---100プロジトの成果を地域に還元する実践活動---
小学校3年〜6年生・課外学習・体験講座
清水国際中学校・清水国際高等学校 井柳 強
この自主企画でのインターネット利用の意図
私が100校プロジェクトの中で学んだ成果の一つは,「教師と生徒が協力し合いどのようなホームページ作りをするか」であった。この成果を地域の子どもたちに,少しでも還元できないかと考え,実践したのがこの学校開放講座「インターネット・ホームページ作り」である。一人,ひとりの受講生が一つの作品を苦労して完成する喜びと,その作品を世界に向けて情報発信する感動を体験させるために,インターネット利用を意図した。
1 はじめに
2002年度からの完全学校5日制に合わせ,子どもたちがゆとりを生かし,遊びなどの体験をとおして,豊かな感性や想像力を育むことのできる場を充実させるため,いろいろな体験講座が県内の各地で開かれている。学校が独自の学校開放講座として実施する場合もあるが,静岡県では静岡県教育委員会が(財)静岡県生涯学習振興財団に委託して「ふじのくにゆうゆうクラブ」という形でこれを実現している。私の自主企画はこのプログラムの一つに参加することにより,100校プロジェクトの成果を地域に還元しようとしたものである。
2 この自主企画のねらい
つぎのような6項目を自主企画の達成目標として実践活動に取り組んだ。
1.私学としての本校の持つ特色をどのような形で地域に還元したらよいか。
2.その一つとして100校プロジェクトの成果を地域に還元する。
3.「インターネット・ホームページ作り」講座を開講する。
4.その中でインターネットを利用した国際交流も体験させる。
5.学校開放講座を開講して,成果と問題点を探る。
6.学校開放講座を本校生徒のボランティア活動の場として生かす。
7.地域の人たちの学校開放講座への関心と期待を知る。
3 この企画と単元,教材名との関わり
「ゆとりの中で,自ら学び考える力を育成する」という学習指導要領改定の目標を,インターネットを利用した実践教育の中でどのようにしたら実現できるか探るために試行したものである。物語創作,描画など現行の単元,教材の多くの分野と関連を持つが,この学習集団は市町村の学校,学年の枠を超えた社会教育の場である。
4 開講準備
3月 ふじのくにゆうゆうクラブ開講を県生涯学習振興財団に申請し受講生募集を依頼。
募集人員20名 小学校3年生〜6年生,講座名「インターネットホームページ作り」
内容 「あなたの創作絵本をホームぺージにして世界に向けて発信します。
パソコで絵と物語を描いてみたい人集まれ!」
時間 第2,4土曜日 9:00−11:00 清水国際中学・高等学校パソコン室
6月 小学校3年生 5名,4年生 6名,5年生 6名,6年生 5名,合計22名(男子 11名,女子11名)の応募があり開講を決定した。講師・管理人研修会,地域担当者との打ち合わせ会などの準備があった。
受講費用 友の会費(財団納入経費)2,000円 保険料 600円
清水国際学園施設利用規定による会場(パソコン使用料を含む)借用料 13回分の生徒個人負担金額 1,200円 材料費(フロッピー、連絡通信用切手代) 400円
7月 CEC自主企画に企画名「100学校プロジェクトの成果を地域に還元する実践活動」を申請し採択された。(10月に予算の増額を申請して,これも認められた。)
5 指導計画
6・27 開講式,講師・管理人・ボランティアの紹介,会員証の授与,ゆうゆうクラブ
講座内容,受講日程,会場使用などについての説明。生涯学習総合保障保険加入手続き。作品テーマを次回までに考えてくるなどの説明。
7・11 ホームページについての説明。パソコン操作方法(起動・終了)ペイントの使用方法,作品の題材とテーマの決定,あらすじを書く,コンテの作成など。
7・22 ペイントを使った描画練習,ファイル操作,絵コンテの作成など。
8・ 8 画像作成 1〜2ページ
8・22 画像作成 3〜4ページ
9・12 画像作成 5〜6ページ
9・26 画像作成 7〜8ページ,ファイル整理,画像フォーマットの変換
10・10 インターネットで世界を結ぶNetdayに参加するため交流記念カードの作成。
10・24 HTML編集,日本語入力練習。
11・14 HTML編集,日本語文の物語をHTMLに挿入する作業。
11・28 作品の最終チェック,発表練習,講座についてのアンケート記入依頼。
12・12 HTML未完成生徒だけの受講日
1・ 9 受講生,保護者を招いて作品発表会,(講師・管理人,ボランティアの挨拶,受講生一人ひとりが,作品制作の苦労を発表。受講生全員の作品をパソコン上に表示して参観者に公開。終了証書授与,保護者へのアンケート記入依頼。サーバへの登録前のHTML最終修正。保護者からインターネット上で作品公開の了承を得る。
6 会場の設備およびインターネット利用環境
この講座を開講するために借用した会場のパソコンは, 富士通 FMV-5133DPS 40台であった。 22名の受講生に40台のパソコンが用意され,恵まれた環境であった。借用教室にはインターネットオンライン環境がないので,CECからこの自主企画のために供与を受けたパナソニック・ノートパソコンCF−M32J8を職員室の校内LANから50mのケーブルを臨時に廊下に引き開講日のみオンライン利用ができるようにした。受講生の作品が完成後,これらを1年間インターネット上で公開する予定。
7 インターネット利用場面
インターネットホームページ作りは,大部分がオフライン作業であり,利用場面はインターネットがどんなものか,昨年度の受講生がどのような作品を制作したかを参考に閲覧する程度であった。作品が完成した段階でサーバに置き一年間にわたり公開する予定。
8 講生のHTML完成作品一覧
表1 受講生の完成作品一欄表
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9 受講生作品のインターネット上での掲載について
受講生の作品をインターネット上で公開することについて,後で問題が生じないように,つぎのような配慮をし,保護者全員の了承を得る努力をした。受講生募集の段階で,「この講座で完成した作品はインターネット上で公開することを目的とする」と明記した。受講生のプライバシーに関する情報は作品番号,受講生の在住市町村,学年,ひらがな表記の名前のみとした。最終的には作品発表会で受講生の作品を保護者に見せ掲載の許可を得た。
10 実践を終えて
受講生,保護者,ボランティア参加生徒に依頼したアンケートの中に,講座の実践目標が達成されたかどうか,参考となる記述があるのでここに紹介した。
受講生感想(1) <6年生女子>
講師から この講座の目標の一つは,みな,最後まで頑張るでしたね。
全員が完成できて先生もとてもうれしいです。
受講生感想(2)<5年生女子>
受講生感想(3)<4年生女子>
講師から あなたがたのさくひんが,ボランティアの人たちの協力で英語になおさ
れ,せかいじゅうのひとたちにみてもらえるように先生もがんばるね。
保護者からのメッセージ(1)
保護者からのメッセージ(2)
*色の使い方や絵のタッチが工夫してあっておもしろかった。先生もお兄さんたちも優しく教えて下さった様子でとても感謝しています。受講生も作品を全員完成できた様子で,とてもうれしそうでした。子どもも自信がついてよかったです。こどもに聞いていた内容より実物を見せてもらい、思っていたよりまとまったものでした。ホームページができてうれしかったです。
ボランティアの本校生徒からのメッセージ<高2年生男子>
* 7月より,この講座で小学生のみなさんのお手伝いをしてきましたが,毎月,第2,第4土曜日がくるのをいつも待ち望んでいたくらい楽しみでした。それは,みんなのホームぺじがそれぞれ個性的がでていて,1ページ進むごとに内容がユニークになっていくのを見るのが楽しかった。一生懸命になってパソコンに向かってマウスを動かす姿を見ると自分もはじめてホームページを作ったときのことを思い出してしまいました。みんな覚えるのが早いせいかぼくの役割はだんだん少なくなっていきました。いつも,教わる立場にいるぼくが教える立場に立ち,教えることの難しさを学びました。また,このような機会があったら参加したいです。
11 学校開放講座の問題点
土曜休日制による学校開放講座には多くの問題点がある。これはこの講座だけではない。保護者が受講生を学校に迎えにくる時間が遅れても、小学生を校門の前に放置して帰宅するわけにはいかなかったことや、生徒が気分が悪くなっても保健室の利用が難しいこと。公立学校,公共施設の多くは会場借用料が無料であるが、私学ではできない。受講生の強制加入保険も大きな事故があったときそれを賄うに十分なものではない。この講座は受益者負担だから、必要な経費はすべて受講生から徴収しなければならないなどいろいろな問題点があった。
12 100校プロジェクトの成果
本年度はこの自主企画もCECが支援したことで、思いきった実践活動を展開できた。インターネット利用の夢を募集し、器機、回線を供与。その夢の実現を支援したことは、この100校プロジェクトが他にないユニークなものであったと感謝している。ささやかではあるが私たちは,地域の子どもたち,世界の子どもたちに夢を届けることができた。
13 この研究の評価
受講の様子が,家庭にも伝えられ本校の特色が伝わったように感じた。受講生全員がホームページを完成できたことは,100校プロジェクトの成果の一部分を地域の子どもたちに還元できたことだと思っている。静岡県生涯学習振興財団と共催の学校開放講座であったが,生徒募集,保険加入,管理人(主婦)を置いていただき,受講生に健康上の問題があったときなど講座を中断しないで安心して進めることができた。この講座は受講生が自分の興味のある題材を自由に選択でき,完成した作品には点数評価がないので,自由に生き生きと活動した。ホームページの作り方の理解だけでなく,長期間にわたり,一つのものを完成するという作業の中で受講生が「最後までがんばる」目標を達成できたことをうれしく思った。清水市,静岡市へ転勤で来られた保護者の受講生がいたが学校,学年を超えた枠のなかで皆が助け合い,はげまし合い仲のよい友だち作りもできた。
図1 22名のホームページを保護者に公開する参観日を持った。
ワンポイント・アドバイス
学校教育の中で生徒の作品をインターネットへ掲載する場合,自分で判断ができない小学生には,保護者の了解を必要とする。その許可が容易に得られるか,得られないかは,掲載する作品を制作する過程でその生徒がその作品の制作にどのよう関わったか,どのような取り組みをしてきたかであった。夏の暑い日から,冬の寒い日まで7か月間をかけて生徒と一緒になって作った作品にはそのような問題は何もなかった。また、ホームページ制作する機会があれば,子どもたちがホームペー制作と真剣に取り組む姿を保護者にもっと多く見てもらい,このメディアのすばらしさを知ってほしかった。 |