターネット」という有効な手段が
全国の病院内学級に一日も早く普及することを願っている。
(文責:そよ風分教室 赫多 久美子 E-mail:soyokaze@nch.go.jp
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