15 日本を知り日本を伝えよう!

---インターネットを活用し教室の枠を広げていくための試み---

小学校第5学年・特別活動・道徳(総合的な活動)

横浜市立神大寺小学校  安冨 直樹


○インターネット利用の意図
 教育において、国際化・情報化が叫ばれる中、インターネットは、図書資料だけでは伝わらない諸外国の『今』をリアルタイムに感じ取っていくことできる。また、教室というせまい枠の中にいながらも、日本だけでなく世界の人々とかかわりをもつことができる。つまりは、時間と空間を短縮することができるのだ。
 今回の実践では、日本の『お正月』について、インターネットを活用し、情報を発信することが主な活動となる。自国の文化を知り、発信するためには、自分たちがそれについてよく理解していないと相手に伝えることができないことを子供自身が気づき、情報を正確に伝えたり、発信者としての責任をもったりすることの大切さを学ばせていきたい。

1 単元名

『日本を知り、日本を伝えよう!』

(1) ねらい

  日本の中で生活し、日本のこと知っているつもりになっていた子供たちが、諸外国へと情報発信するためには、まず、自分たちのことを知らなければいけないことに気づく。そして、6年生で歴史学習を行う上でも、もっと自分たちの住む日本の文化について、興味・関心をもったり、世界の中の日本を考えたりする活動へとつなげていくことをねらいとした。

  
 
(2) 指導目標
 
(3) 利用場面
  • 調べたことをホームページにまとめる
     
    (4) 利用環境
    @使用機種
    ・動画編集コンピュータ SONY VAIO-S510 1台
    ・ネットミーティング用コンピュータ GATEWAY solo9100 1台
    ・ホームページ作成用コンピュータ IBM THINKPAD 370C 7台
          
    A周辺機器
    ・デジタルカメラ(静止画・動画)作成 SANYO DSC-X100 3台
    ・教室内でのインターネット接続用PHS +32Kカード 1台
    ・8mビデオカメラ SHARP VL-HL50 3台
    ・ビデオプロジェクター EPSON XV-E500 1台
    ・カラープリンター CANON BJC600 2台
    ・CD-R作成 I・O DATA CDRW-vx26 1台
    ・ネットミーティング用カメラ ヴィヴィダーUSBカメラ 1台
      CCDカメラ 1台
              
      B稼働環境
    ・子供たちは、PHSで接続されたノートパソコンにより、教室や廊下でホームページや電子メールの閲覧、発信が可能。
    ・廊下にコンピュータを配置する。子供たちは、その場所に移動したり、好きな場所に運んできたりして、ホームページを作成。

      Cその他の利用ソフト

     

    2 指導計画

      指導計画(全6時間)
    @   日本の『お正月』について、どんなことを伝えればいいのか、本町小学校と話し合う。
    AB 日本の『お正月』を伝えるために、特徴的な慣習を調べよう!
    CD 調べたことをもとに、ホームページにまとめよう!
    E   英語のホームページを作成するために、主語や述語をはっきりさせた文章に書き直そう!  

     
    3 利用場面
    (1) 目標
    ・ネットミーティングソフトを使い、日本の『お正月』をどのように伝えればいいのか、日本の他の学校と話し合うことができる。
    ・ニュージーランド「Havelock North Intermediate School」の友達に、日本のことを紹介するために、映像や写真を使ったホームページをつくることができる。
    (2) 展開

    学習活動 活動への働きかけと支援
     

    ○きっかけ
     毎日のニュース紹介で、マグワイア選手が70号ホームランをうったお祝いに、日本の政府から贈り物をするということが話題となった。そして、自分ならば何を贈るのかを話し合った。その中で、「日本のよさ」は、『お正月』のような伝統的行事を大切にしていることだという考えが出された。
     しかしながら、どうしておせち料理を食べるのかなど、当たり前のようにしていることが、 どういう訳で行われることとなったのか知らずに過ごしていることに驚いた。

     

    教室の枠を飛び出そう!  その1

    1 日本の『お正月』を外国に伝えるためには、何を伝えればいいのか本町小学校と話し合う。

     

    ・ネットミーティングを使い、横浜市立本町小学校の友達にインタビューする。

     

    教室の枠を飛び出そう!  その2

    2 「日本の正月」について、インターネットで調べる。

     

    ・『お正月』に行われる遊びや食べ物、飾りなど、自分の調べたいことを調べる。
     ※インターネット上の『お正月ページ』を検索したり、うちにある料理雑誌(おせちの作り方)を持ってきたりして、お正月の様々な行事を調べられるようにした。

     

    3 調べたことをホームページにまとめる。

     

       

     

    ・ネットミーティングを使い、ニュージーランドの子供たちとも会話をしたかったが、回線速度が出ず、断念。子供たちは、映像や説明を郵便で送ろうということになる。

     ※ニュージーランドと日本では、ビデオの形式が違うため、子供たちが撮ったものをそのまま送っても見ることができない。しかし、コンピュータならば、世界共通の規格がある。そこで、教師は、画像をコンピュータで処理し、aviファイルに直し、CD−Rに焼き付けて送付することを子供たちに伝えた。                
    動画も撮れるデジタルカメラが大活躍

    ・写真やお絵かきソフトを活用し、グループごとにまとめていく。また、家族も巻き込み、初詣やおせち料理を写真に収めてきたり、冬休みの自由研究としてノートにお正月調べをしてきたりした子供もいた。
     ※サーバーを持たない本校では、トラフィックがかかりすぎる動画送信は不可能で、今後の回線速度向上に期待している。

     

    4 英語のホームページに書き直す。  

     

    ・英語には、必ず主語と述語があり、翻訳ソフトを使うときには、照応を正しくしなければいけないことを知る。  

    ※翻訳ソフトで英語にした文に、「主語なし」という日本語がたくさん書かれていて驚く。

      凧について紹介文を書く。  

     

     

     

    4 実践を終えて

     日本のことをニュージーランドに伝えようということから始まった活動であったが、子供たちは、自分たちが日本を知らないということに気がついた。このことが、活動のエネルギーとなっていった。

     「なぜ、門松を飾るのか」「おせち料理にはどんな意味があるのか」などの疑問を調べ、問題を解決することによって、昔の人々の思いや願いを感じ取ったことも、大きな収穫であった。

     また、今回の活動で、子供たちは、発信するからには、正しい情報を分かりやすく伝えていくこと、そして、その内容に責任をもつということを意識しながら、ホームページを作成していった。
     「先生、私たちの『お正月』のページを見て、ニュージーランドの子供たちは日本に来てみたいと思うかな?」

     

     

     このつぶやきの中には、自国の文化に対する誇りの芽生えも感じられる。この子供たちが、「子供外交官」となって、教室の枠を越え、インターネットを通して、世界とのかかわりを深めていってほしい。
     最後に、まだまだインターネットの回線速度は十分でない。今後、動画を送り合うことが増えると予想されるが、それに耐えうるだけのインフラの整備を社会が行っていく必要がある。

     

    ワンポイント・アドバイス
     教室から子供たちにインターネットを使わせる場合、PHSでネットワークにつなげることは、とても便利であり、子供たちもつながっていることを容易に意識できる。まだまだ通話料は高いが、春から64Kになれば、もっと快適に使えそうである。
     英語翻訳ソフトは、精度も高くなり、瞬時に英語へと変換する。しかし、きちんとした英語に翻訳するためには、きちんとした日本語を使わなければいけないことを、子供たちと考えていくことは、有意義であった。
     

     
    ○学習で活用したURL
      餅つきのすべてhttp://www.bekkoame.ne.jp/~toshi-o/contents/mochi.htm
      紀文 お正月特集 http://www.kibun.co.jp/98shogatu/
      ハローねっとジャパン 雑煮 http://www.shizuoka.ntt.co.jp/wnn-c/sangyo/theme9701/index.html